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2011年4月 6日 (水)

インドの鉄道地図 V-ウェブ版

現地から詳しい地図帳を取寄せるほどでもないという方に、ウェブサイトで見られるインドの鉄道地図をいくつか紹介しておこう。

Blog_india_railmap_hp1 まずは、鉄道の公式サイトから。インド国内に広く張り巡らされた鉄道網の大部分を運営するのが、国有鉄道会社であるインド鉄道 Indian Railways(ヒンディー語でバーラティーヤ・レール)だ。お堅い組織らしく、サイトの構成は基本的に部局別で、旅客列車などに関する情報は旅客局 Coaching Directorateのページに集められている。トップページの "Passenger Info" のリンクからも下記の要領でたどっていける。

■参考サイト
インド鉄道 Indian Railways  http://www.indianrailways.gov.in/
Passenger Info > Time Table Information > Trains at a Glance
または直接リンク
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/

このページでは、公式時刻表「トレーンズ・アット・ア・グランス Trains at a Glance(略称TAAG)」のPDF版を公開している。画像の直下にある "Table Index" のドロップダウンリストから時刻表の各ページを選択でき、その下の "Content" のくくりで、時刻表の使い方をはじめ、索引や地図を参照できる。「インドの鉄道地図 I」で紹介した添付地図は "Content" の中の "Indian Railways Map" にある。ファイルサイズが大きいのでダウンロードの際は注意されたい。また、同じページに時刻表番号を検索する地図 "Route Map with Table Numbers" もある。路線網の上に記された数字が時刻表番号、赤い線は幹線ルートを示している。

■参考サイト
Indian Railways Map (11.2MB) 直接リンク
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/pdf/IR_Map.pdf
Route Map with Table Numbers (1.25MB) 直接リンク
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/pdf/Route map.pdf
ちなみに、発着駅を入力して列車を検索するタイプの電子時刻表は、下記にある。
http://erail.in/

Blog_india_railmap_hp2 インド鉄道のサイトでは、電化路線図 Railway Electrification Map も見つかった。鉄道電化局 Railway Electrification Directorate のページにあり、全国の路線網を、2010年3月31日までに電化済みは赤、工事中が緑、2010~11年度の予定線が青、非電化は灰色に区分している。駅名は一部略称化されている。上記の時刻表地図では電化の有無はわからないので、補完資料になるだろう。おそらく定期的に更新されるから、リンク切れになった場合は下記、鉄道電化局のページで捜していただきたい。

■参考サイト
Railway Electrification Map (620KB) リンク切れご容赦
http://www.indianrailways.gov.in/railwayboard/uploads/directorate/rail_elec/RE Map-2.pdf
鉄道電化局
http://www.indianrailways.gov.in/railwayboard/uploads/directorate/rail_elec/

Blog_india_railmap_hp3 日本の国土地理院に当たるインド測量局 Survey of India のサイトでは、子供用地図 Geographical  Maps for Children と称するダウンロード専用の各種主題図が提供されている。この中に、「インド鉄道および海上ルート India-Railways and Sea Routes」と「インド鉄道地図 Railway Map of India」という2種類の鉄道関連地図が見つかる。

前者は、右肩にページ数が打ってあるので、何かの地図帳に収載された図なのだろう。タイトルのとおり、国内の鉄道路線と国内外の航路を表示した地図だ。縮尺は1:15,000,000(1500万分の1)。鉄道網は、以前の地域鉄道9ゾーンおよびコンカン鉄道で色分けされ、軌間、電化の区別もある。海上ルートには、距離が海里で併記されている。

後者は、国内鉄道網を描いた縮尺1:10,000,000(1000万分の1)の地図だ。「インドの鉄道地図 I」で紹介した測量局刊行の1枚もの鉄道地図の簡略版に相当する。軌間、電化、単線・複線、工事線、改軌(予定?)線などが細かく記号で区分され、地域鉄道は再分割後の16ゾーンおよびコンカン鉄道で色分けされている。

