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2010年6月17日 (木)

スウェーデンの地形図

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地図カタログ(Kartförlaget
1990年代)

スウェーデンは、面積、人口とも北欧諸国では最大だ。穀倉地帯である最南部のスコーネ地方 Skåne län を別にすれば、森の中に大小の湖が点在する氷河由来の地形がどこまでも続く。この広い国土を精緻な地形図群が覆っている。製作している国の測量機関はラントメーテリエット Lantmäteriet だ(以下「国土測量庁」と訳す)。参謀本部地図を継承していた陸地測量部 Rikets allmänna kartverk と地籍管理を行う国土測量局 Lantmäteristyrelsen の統合により、1974年に設立された。ラントメーテリエットという名は長らく通称だったが(下注)、2008年9月1日に21の地方測量局と統合されたときに、機関の正式名称となった。

*注 正式名称は Lantmäteriverket といった。verket は英語の (the) work に当り、ここでは役所を意味する。

国土測量庁の刊行地図を縮尺別にみると、1:1,000,000(100万分の1)、1:250,000、1:100,000、1:50,000で、その次は1:12,500に飛ぶ。日本をはじめ諸外国で一般的な1:25,000は作成されていない。その概要を、縮尺の小さいものから順に紹介しよう。

1:1,000,000(100万分の1)は、スウェーデン全土を1面に収める地図だ。南北に1500km以上も延びる国土なので、74×160cmとかなり縦長のサイズになっている。ぼかし(陰影)で地勢を、アップルグリーンの塗りで森林のエリアを表したベースマップに、主に都市・村落とそれらを結ぶ交通網(道路、鉄道、航路)を描いたものだが、他国の部分は地勢と植生が省かれている。ポスターのため地名索引などはないものの、国土の概略をつかむことができる。なお、北欧全体の地勢を見たければ、これの姉妹版として、北欧諸国(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、バルト三国)を1面に収めた縮尺1:2,000,000(200万分の1)北欧 Norden が刊行されている。

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1:250,000地形図表紙
(左)ストックホルム 2002年版
(右)スンツヴァル 2009年版

縮尺1:250,000からは、いよいよ等高線が入って、地形図の体裁が整う。利用者へのアピール度を高めるために、縮尺ごとにシリーズ名がつけられている。以前はフランス流に表紙の色名を冠していたが、1999年に、地図の用途を示す即物的な名称に変えられた。

1:250,000は「概観図 Översiktskartan」(旧名レッドマップ Röda kartan)と称し、全土を21面でカバーする。地勢表現は等高線とぼかし(陰影)を併用している。等高線間隔が標高600m以下は25m、それ以上は50mと高度によって密度が違う。一方、ぼかしは低地の微地形がよくわかる繊細なもので、等高線の間隙を補っている。概観図は基本的な地形図の要素を持ちながら、面数も少なく、文字通りその地域を概観するには手ごろな地形図といえる。

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1:100,000地形図表紙
(左)ストックホルム 2003年版
(右)ファールン 2008年版

1:100,000は「道路地図 Vägkartan」(旧名ブルーマップ Blå kartan)と称し、79面ある。等高線間隔は低地10m、高地20mだ。索引図では北西部のノルウェー国境一帯が未刊行のように見えるが、この部分はスカンジナビア山脈の中心部で、トレッキングやスキーの用途を想定した「山岳地図Fjällkartan」が別に存在する(「スウェーデンの山岳地図」参照)。

道路地図という名称はいささか誤解を招くかもしれない。みかけは普通の地形図だからだ。道路地図なら備えてほしい区間距離やガソリンスタンド、駐車場などドライバー向けの情報は見当たらない。道路番号も幹線道路にしかついていない。唯一、国道 riksväg が青、それ以外は赤茶と色分けしてあるのが他の縮尺図との違いだ。

もう一つ地図のイメージを決定づける相違点がある。それは土地利用の色分けだ。居住地がオレンジ、裸地(耕地・空地)öppen mark がクリームイエローなのはともかく、森に対して緑系ではなくクリームイエローをさらに薄めた色が使われているのだ。そのため図上では、国土を覆う広大な森林地帯も不毛の原野と見間違うのだが、もちろんこれは、道路網を浮かび上がらせるための意図的な配色だろう。おかげで主要道路のみならず、森の中に延びる小道さえ、緑色に埋もれることなく明瞭に読み取れる。道路地図と名づけた真意はこの点にあるのかもしれない。

