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2011年4月 2日 (土)

インドの鉄道地図 I-1枚もの

我が国の9倍近い面積をもつインドには、64,000kmもの鉄道網がある。全路線の8割強がインディアンゲージと呼ばれる1676mmの広軌線だが、地方にはメーターゲージ(1000mm軌間、以下、M軌と表記)や、トイトレインToy Train(軽便列車)の舞台である1000mm未満の狭軌線も残っている。これから数回にわたって、手元にあるものを中心に、インドの鉄道地図を紹介したい。まずは、大判用紙に印刷された1枚ものから。

Blog_india_timetable
インド国鉄時刻表
「トレーンズ・アット・ア・グランス」

国有のインド鉄道 Indian Railways が発行する「トレーンズ・アット・ア・グランス Trains at a Glance(略称TAAG)」という時刻表がある。毎年1回刊行されるもので、"at a glance"(一目見て、一見して)の名が示すとおり、長距離列車や急行列車の時刻を掲載した時刻表だ(下注)。

*注 より詳細な時刻表が必要なら、「インディアン・ブラッドショー Indian Bradshaw」(W. Newman's & Co. Ltd. 発行)がある。

その巻末に、別刷りの鉄道地図が添付されている。サイズは横42cm×54cm、フルカラー印刷。ベースマップはインド測量局 Survey of India(日本の国土地理院に該当する)の製作で、段彩と陰影を使っておおまかな地勢が描かれている。縮尺は明示されていないが、簡易計測したところ、約1:7,500,000(750万分の1)、すなわち図上1cmが実距離75kmに相当する。

Blog_india_railmap1
時刻表添付の鉄道地図

テーマである鉄道路線は、軌間と幹線・支線を描き分けている。すなわち、広軌幹線は濃いオレンジで太く、その他の広軌線は薄いオレンジで細く、M軌は青紫の細線、それ以下の狭軌線は緑の細線だ。一方、駅の表示は主要駅のみだが、州都や主要都市の駅は記号の形で他と区別できる。

多色刷りのベースマップ上に、色分けした路線網を加刷するというのは結構難しい条件だが、地図はいわゆる弁別性を失わず、時刻表の付録としては立派な部類に入る。地図の底部に有名観光地の索引があって、地図に付された番号と対照できるようにしているのも、親切な工夫だ。不案内な土地の場合、まずは一覧性のある小縮尺図で全体を把握したい。そういう利用者の要望を満たしてくれる、まさにアット・ア・グランスな地図といえるだろう。

Blog_india_railmap1_detail
同 一部を拡大

ちなみに、筆者が参照した時刻表は2005年版だが、その後、2009年11月版をダウンロードした。ここにも上記の鉄道地図がついている。著作権表示は「インド政府2001年 (c) Government of India, 2001」で、2005年版と何ら変化がないように見えたが、細部を比べると、北部のデリー近郊や、南部のタミル・ナードゥ州など、かなりのM軌線が広軌の記号に修正されている。1990年代から推進されている軌間統一プロジェクト Project Unigauge によって、鉄道地図は着実に塗り変えられているようだ。

■参考サイト
インド鉄道-旅客列車(のページ)
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/
"Indian Railways Map" のリンクで、上記鉄道地図のPDF版が見られる。
直接リンク(リンク切れご容赦)
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/pdf/IR_Map.pdf

インド測量局 Survey of India 自身も長年、独自の鉄道地図を刊行し続けてきた。同局の公式サイトにある「壁掛け一般図 GENERAL WALL MAPS」のページに、地勢図、行政区分図、道路地図などとともに内容が掲載されている。それによれば、名称は「インド鉄道地図 Railway Map of India」、縮尺1:3,500,000(350万分の1)、サイズは横90cm×縦120cm、価格40ルピー(1ルピー1.8円として72円!)、言語はヒンディー語と英語(併記ではなく言語別版)だ。右写真がその実物で、これは1999年の刊行、1962年の初版から数えて第18版と記載されている(下注)。

*注 1961年以前は67マイル1インチの縮尺で毎年刊行していたと、欄外記事にある。

Blog_india_railmap2
インド測量局の鉄道地図

壁掛け地図 Wall maps とは、大判用紙に印刷されたポスター状の地図のことだ。紙の面積が上記インド鉄道の図の4倍以上ある分、縮尺は大きくなり、情報量も増える。全駅ではないものの、駅の表示はかなり詳しく、駅名の文字の大きさで駅の格がわかるようにもなっている。

鉄道記号は、軌間を線の太さで、単線・複線を実線と二重線で、電化を直交する短線で表す。新設の工事線とともに、広軌への改軌中の記号があるのがこの国らしい。凡例では、緑色が広軌、赤色がM軌のように誤解しそうだが、色は地域別の管理主体を示す目的で使われている。凡例の色はあくまでサンプルだ。

Blog_india_railmap2_detail
同 一部を拡大

インド鉄道の組織は、従来9つの地域鉄道 Railway Zones に分割され、それぞれ北部鉄道 Northern Railway、中部鉄道 Central Railway のように称されてきた(分社化しているのではなく管理局のようなものらしい)。地図では、州域をハッチで塗り分けた上に、地域鉄道ごとに路線の色を変えて重ね描きする。州界と鉄道界は一致しないので、なんでもないように見えて、結構高度な配色技巧が駆使されていることになる。とはいえ、2003年に地域鉄道の再編が行われ、現在はコルカタメトロ Kolkata Metro を含めて17に細分化されている。苦心の塗分けも限界に近づいているのではないだろうか。

インド測量局の刊行物は概してそうなのだが、多色刷なのに全体がくすんだトーンで、用紙も印刷も決して上質とはいえない。残念ながら、キレのいい最近の地図に慣れた目には、いささか古びて見えるだろう。情報量だけが取り柄だったのだが、ロイチャウドリー氏の優れた地図帳(「インドの鉄道地図 III、IV」で詳述している)が登場してからは、この点でも文字通り色あせてしまった。

■参考サイト
インド測量局「壁掛け一般図」のページ
http://www.surveyofindia.gov.in/general_wall_maps.htm

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「インド-鉄道」図

もう一種、いくつかの地図商で扱っているインドの鉄道地図「インド-鉄道 India, Railways」を紹介しておこう。実物は持っていないが、アメリカの地図商ザ・マップショップ The Map Shop のサイトで比較的大きな画像が見つかる(下記参考サイト、右画像はそのサイトから)。横70cm×縦100cmのサイズで、フルカラー印刷。民間出版社の製作らしいが、サンプル図を見る限り、印刷品質は測量局版よりだいぶ良さそうだ。地図表現では、州域を色とりどりに塗り分けたベースマップにまず目が行く。路線網の描き方は単純で、駅の記載密度こそ測量局版と同程度あるが、軌間や線路数といった専門的情報は付加されていない。学校の教材にでも使うのだろうか。この地図はインディアマップストア India Map Store のショッピングサイトでも扱っているので、興味のある方はアクセスされるといい。

■参考サイト
ザ・マップショップのサイトにある上記地図の画像
http://www.wall-maps.com/Countries/IndiaRailMap.htm
部分拡大画像
http://www.wall-maps.com/Countries/india_rail_map_close.htm
インディアマップストアの該当ページ
http://www.indiamapstore.com/wall-maps/IMS0099.html

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