どちらも製作時期はそれほど古くないのだが、原稿となった測量局の地図はそもそも印刷品質が劣り、加えて画像の解像度も高くないので、次に述べる民製図のレベルにはとても対抗できない。

■参考サイト
インド測量局 http://www.surveyofindia.gov.in/
 トップページ > Downloads
India-Railways and Sea Routes (2.08MB) 直接リンク
http://www.surveyofindia.gov.in/soi_maps/atlas/p_23_200.pdf
Railway Map of India (1.57MB) 直接リンク
http://www.surveyofindia.gov.in/soi_maps/atlas/rail_100.pdf

Blog_india_railmap_hp4 インドの鉄道愛好家団体であるインド鉄道ファンクラブ Indian Railways Fan Club (IRFCA) が運営するサイトは、この国の鉄道に関する情報の宝庫だ。「鉄道地図および地理資料 Railway Maps and Geographic Resources」のページに、鉄道地図も豊富に収載されている。

■参考サイト
IRFCA-鉄道地図および地理資料 Railway Maps and Geographic Resources
http://irfca.org/docs/maps.html

最初に掲げられている「一目でわかるインド鉄道網 Indian Railways Network At-A-Glance」は、本ブログ「インドの鉄道地図 III」「インドの鉄道地図 IV」で紹介したサミット・ロイチャウドリー Samit Roychoudhury 氏が2003年に作成したものだ。地域鉄道16ゾーン+コンカン鉄道を色分けし、軌間と単線・複線、電化線を表示する。解像度が低いため、駅名などの詳細は読み取れないが、この地図は、地勢の背景をつけて、ロイチャウドリー著「インド鉄道大地図帳」の表紙見返しにあるインド全図に再利用されているので、必要ならそちらを参照されたい。

Blog_india_railmap_hp5 次の「インド鉄道網スキマティックマップ IR Network Schematic Map」は、地図デザイナー、アラン・ガネッシュ Arun Ganesh 氏が2006年に発表した鉄道地図だ。路線網を水平、垂直および斜め45度の直線に単純化した、いわゆるスキマティックマップ(位相図)を試みたところが目新しい。国内路線は電化幹線、(非電化)幹線、その他の線区、改軌中、狭軌の区別があり、地域鉄道のゾーンは線の色ではなく、ベースマップの塗りで表現する。主要区間の所要時間がこまめに表示されているのもユニークだ。

複雑なインドの路線網をスマートに図化した点は大いに評価したいが、幹線に白抜き、地方線に赤い太線を充てた記号デザインには違和感がぬぐえない。地方線が妙に強調されて見える結果、路線網の骨格がすっきり浮かび上がってこないように感じる。視覚上の効果を今少し整理する必要があるだろう。なお、この地図はウィキメディアにも収録されている。

■参考サイト
Wikimedia - Railway Network Map of India - Schematic
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/28/Railway_network_schematic_map.png

3番目の「インド鉄道ルートマップ IR Route Maps」は、1番目と同じくロイチャウドリー氏の作品だ。「長い間、私は地図や地図作成と同じように列車にも関心を抱いてきた。民間の機関と同様、鉄道当局によって製作された一般向けの地図は、詳細を欠いていたり、期待を下回っていると感じる。変革への強い思いから、私は(現存する地図や時刻表、進行中の計画の詳細といった)情報の収集に着手し、2001年前半に最初の鉄道地図を製作した。」(「インド鉄道大地図帳」巻頭言より) それがこの地図で、いわば処女作に当たる。

リンク先のページにある地図画像はクリッカブルマップになっていて、各地域の拡大図に飛べる。また、親ページで1段下げて並んでいる "New Delhi and points north" ほか12の項目も、拡大図への直接リンクだ。

地域鉄道を色分けし、軌間、単線・複線、電化線を区別していくのは、氏の作品に共通する仕様だが、この構成は、実はインド測量局の鉄道地図(上記および「インドの鉄道地図 I」で紹介した大判図)を踏襲したものだ。40年間進歩のない官製図に失望していた氏が、現代の技法を用いて一から描き直したと考えればいい。データは2001年8月現在のため、旧区分9ゾーン+コンカン鉄道で、縮尺の制限から駅数も1200駅に絞られているが、いまだに、ウェブ上で公開されているものとしては最も詳しい。これを原点に、2003年の「一目でわかるインド鉄道網」、2005年の地図帳初版、そして2010年の地図帳第2版と、地図表現の改良の足跡をたどるのも一興だ。