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1:50,000地形図表紙
(左)ストックホルム北東部
1991年版
(中)マルメ 2001年版
(右)ウプサラ 2009年版

1:50,000は原語でテレングカルタン Terrängkartan(旧名グリーンマップGröna kartan)と称する。terräng は英語の terrain に当たるので、地形あるいは地勢を描いた地図ということだ。topografisk kartan(英語の (the) topographic map)と区別がつかないが、本稿では、括弧をつけた「地形図」で通すことにする。

「地形図」は244面あるが、全土をカバーしておらず、内陸の最北部ラップランド Lappland 全域、イェムトランド Jämtland の山間部などは空白域となっている。後述する旧図郭の時代もそうだったから、整備が遅れているのではなく、需要の観点から製作しない方針らしい(下注)。冒頭にも書いたとおり、1:25,000の刊行図はないので、一般用としてはこれが最大縮尺の地形図だ。等高線間隔は低地5m、高地10mとなっている。

*注 イェムトランドの山間部を含め、中部の山岳地帯には、縮尺1:50 000の山岳地図が整備されつつある。

Blog_sweden_50k_legend 「地形図」のユニークな点は道路表現だ(右写真は「地形図」凡例の一部)。中央(おそらく真位置)に細い実線を描き、その両側に縁取りのように茶色の線を引くことで、道路の幅(幅員)を示している。一般的な二重線の道路もあるが、市街地の主要路か、郊外では茶線道路より一級低い扱いになっている。

また、道路記号の区分は、管理者別でも車線数でもなく、幅員(道幅)基準だ。世界的に見ても幅員で分けるのは少数派だが、ここではさらに5m未満、5~7m、7m以上(正確には「少なくとも7m」)という妙な3区分になっている。日本の地形図図式も最近まで幅員別だったが、およそ車線数に応じていて、2.5m~5.5mが1車線、5.5m~11.0mが2車線という理解だった。スウェーデンの場合、5m未満は1車線とわかるが、そのあとの刻みが小さすぎる。5~7mは離合可能な道、7m以上はセンターラインの引ける道だろうか。この幅員区分は他の縮尺図でも一貫して採用されている。

最後は、1:12,500の「土地区画図 Fastighetskartan」(下注)だが、これはオルソフォトマップの上に地籍界や建物、水路、道路などを描いたものだ。全土で9,807面もあり、完全受注生産となっている。

*注 地籍図 Registerkartan が別にあるので、土地区画図と訳した。なお、以前はイエローマップ Gula Karta と称する縮尺1:20,000のシリーズがあった。これは土地区画図を縮刷したもので、1983~95年の間に刊行されたが、それ以降、更新が途絶えた。

スウェーデンの地形図は、つい最近(2008~09年)大きな変革を経験している。地図の図式ではなく、頒布方法の思い切った変更が行われたのだ。それまでは片面刷り、横13cm×縦26.5cmの折図で販売されていたが、両面刷りとなり、折ったサイズも横13cm×縦21.5cmとコンパクトになった。印刷はオフセット方式からデジタルプリントに、用紙も上質紙から耐水紙に替わった。

両面化によって逆に1面あたりの収載範囲は広くなり、それに伴って図郭も一新された。今までどおり、図郭は一部の重複図葉を除いて経緯度ですっぱりと切られているが、各図のマージンに隣接図を薄く刷ることで、接続する内容がわかるようにしている。その代わり、たとえ地名の一部が図郭からはみ出しても、位置をずらすなどの編集は一切行っていない。また、旧図番は数字と英字に方位を組み合わせた複雑な体系だったが、シンプルな通し番号に置換えられた。

国土測量庁の著作物であることは従前どおりだが、印刷と販売は、ノーシュテッツ出版グループ Norstedts Förlagsgrupps に託されている。紹介した地形図は、同社のショッピングサイトであるカートブティーケン Kartbutiken(地図販売所の意)で、外国からも全点入手可能だ。

■参考サイト
国土測量庁 http://www.lantmateriet.se/
 英語版サイトもあるが、印刷地図に関する情報はスウェーデン語版のみ。
 トップページ > kartor > Kartor och geografisk information >  .....karta > Trykt .....karta
 (tryktは英語のprintedに当る)
カートブティーケン http://www.kartbutiken.se/
 地形図は、トップページ英語版 > NATIONAL MAP SERIES
地図閲覧サイト、販売店については「官製地図を求めて-スウェーデン」にまとめた。

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