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2010年10月21日 (木)

新線試乗記-成田スカイアクセス

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ダイヤ改正告知

京成電鉄の社名のいわれは東京と成田空港を結んでいるからだ、と信じる人がいても不思議ではない。もとは成田山新勝寺への参詣鉄道だったことなど半ば忘れられるほど、京成と成田空港のイメージは固く結びついている。それはまた、紆余曲折を重ねた空港アクセス問題と、国の政策に振り回され続けた会社の歴史をも想い起こさせる。1978年の開港時点では京成が唯一の乗入れ路線だったにもかかわらず、最近の地図上ではJRのほうがメインルートで、京成本線は後から付け足されたように見える。会社としては悔しい思いの残る線形に違いない(下注)。

*注 説明するまでもないが、現在の東成田が、開港時の終着駅「成田空港」だった。

■参考サイト
成田空港付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/35.765700/140.386300
成田空港付近のGoogleマップ
http://maps.google.com/maps?hl=ja&ie=UTF8&ll=35.7657,140.3863&z=15

しかし、今年(2010年)7月17日からそのメインルートに沿って、京成の新型特急電車が運行されることになった。正式には京成高砂以東の路線を成田空港線と呼ぶらしいが、走行ルートの愛称を成田スカイアクセスにして、都心~空港36分と大々的に宣伝している。地図も都内からほぼ直線的に成田空港を目指すように描かれ、これが鉄道アクセスの決定版だと言いたげだ。謳い文句の36分は日暮里~空港第2ビル間の所要時間で、起終点の京成上野~成田空港(以下、空港または空港駅)間は44分かかる。しかし、従来のスカイライナーはこの間を約1時間かけていたから、どのみち成田が近くなるインパクトは大きい。

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路線図(左下が成田空港)

時間短縮は、これまでの本線経由とは別の、バイパス新線が開通したことでもたらされた効果だ。京成高砂で分岐する既存の北総線を通り抜け、終点だった印旛日本医大(いんばにほんいだい)から空港第2ビルの手前の本線合流地点まで新たに線路が敷かれた。北総線内は最高時速130kmに改良され、新設区間では新幹線を除いて国内最速タイとなる同160kmで走行する。車両も山本寛斎氏がデザインした精悍なフェースの新型車(2代目となるAE形)が登場して、代替わりを強く印象付けている。

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N'EX特急券とライナー券

開通1か月後、成田空港を電車で往復してみた。海外渡航でもしない限り、関西から成田へ出かける機会はないので、往路はJR成田エクスプレス(N'EX)の新型E259系に初乗りし、新規開業区間の駅を訪ねた後、復路で新スカイライナーを試乗するというちょっと贅沢なプランを立てた。

新宿から1時間半、静かな車中でゆったり過ごして、今なお検問体制の解けない空港駅に降り立つ。自動券売機の前で確認すると、スカイアクセス線は本線より運賃、料金とも割高に設定されていることがわかる。空港~京成上野間はスカイアクセス線経由のほうが距離は短い(下注)のに、運賃+料金は2,400円、対する本線のシティライナーなら1,920円だ。さらに驚くのが新規各駅間の運賃で、たとえば空港から2駅目の成田湯川までなんと500円もする(営業キロ10.7km。空港第2ビル~成田湯川も同額)。北総線の高運賃はつとに有名だが、それに匹敵する水準だ。

*注 京成上野~成田空港間、スカイアクセス線経由64.1km、本線経由69.3km。

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新型スカイライナー
(日暮里駅にて)

運賃が異なるので、ホームも分かれている。空港駅では、改札を入ってすぐ、スカイライナーのホーム(4、5番線)へ降りる階段がある。降りずに直進すると正面にまた改札があり、本線方面のシティライナーや快速特急のホーム(2、3番線。4、5番線の上野方に設置)へ通じている。筆者が乗るつもりの、成田湯川に停まるアクセス特急(1番線)はそこでもなく、中間改札の手前で左にそれていかなければならない。スカイアクセス線はオレンジ、本線は青と、シンボルカラーで区別されているものの、列車種別の名称が紛らわしいこともあって、初めて来た者としては戸惑うことしきりだ。

アクセス特急は料金不要の一般特急で、印旛日本医大まで各駅、そのあとは主要駅のみ停車して羽田空港など京急線へ直通する(夕方以降は京成上野行き)。飛行機のシルエットを外装にあしらった新造車(3050形)だが、ロングシートの通勤型なので前面に張り付いてみた。かつて成田新幹線のために建設された複線幅の路盤の上を、JR成田線(空港支線)と1線ずつ分け合う形で進む。JRが狭軌で、砕石を敷いたいわゆるバラスト軌道なのに対して、こちらは標準軌で、コンクリート道床に枕木を固定した真新しい線路(弾性枕木直結軌道)だ。地方で見られるJRと私鉄の施設格差を逆転させたような光景が興味深い。途中の新根古屋信号場で停車している間に、向かいからE259系がやってきて、JRと対向待ちをしているような錯覚に陥った。

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JR E259系とすれ違う

成田湯川駅は成田ニュータウンの北端で、直下を交差するJR成田線との乗換連絡を考えた位置にある。しかし、JR側の動きはまだないようだ。発着は片道40分に1本で、駅の時刻表は閑散としている。整備された駅前広場から、成田駅行きのバスが空っぽのまま出発していった。とんぼ返りも芸がないので、地形図をにらんで、近くの外小代公園へ歩いてみた。西側の林が途切れる地点から、印旛沼を背に田園を疾走するスカイライナーの姿を捉えることができた。

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成田湯川駅正面
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印旛沼沿いを快走

空港に戻って、いそいそとスカイライナーの予約席に着く。ライバルのN'EX車両に比べると、車内の装いはかなりシンプルだが、短時間の旅なので多くは望むまい。JRとの並走区間に入ると、電車はさっそく速度を上げ始めた。車端のモニターが前面展望を映している。画面で隣の線路をE217系が先行するのに気づいたが、あれよという間に長い編成を悠々抜き去ってしまった。遠方の風景を眺めるだけでは俊足も漠然とした感覚でしかないが、これが時速160kmなのだ、と納得する。

成田湯川は一瞬で通過し、葦の育つ印旛沼のはろばろとした水辺を駆け抜けていく。この先は押しなべて台地を掘割った底を通るので、開放的な車窓を愛でるのは今しかない。速さに喝采したいが、名残り惜しくもある。しかし実は、最高速度を維持できるのはせいぜい7~8分間に過ぎないのだ。空港発車後12分の印旛日本医大で速度が鈍り、約30分後、都県境の江戸川を渡ればもはや徐行態勢にシフトする。後は下町の家並みをくねくねと縫っていく、ふだんどおりの行程だ。ゴールへ向かって刻々と遅くなる特急というのも、なんだが後味が悪いものだ。新スカイライナーの初乗りは、やはり往路にすべきだったかもしれない。

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(左)印旛沼付近 (右)もうすぐ印旛日本医大駅(アクセス特急にて撮影)

■参考サイト
京成電鉄 成田スカイアクセス
http://www.keisei.co.jp/keisei/tetudou/skyliner/jp/
ウィキペディア「京成成田空港線」
http://ja.wikipedia.org/wiki/京成成田空港線
成田新高速鉄道整備事業  http://www.nra36.co.jp/

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コメント

 ブログみました。なるほど成田山新勝寺への参詣鉄道だとは驚きました!調べると明治時代に開業したとか興味深々!しかし、京成電鉄 本当に便利ですね!都心からあっという間に成田に着いてしまうとは空港利用以外でもメリットあるのが分かります。

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