Blog_india_railmap_hp6 ■参考サイト
ロイチャウドリー氏の個人サイトは現在工事中だが、同じ鉄道地図は残っている。
http://samit.org/irmap/

IRFCAの「鉄道地図および地理資料」のページは、さらに大都市周辺を中心にした各地域の鉄道地図、そして歴史地図の紹介へと続いている。ロイチャウドリー氏やガネッシュ氏のシリーズを始め、さまざまな路線図が並ぶ。別のページ「配線図と地図 Layouts and Maps」では、各種の配線図もサムネールつきで紹介されている。

■参考サイト
IRFCA 配線図と地図  http://www.irfca.org/gallery/Layouts/

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2011年4月 5日 (火)

インドの鉄道地図 IV-ロイチャウドリー地図帳第2版

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「インド鉄道大地図帳」
第2版

2010年10月24日、サミット・ロイチャウドリー Samit Roychoudhury 氏の名で一通のメールが届いた。「前回、インド鉄道大地図帳 The Great Indian Railway Atlas の初版のご購入ありがとうございました。地図帳第2版の発刊をお知らせできることを嬉しく思っています。」 さっそく案内されていたサイトのサンプル画像をチェックする。いくら地図ファンでも新版が出るたびに購入するつもりはないのだが、今回はすぐに決心がついた。

かの国の地図一般の状況からして、初版に出会ったときも相当のインパクトがあったから、そのことは前回記事「インドの鉄道地図 III」に書き留めた。しかし、第2版の内容は旧刊の水準をはるかに超え、さらに磨きがかかっている。何より、ヨーロッパの鉄道地図にも引けを取らないカラフルで精度の高い図面、洗練され行き届いたデザインに目を見張る。サイズは横18cm×縦24cm、全104ページ、相変わらずのコンパクトな冊子だが、この中にインド鉄道網に関する有用な情報がぎっしり詰まっている。

では、第2版はどう変わったのか。巻頭言によれば、「第2版は、初版の更新と同時に新たな情報の提供も目的としている。地図はより正確になった。水部の描写はさらに詳細になった。主要道路、空港、町が表示対象に追加された。フルカラー版への移行によって、色による管区(下注)の描き分けができるようになった。」

*注 インド鉄道の管理体系は、17のゾーン zones(地域鉄道)に区分され、各ゾーンがさらにディヴィジョン divisions(管理区)に細分化されている。

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サンプル図(裏表紙より)

まず、地図の正確さというのは、縮尺が大きくなったのではなく、路線や河川などの地理的位置が精密になったことを指している。初版でも路線の軌跡は決して不正確とは思わなかったが、改めて新版と比較すると確かに甘めだ。たとえば、初版を含め従来の路線図で極端な蛇行ルートのように描かれてきたコンカン鉄道 Konkan Railway が、実はすっきりと合理的な線形をしていることなど、第2版が出なければまだ気づかずにいただろう。

*注 コンカン鉄道はインド西海岸、ムンバイ Mumbai とマンガロール Mangalore を直結する新線。難工事の末、1998年に全通した。
従来の路線図の例 http://mappery.com/map-of/Konkan-Railway-Map

新旧とも同じ1:1,500,000(150万分の1)という小縮尺図なので、いくら精密な表現といっても限界がある。しかし、路線相互の位置や接続関係がわかれば十分だという考え方を、著者は決して採らない。それどころか新版では、川や湖などのいわゆる水部、そして海岸線、国境といった、鉄道地図ではあくまで脇役の要素まで、地形図並みの密度・精度で描き切ってしまう勢いだ。一般利用できない官製地形図に代わって、参照資料のリストに加えられたAMS(旧米国陸軍地図局)製の地形図が、徹底主義の拠りどころを明らかにしている。

