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2010年11月11日 (木)

カナダの旅行地図-ITMB

地形図を、もっと旅行や野外活動に役立つものに改良しようとする動きは、カナダでも見られる。ITMBが手掛ける旅行地図シリーズの刊行がその一例だ。ITMB出版社 ITMB Publishing は、カナダ西岸、ブリティッシュコロンビア州リッチモンド Richmond に本拠を置いている。その名が International Travel Maps and Books の略であることに象徴されるように、地図ファンにとってITMBは、世界の国・地域別地図のメーカーという印象が強いかもしれない。

事実、会社のサイトに掲げられた沿革によれば、きっかけは南米の500万分の1図だったという。1980年代、まだ南方の大陸に関心を払うような地図会社がなかった時代に、南米好きのオーストラリア人地図作家がカナダ人の地図商と組んで、その自費出版を試みた。国別地図は1990年のコスタリカ編が最初だ。これが同地への観光ブームに乗ってヒットしたことで、中南米の国・地域別地図をシリーズ化する道が拓かれた。その後は、対象範囲を全世界に拡大するとともに、地元ブリティッシュコロンビア British Columbia の旅行地図分野にも進出している。しかし、これらの地図はいずれも、オリジナルの図版を製作するか、または各国の民間地図会社の図版を利用したものだった。

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(左)表紙 (右)裏表紙

今回のテーマである官製地形図をベースにした旅行地図は、それとは別で、2007年から始まったカナダ天然資源省 Natural Resources Canada との共同事業による成果物だ。筆者の手元にある地図で紹介しよう。シリーズの一つ、「カナディアンロッキー:バンフ、クートネーおよびヨーホー国立公園 Canadian Rockies: Banff, Kootenay and Yoho National Parks」は、縮尺1:250,000の集成図だ(右写真)。表紙に 82N&K などとあるのは使用した地形図の図番を指す。具体的には 82J、82K、82N、82O の4図葉をペアで貼り合わせて、大判耐水紙の両面に配している。全体は北緯50~52度、西経114~118度の範囲に当り、地名で言うと、東西はカルガリー Calgary からロジャーズ峠 Rogers Pass に至るエリアだ。美しい山岳景観で旅行者に人気のある標記の3国立公園(下注)と、西方のグレイシャー国立公園 Glacier National Park がほぼ含まれている。

*注 バンフ国立公園はブリティッシュコロンビア州の東隣、アルバータ州 Alberta に属する。

地形図の上に付加された旅行情報は、ITMBの担当した部分だ。展望所、キャンプ場、宿泊施設、駐車場などの位置を記号で示し、原図にある小道の表示にハイキングルートやマウンテンバイクルートなど用途を表す記号を添えている。ただの地形図なら、自分がいる位置を特定したり、道路網を確かめる程度の用途しかないが、ここには旅行者の情報ニーズに応じられるだけの内容が盛り込まれている。

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「ガリバルディ州立公園」図の旅行情報の凡例

ただし、1:250,000(図上1cmが実長2.5kmを表す)では山歩きに使うのは無理で、地域の概観図あるいは自動車や鉄道で訪れるときの参考資料と考えるべきだろう。また、ベースとされた地形図は、1991~92年に発行された印刷図の写真版(あるいはスキャニングによる)だ。それ以降の経年変化は反映されておらず、道路などの情報は古くなっている可能性があることにも注意したい。

残念ながらこのシリーズでロッキー山脈を対象にしたものは、上記のほか、ウェルズグレー州立公園 Wells Grey Provincial Park、レヴェルストーク山国立公園 Mount Revelstoke National Park ぐらいしかない。他方、人口の集中するローワー・メインランド Lower Mainland(バンクーバー Vancouver のある平野)周辺やバンクーバー島 Vancouver Island については、合わせて10種ほど刊行されているので、こちらが主力のようだ。

*注 Vancouver の日本語表記は、ヴァンクーヴァーではなく、慣用の「バンクーバー」に従う。

たとえば、2010年冬季オリンピックの会場の一つだった、バンクーバーの北120kmにあるウィスラー Whistler も、「ガリバルディ州立公園 Garibaldi Provincial park」という図に含まれている。これは1:50,000地形図がベースなので、トレッキングやスキーのようなマウンテンスポーツの参考にも使える縮尺だ。町の背後のウィスラー山やブラッコム Blackcomb 山には、地上からの高さ436mという驚異の谷渡りをするピーク・トゥ・ピーク Peak 2 Peak を含めて、多数のゴンドラやチェアリフトが設けられている。地図にはその位置だけでなく、種類や延長距離まで記す徹底ぶりだ。

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地形図をベースにした旅行地図は、必ず表紙に "Canadian Topographic Maps" というロゴが刷り込んである。逆に言えば、これがない地図はオリジナルの図版を使ったものとみなすことができる。たとえば、「フレーザー谷とバンクーバー Fraser Valley and Vancouver」(右写真)というタイトルの地図がある。デザインといい、縮尺1:250,000と1:50,000の組合せといい、かのシリーズそっくりだが、表紙にあのロゴがない。これは、以前から出ていたオリジナル図なのだ。しかし、これも悪くはない。1:250,000図は高度300mごとに段彩を施してあって、初心者にとっては等高線の地図よりむしろ地勢を読取りやすいかもしれない。

地形図の標準価格が11.45カナダドル(2010年11月現在)であるのに対して、ITMB版は多くが14.95ドルと少し高めの設定だ。しかし、両面刷りで用紙も地形図の2倍ほどあり、旅行のプランニングにも使えるのだから、価格差に見合う価値は十分あると言えるだろう。

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今、官製地形図を使った旅行地図のレンジは、ブリティッシュコロンビアの州境を越えてさらに広がる傾向にある。カタログで見たところ、点在する湖沼のたたずまいが美しいオンタリオ州のアルゴンキン州立公園 Algonquin Provincial Park(右写真左側)や、「赤毛のアン」の故郷として有名な、東海岸のプリンスエドワード島 Prince Edward Island(同右側。下注)の地図も、シリーズと同じ仕様で作られている。眺めるほどに、ITMBの今後のリリースが楽しみだ。なお、これらの地図を求めるなら、同社のオンラインショップを利用するのがいい(下記参考サイト)。

*注 よく似た名称の "Nova Scotia and Prince Edward Island Travel Map" 1:400,000は、ノヴァスコシア州も入った別物のオリジナル編集図なので注意。

■参考サイト
ITMB出版社  http://itmb.com/
同 オンラインショップ  http://shop.itmb.ca/
同 地図見本  http://www.itmb.com/view_map_samples.htm

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