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2010年11月 4日 (木)

カナダの地形図

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官製地形図索引図 2001年版

上に示したのは、カナダの官製地形図の索引図の表紙だ。例として大西洋諸州 Atlantic Provinces 編を示した(下注)が、右側に添付した地図でわかるとおり、全体は6分冊になっている。なにしろロシアに次いで世界第2位、日本の26倍もの面積をもつ国土なので、1:50,000の縮尺で網をかけると、インデックスでさえこれぐらいのボリュームになるということだ。

*注 大西洋に突き出したニューブランズウィック州 New Brunswick / Nouveau-Brunswick、ノバスコシア州 Nova Scotia、プリンス・エドワード・アイランド州 Prince Edward Island の3州を沿海州 Maritime provinces / the Maritimes、これに北方のニューファンドランド・ラブラドール州 Newfoundland and Labrador を加えて、大西洋諸州と呼ぶ。

カナダの地形図は、カナダ天然資源省 Natural Resources Canada のもとにある地形情報センター Centre for Topographic Information が作成している。2005年ごろ議論された地形図の刊行廃止はどうやら撤回されたようで、同センターのサイトではその後も、全国をカバーする汎用地形図体系の提供が案内されている。とはいえ、調べてみると、筆者が最初に同国の地形図を入手した1990年代に比べて、だいぶ様相が変わってきたようだ。

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1:1,000,000国際図 NM 9/10 バンクーバーを縮小

まず、縮尺別シリーズのいくつかが姿を消した。現在、刊行されているのは縮尺1:250,000と1:50,000の区分図シリーズだけだが、かつてはいわゆる国際図(IMW)図式による1:1,000,000(100万分の1)もカタログに掲載されていた。さらに遡れば、1:125,000や1:500,000も存在した。1:1,000,000国際図というのは、世界標準の地形図体系として第1次大戦以前から開始されていた国際プロジェクトだ。カナダでも、共通仕様に基づいて69面(下注)が製作されたが、在庫整理によって廃版となったようだ。代替措置として、ウェブ上のアーカイブで全点が閲覧可能になっているほか、スキャニングによるデジタルプリントを行う事業者も存在する。

*注 自国領が含まれる図葉は74面あるが、国境をまたぐ5面はアメリカ合衆国が作成した(図郭内に含まれる面積が多いほうの国が担当)。

販売体制も民間に完全移譲された。数年前までカナダ・マップ・オフィス Canada Map Office という小売をしてくれる部局があったが、現在は、地域流通センター Regional Distribution Centre と称される各地の公式ディーラー(地図商)を通じて購入するように告知が出ている。

また、印刷方式も、オフセット印刷からデジタルプリンタ出力に変わった。これまでは両面刷りで、裏面に薄い色で詳しい凡例(記号の説明や略号の意味)が掲載されていたのだが、新しいデジタル版の裏面には何も刷られていない。その代わり、凡例欄がおもて面に移され、カラー化されている。2010年9月の段階では、公式ディーラーの中でもオフセットの古いストックを送ってくれるところがまだあった。しかし、消えていくのは時間の問題だろう。筆者はデジタルプリント特有の、線のキレの悪さや用紙の湿ったような手触りが今一つ好きになれないが、地図印刷のオフセット離れは、ユーザーの嗜好を越えて、もはや世界的な趨勢だ。

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1:250,000地形図 30M トロントの一部
(c) Department of Natural Resources, Canada. All rights reserved.

存続している地形図シリーズについて少し紹介しておこう。カナダの地形図はすっきりと明るいデザインが特徴だ。ナイアガラ滝 Niagara Falls 周辺の1:250,000を例に挙げよう(上図参照)。中央を北上するナイアガラ川を境に左がカナダ、右はアメリカ領になる。地図そのものはカナダの刊行物だが、アメリカ領の部分は同国製の地形図をそっくり用いているので、両者の違いが歴然としている。特に目立つのは道路記号だ。アメリカは黒のくくり(縁取り)つきなのに対して、カナダはくくりを用いず、色の線だけで表現している。さらに、赤(舗装道)と橙(未舗装道)という、暖色系で明度の高い色を用いている。これが明るいイメージをもたらす原因だろう。また、鉄道記号もアメリカに比べて線がずいぶんとスマートだ。

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1:50,000地形図表紙
(左)レイク・ルイーズ 1996年
(右)プリンス・ルパート 2001年

高度の単位はメートル表示だが、イギリスの自治領という出自から1975年まではヤードポンド法に拠っていた。その名残りを示すフィート単位の地図がまだ残っている。むしろ、メートル法を採用した地図には、図郭の両端に METRIC/MÉTRIQUE(メートル法による)と大書して、ユーザーの注意を促しているほどだ。注記では最近、左下隅に Provisional Print(暫定印刷)と加刷されたものも散見する。同センターの2008年10月の発表資料によると、これは公式のデジタルファイルから印刷された正本であることを証明するもので、販売枚数の少ない図葉はこの方式にするとある。しかし、全面移行によってこの区別は意味をなさなくなり、代わりに正本の印として、円形のホログラムシールが張られるようになった。

2種類のシリーズのうち、1:250,000は6~7色刷りが基本(デジタルプリントでは4色に変換)で、北部ではモノクロ図もある。経度2度(北緯68度以北では4度)、緯度1度の区割りが1図郭で、1991年のカタログによれば、全土を915面でカバーしている。等高線間隔は平地か山岳地域かによって異なる。平地では20m(フィート表示の場合100フィート)、山岳地域は100m(同500フィート)が多数派のようだが、その中間の刻みを採用した図葉もある。地勢表現としてはそれのみで、ぼかし(陰影)など視覚的な効果は一切考慮されていない。氷河の表現も、等高線の色を青に代えるか、その範囲を水色の塗りで覆っただけの、いささか淡泊なものだ。

一方、1:50,000は、1:250,000を縦横とも4等分した図郭だ。2000年ごろの改訂図から表紙にフルカラーの写真が配置され、折図としての体裁が整った。印刷もこの時点でプロセスカラー(CMYKの4色)印刷になっている。もちろん、居住地のほとんどない地域では、モノクロ図や、空中写真に地名だけ付加したいわゆる写真図も相当数ある。

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1:50,000地形図 31G/5 オタワの一部
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1:50,000地形図 103J/8 プリンス・ルパートの一部
(c) Department of Natural Resources, Canada. All rights reserved.

さて、これらの地形図の入手方法についてだが、先述した公式ディーラーは、外国からの注文にも対応してくれるはずだ。ただし、ディーラーによってはその州内の図葉しか扱わないところもあるので、確認が必要だ。もちろん、カナダの地形図はウェブサイトでも全面的に公開されているので、大判用紙の印刷図という古典的な形態にこだわらなければ、入手に何の障害もない。また、情報源を明記すればオンラインや印刷物にも自由に使ってよいとされていて、アメリカと並び、地形図にもパブリックドメイン(公有物)の考え方が貫かれている。カナダを学ぶのに、ナビゲーター役として、あるいは記録のツールとして、これを利用しない手はない。

■参考サイト
地形情報センター  http://maps.nrcan.gc.ca/

ウェブ閲覧、公式ディーラーについては「官製地図を求めて-カナダ」を参照。
http://map.on.coocan.jp/map/map_canada.html
また、地図複製に関するセンターの見解は下記URLの"Commercial and non-commercial Reproduction" 参照。
http://geogratis.gc.ca/geogratis/en/notiavis.html

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