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凡例(地図記号)の一部

次に主要道路や空港の表示だが、これは特別目立つものではない。空港は一応、国際空港、国内空港、その他の3段階表示になっているが、道路のほうは、等級などによる区別が一切見られない。どちらかというと、水部とともにベースマップの構成要素を成すもので、主題図にとっては背景の役割だ。ベージュの陸地に白抜きの道路、ライトブルーの水部というごく控えめな色の組合せは、上に載る鉄道網の表示を程よく引き立てている。

3番目の全頁フルカラー化は、新版最大の特色だ。これによって、管理区ごとに路線の塗り色を変えられるようになった。見た目の効果は大きく、表紙を除いて青と黒の2色刷りだった初版と見比べれば、別の書物かと思うほどの華やかさだ。隣接する管理区に類似色を充てないようにしながらも、トーン(色調)は全体で揃えているので、視覚的な統一感が適度に保たれているのもいい。色分けは鉄道施設の記号にも及び、機関庫(電気、ディーゼル、蒸気)、工場、操車場、コンテナターミナルなどを、頭字語と色で区別する。

メインの鉄道地図は74ページ(コルカタ拡大図を含む)と、縮尺は同じでも初版の55ページに比べてかなり増えた。図郭の変更で生じた余白は、都市近郊の拡大図を充実させるために使っている。対象となった都市は初版では8か所だったが、第2版は30か所以上にもなり、路線が錯綜する地域の読図がずいぶんと楽になった。拡大図では、貨物用の引込線でも2km以上あれば表示の対象になる。線路数も正確に数えてあるので、もはや配線図の域に踏み込みつつある。

このように、「インド鉄道大地図帳」第2版からは、初版の成果と反響を生かしながら、もう数段の高みを目指した著者の執念がひしひしと伝わってくる。精緻化された情報が、著者自身の巧みなデザインで効果的に表現されたことによって、地図帳はかけがえのない価値を獲得した。彼が筋金入りの鉄道ファンであると同時に優れたデザイナーであったことは、インドの鉄道に関心をもつすべての人々にとって大変幸運だったと思わないわけにはいかない。

本書については下記サイトにサンプル画像を含めて紹介があり、オンラインショップから国外へも送ってくれる。各国の鉄道・地図商でも扱うところ(スタンフォーズ Stanfords、ダージリンヒマラヤ鉄道協会 Darjeeling Himalayan Railway Society 等)があるので、容易に入手できる。

【追記 2016.4.19】
2015年11月に待望の第3版が刊行された。「インドの鉄道地図 VI-ロイチャウドリー地図帳第3版」で詳述している。

■参考サイト
The Great Indian Railway Atlas  http://indianrailstuff.com/

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2011年4月 4日 (月)

インドの鉄道地図 III-ロイチャウドリー地図帳

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「インド鉄道大地図帳」
初版

今回紹介するのは、サミット・ロイチャウドリー Samit Roychoudhury 氏が自ら企画・製作・出版する「インド鉄道大地図帳 The Great Indian Railway Atlas」だ。2005年6月に出版された(下注)。"Great" というタイトルに似合わず、サイズは横18cm×縦24cm、ページ数は84ページと、前回紹介したIMSの鉄道地図帳とほとんど変わらない("Great" の形容詞は、あるいは Railway に係るのかもしれない)。

*注 この記事は「インド鉄道大地図帳」初版を扱う。2010年10月に刊行された第2版については「インドの鉄道地図 IV」で詳述している。

しかしそれ以外の点では、両者はまさに好対照を成している。IMSが赤い表紙なら、こちらは青表紙で、ブルーアトラスとも称される。政府監修に対してプライベート出版、文章主体に対して図版に専心、さらに誤解を恐れずに言うなら、IMSが古いインド映画を思わせる時代がかった編集スタイルなのに対して、こちらはコンピュータ世代が創り出したスマートなデザインと明快なコンセプトの刊行物だ。

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サンプル図
(裏表紙より)

メインは1:1,500,000(150万分の1)の区分図で、鉄道のない地域を除いて全土が61ページに分割されている。また、デリー、コルカタ、ムンバイなどの大都市近郊は、別に拡大図がある。この中に、インドの鉄道路線に関する情報が満載なのだが、まず画期的なのは、廃駅を含めて合計1万もあるという駅が、残らず掲載されていることだろう。線路の状況も、軌間、単線・複線、電化・非電化の別、新線、線増、電化の工事中・計画中、休止線に至るまで、実に詳しく表示されている。

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鉄道を表す地図記号

さらに、記号デザインが直感的で迷いがないのがいい(右写真は凡例の一部)。単線の線路は1本線、複線は2本線で描くといったように、線の数で線路数が分かる。建設中の路線は破線で表すので、この破線が1本線に添えてあれば、複線化工事中ということだ。軌間も広軌は太線、狭軌は細線と、まさに見たままだ。インドの鉄道は、幹線こそ1676mm(5フィート6インチ)の広軌だが、地方の支線には1000mm(メーターゲージ)をはじめ、762mm、610mmの軌間が残っている。改軌の計画がある狭軌線は、細線に、計画中の広軌線を表す薄い破線が添えてあるので、すぐ判断がつく。

この種の地図では、区分が詳細になればなるほど、凡例(記号一覧)と首っ引きを強いられる。2色刷りという制約がある中で、こうした素直で明快なデザインは稀と言ってよく、特に評価されるべきだろう。

図示されているのは線路にとどまらない。鉄道施設では、車庫にEL、DL、SLの別があり、工場、貨物ヤード、コンテナターミナルが記号化されている。かつての日本の時刻表添付地図のように、管理局の境界が、管理局 Division 名の略称とともに書き込まれている。さらにつぶさに見ていくと、主なトンネルや鉄橋が注記されていたり、山岳路線が網掛けで示されていたりと、地図ファンの興味までそそるのが小憎らしい。この国はほとんどの官製地形図を国外に公開していない。そのため、詳細な地形を知るすべがなく、かえって焦燥感を掻き立てられるのだ。

付録や検索機能も充実している。表紙の裏には、ここだけフルカラーの全国図がある。地勢のシェーディング(陰影)を施したベースマップに、現在の全国鉄道網を地域鉄道 Zones 別の色分けで示したものだ。また、巻末には、1893年の全国鉄道網(略図)、南ベンガルの狭軌鉄道網の地図、そして最後に20ページに及ぶ駅名索引(これも休止駅を含む)がついている。

地図帳の裏表紙に記された著者紹介によると、「サミット・ロイチャウドリー氏は1990年代、アーメダバードの国立デザイン研究所に学び、その後数年間カルカッタのコンピュータ会社に勤務した。彼は少年時代から列車に熱中していたが、この地図帳から彼の長年の研究と詳細な情報収集の成果が読み取れる。」 個人でこつこつ集めたデータから鉄道地図帳を作った例はイギリスにもあるが、彼が相手に定めたのは巨人のごとき鉄道大国だ。並みの決意ではできなかっただろう。

紹介文は続く。「これはきっとあなたの役に立つはずだ。なぜなら他の地図帳と違い、鉄道を深く理解し愛する人々のために編まれているのだから...。」 1冊24.99USドルと多少値が張るとはいえ、推薦の言葉どおり、インド鉄道の情報源として第一級の図化資料が現れたのは間違いない。

(2007年7月12日付「インドの鉄道地図 II」に加筆)

■参考サイト
The Great Indian Railway Atlas  http://indianrailstuff.com/
 ただし、現在は第2版の紹介になっている。

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2011年4月 3日 (日)

インドの鉄道地図 II-IMS地図帳

Blog_india_railatlas1

インドはアジア随一の鉄道王国だ。世界で見ても2番目の規模をもつ。総延長63,140km、駅の数6,856。機関車7,739両、客車39,236両を保有し、1日1,100万人の旅客、110万トンの貨物を運ぶ。さらにインド鉄道は、国内最大の従業員を抱える事業所でもある...。

インド地図サービス社 Indian Map Service (IMS) が発行する「インド鉄道地図帳 India Railway Atlas」(写真は2005年版)は、書名から想像する内容よりも、鉄道旅行のための資料集といったほうが近い。上のデータはここから引用したものだ(下注)。地図帳の奥付にはインド政府 Government of India の著作権表示が見られ、鉄道省監修の公式ガイドといった位置付けなのだろう。

*注 現在は中国に抜かれてアジア第2位、世界ではアメリカ合衆国、ロシア、中国に次いで第4位。公式ページ(2011年現在)によると、ルート総延長は63,028km、駅の数6,853、機関車7,566両、客車37,840両、貨車222,147両。

今回はこの旅行者用地図帳を紹介したい。英語版とヒンディー語版があるが、英語版全96ページの構成は以下のとおりだ...

・全国観光図(インド全図の上に主要都市、記念物・巡礼地、自然保護区、ビーチ、避暑地の位置を表示)
・全国ハイウェイおよび航空路図
・全国鉄道管理区域図(インド全図の上に主要鉄道路線と駅、地域鉄道(管理局)界を表示)
・豪華列車 The Royal Trains、軽便列車 The Toy Trains(概説とルート図)
・現代インド鉄道の驚異(コンカン鉄道 Konkan Railway、コルカタ市メトロ、チェンナイ市高架鉄道の概説)
・州別鉄道地図とデータ集
・州別主要列車時刻表(列車名、停車駅、時刻ほか)
・デリー、ムンバイ等主要都市のメトロ・郊外線路線図
・興味深いインドの鉄道データ(90項目)
・興味深い世界の鉄道データ(14項目)
・駅名索引

メインテーマであるはずの州別鉄道地図は、色刷りページを充てているとはいえ、白地図に路線と主要駅をプロットしただけの、いたって簡素なものだ。路線網はほぼ完全で、地理的位置も正しく示されているが、幹線・支線、軌間の別といった鉄道地図らしい表示は一切見られない。むしろ関心は、各州の特徴を描き分けて、鉄道旅行を慫慂することにあるようだ。

例えば、北部のウッタル・プラデーシュ州 Uttar Pradesh の概説を引用すると、「インドで最も人口の多い州で、面積では4番目にランクされる。州はたいへん多彩で興味深い文化と歴史を有する。偉大な賢人、神聖な書物と叙事詩、そして大河をもつ土地で、そこには永久の歴史と無限の伝説がある。中世、州はムスリムの支配下に入り、ヒンドゥー、イスラム両文化の融合を導いた。イギリスの統治下でも文化的な主導権を保ち、立派にインドの独立戦争を主導した。州は北部山岳地域、南部丘陵地域、ガンジス平野の3つに分けられる。それはまた、高原避暑地、巡礼地、自然保護区、国立公園、史跡その他を含む100以上の旅行先を擁していて、休暇を求める人たちには天国だ。」

概説のかたわらには、州の面積、人口などのプロフィールや交通手段、主な観光地の特徴、最寄り駅からの距離表が添えられている。筆者のようにインドの地理に不案内な者でも、読めばそれなりに地域的特色が理解できた。

一方、中央に綴じ込まれた列車時刻表 Railway Time Table は、縦軸に駅名、横軸に列車名という目に馴染んだマトリクスではなく、主な発駅ごとに、列車単位で列車番号、列車名、停車駅、発着時刻、運行曜日、ルート距離を順に記述したものだ。出発・到着地別に並んでいる航空時刻表を想像するといい。むろん旅行者向けということなので、時刻表と同様、優等列車の「一目でわかる At a glance」抜粋版になっている。ラージダーニー・エクスプレス(首都急行)Rajdhani Express、シャターブディー・エクスプレス(新世紀急行)Shatabdi Express のような特急列車群に始まって、一般的な急行列車 Express まで、48ページにわたってぎっしり書き込まれて見事だ。しかしこれでも全国で1日7,000本という旅客列車の本数から見れば、ほんの一握りということになる。

IMSの地図帳は、駅や鉄道施設といったコアなファン向けの情報源ではないとはいえ、鉄道を通じたインドの旅の参考書と位置付けるなら、一読するに足る内容だ。筆者はこの地図帳をたまたまドイツで見つけたが、現地インドの地図ショッピングサイト(下記参考サイト)でも、国外へ発送してくれるようだ。

(2007年7月5日付「インドの鉄道地図 I」に加筆)

■参考サイト
出版社の地図帳紹介ページ
http://indianmapservice.co.in/railway_atlases.php
インディアマップストア(ショッピングサイト)
http://www.indiamapstore.com/
 鉄道地図帳は、"Map of India"のジャンルにある

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2011年4月 2日 (土)

インドの鉄道地図 I-1枚もの

我が国の9倍近い面積をもつインドには、64,000kmもの鉄道網がある。全路線の8割強がインディアンゲージと呼ばれる1676mmの広軌線だが、地方にはメーターゲージ(1000mm軌間、以下、M軌と表記)や、トイトレインToy Train(軽便列車)の舞台である1000mm未満の狭軌線も残っている。これから数回にわたって、手元にあるものを中心に、インドの鉄道地図を紹介したい。まずは、大判用紙に印刷された1枚ものから。

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インド国鉄時刻表
「トレーンズ・アット・ア・グランス」

国有のインド鉄道 Indian Railways が発行する「トレーンズ・アット・ア・グランス Trains at a Glance(略称TAAG)」という時刻表がある。毎年1回刊行されるもので、"at a glance"(一目見て、一見して)の名が示すとおり、長距離列車や急行列車の時刻を掲載した時刻表だ(下注)。

*注 より詳細な時刻表が必要なら、「インディアン・ブラッドショー Indian Bradshaw」(W. Newman's & Co. Ltd. 発行)がある。

その巻末に、別刷りの鉄道地図が添付されている。サイズは横42cm×54cm、フルカラー印刷。ベースマップはインド測量局 Survey of India(日本の国土地理院に該当する)の製作で、段彩と陰影を使っておおまかな地勢が描かれている。縮尺は明示されていないが、簡易計測したところ、約1:7,500,000(750万分の1)、すなわち図上1cmが実距離75kmに相当する。

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時刻表添付の鉄道地図

テーマである鉄道路線は、軌間と幹線・支線を描き分けている。すなわち、広軌幹線は濃いオレンジで太く、その他の広軌線は薄いオレンジで細く、M軌は青紫の細線、それ以下の狭軌線は緑の細線だ。一方、駅の表示は主要駅のみだが、州都や主要都市の駅は記号の形で他と区別できる。

多色刷りのベースマップ上に、色分けした路線網を加刷するというのは結構難しい条件だが、地図はいわゆる弁別性を失わず、時刻表の付録としては立派な部類に入る。地図の底部に有名観光地の索引があって、地図に付された番号と対照できるようにしているのも、親切な工夫だ。不案内な土地の場合、まずは一覧性のある小縮尺図で全体を把握したい。そういう利用者の要望を満たしてくれる、まさにアット・ア・グランスな地図といえるだろう。

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同 一部を拡大

ちなみに、筆者が参照した時刻表は2005年版だが、その後、2009年11月版をダウンロードした。ここにも上記の鉄道地図がついている。著作権表示は「インド政府2001年 (c) Government of India, 2001」で、2005年版と何ら変化がないように見えたが、細部を比べると、北部のデリー近郊や、南部のタミル・ナードゥ州など、かなりのM軌線が広軌の記号に修正されている。1990年代から推進されている軌間統一プロジェクト Project Unigauge によって、鉄道地図は着実に塗り変えられているようだ。

■参考サイト
インド鉄道-旅客列車(のページ)
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/
"Indian Railways Map" のリンクで、上記鉄道地図のPDF版が見られる。
直接リンク(リンク切れご容赦)
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/pdf/IR_Map.pdf

インド測量局 Survey of India 自身も長年、独自の鉄道地図を刊行し続けてきた。同局の公式サイトにある「壁掛け一般図 GENERAL WALL MAPS」のページに、地勢図、行政区分図、道路地図などとともに内容が掲載されている。それによれば、名称は「インド鉄道地図 Railway Map of India」、縮尺1:3,500,000(350万分の1)、サイズは横90cm×縦120cm、価格40ルピー(1ルピー1.8円として72円!)、言語はヒンディー語と英語(併記ではなく言語別版)だ。右写真がその実物で、これは1999年の刊行、1962年の初版から数えて第18版と記載されている(下注)。

*注 1961年以前は67マイル1インチの縮尺で毎年刊行していたと、欄外記事にある。

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インド測量局の鉄道地図

壁掛け地図 Wall maps とは、大判用紙に印刷されたポスター状の地図のことだ。紙の面積が上記インド鉄道の図の4倍以上ある分、縮尺は大きくなり、情報量も増える。全駅ではないものの、駅の表示はかなり詳しく、駅名の文字の大きさで駅の格がわかるようにもなっている。

鉄道記号は、軌間を線の太さで、単線・複線を実線と二重線で、電化を直交する短線で表す。新設の工事線とともに、広軌への改軌中の記号があるのがこの国らしい。凡例では、緑色が広軌、赤色がM軌のように誤解しそうだが、色は地域別の管理主体を示す目的で使われている。凡例の色はあくまでサンプルだ。

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インド鉄道の組織は、従来9つの地域鉄道 Railway Zones に分割され、それぞれ北部鉄道 Northern Railway、中部鉄道 Central Railway のように称されてきた(分社化しているのではなく管理局のようなものらしい)。地図では、州域をハッチで塗り分けた上に、地域鉄道ごとに路線の色を変えて重ね描きする。州界と鉄道界は一致しないので、なんでもないように見えて、結構高度な配色技巧が駆使されていることになる。とはいえ、2003年に地域鉄道の再編が行われ、現在はコルカタメトロ Kolkata Metro を含めて17に細分化されている。苦心の塗分けも限界に近づいているのではないだろうか。

インド測量局の刊行物は概してそうなのだが、多色刷なのに全体がくすんだトーンで、用紙も印刷も決して上質とはいえない。残念ながら、キレのいい最近の地図に慣れた目には、いささか古びて見えるだろう。情報量だけが取り柄だったのだが、ロイチャウドリー氏の優れた地図帳(「インドの鉄道地図 III、IV」で詳述している)が登場してからは、この点でも文字通り色あせてしまった。

■参考サイト
インド測量局「壁掛け一般図」のページ
http://www.surveyofindia.gov.in/general_wall_maps.htm

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「インド-鉄道」図

もう一種、いくつかの地図商で扱っているインドの鉄道地図「インド-鉄道 India, Railways」を紹介しておこう。実物は持っていないが、アメリカの地図商ザ・マップショップ The Map Shop のサイトで比較的大きな画像が見つかる(下記参考サイト、右画像はそのサイトから)。横70cm×縦100cmのサイズで、フルカラー印刷。民間出版社の製作らしいが、サンプル図を見る限り、印刷品質は測量局版よりだいぶ良さそうだ。地図表現では、州域を色とりどりに塗り分けたベースマップにまず目が行く。路線網の描き方は単純で、駅の記載密度こそ測量局版と同程度あるが、軌間や線路数といった専門的情報は付加されていない。学校の教材にでも使うのだろうか。この地図はインディアマップストア India Map Store のショッピングサイトでも扱っているので、興味のある方はアクセスされるといい。

■参考サイト
ザ・マップショップのサイトにある上記地図の画像
http://www.wall-maps.com/Countries/IndiaRailMap.htm
部分拡大画像
http://www.wall-maps.com/Countries/india_rail_map_close.htm
インディアマップストアの該当ページ
http://www.indiamapstore.com/wall-maps/IMS0099.html

★本ブログ内の関連記事
 インドの鉄道地図 II-IMS地図帳
 インドの鉄道地図 III-ロイチャウドリー地図帳
 インドの鉄道地図 IV-ロイチャウドリー地図帳第2版
 インドの鉄道地図 VI-ロイチャウドリー地図帳第3版
 インドの鉄道地図 V-ウェブ版

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