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2010年6月10日 (木)

南アフリカの旅行地図 II

アフリカ大陸南部の地勢を描いた地図(下記サイト)を見ると、白く塗られた山岳部は、南アフリカ共和国に周りを囲まれたレソト王国 Kingdom of Lesotho の領域とほぼ重なっていることがわかる。ここでは川(オレンジ川 Orange River の上流部)は海岸に背を向けて西向きに流れ出るので、その反対側、両国国境の東と南には高度差の大きいダイナミックな地形が広がる。

■参考サイト
南アフリカの地勢図(Wikipediaファイル)
http://en.wikipedia.org/wiki/File:South_Africa_Topography.png

Blog_southafrica_drakens_map

ドラケンズバーグ Drakensberg(ドラゴンの山の意)と呼ばれるこの地域は、レソト側が標高3000m前後のなだらかな高原になっているのに対して、南アフリカ側は一気に1000m以上も高度を下げる。大規模な急崖が連なるようすは、あたかも王国を護る堅固な石垣のようだ。このラインは南アフリカのインド洋沿岸と内陸地方を分かって1000kmも延びる大断層崖 the Great Escarpment の一部なのだが、とりわけ両国国境付近では、双方の地勢の違いが際立っている。

レソト領内を流れる川は山中で蛇行を繰り返し(穿入蛇行)、断層崖に接する支流の谷頭は断ち切られて、いわゆる風隙(ふうげき)wind gap になっている。中でも、ドラケンズバーグの最北部にあるロイヤル・ナタール国立公園 Royal Natal National Park の「円形劇場 Amphitheatre」は、この風隙が4km余りにわたって露出した奇観だ(下の写真参照)。

Blog_southafrica_drakens_image
ロイヤル・ナタール国立公園 円形劇場の景観
Photo by Diriye Amey from wikimedia. License: cc-by-2.0

たまたま川の流路を縦に裂く形に開析が進んだために、劇場の頂きはみごとに平たく揃っている。両端を押さえる尾根の存在もなかなか芸術的だ。ちなみに世界で2番目に高い滝、断崖の上から947mを落下するトゥゲラ滝 Tugela Falls は、この一角に位置する。

■参考サイト
円形劇場付近のGoogleマップ
http://maps.google.com/maps?f=q&hl=ja&ie=UTF8&ll=-28.7513,28.9098&z=14
世界の滝データベース World Waterfall Database - Tugela Falls
http://www.world-waterfalls.com/waterfall.php?num=2

ドラケンズバーグの東部一帯は国立公園、禁猟区、自然保護区などに指定され、2000年には世界遺産にも登録されている。同時に、愛好家にとっては、トレッキングをはじめとする山岳レジャーの目的地でもある。先回紹介したバールスケルデル Baardskeerder 社のショッピングサイトで、当該地域をカバーする旅行地図を見つけた。全6点あり、政府機関であるクワズール・ナタール野生生物局 Ezemvelo KZN Wildlife が編集する、いわば公式地図だ(写真はそのうちの2点)。

Blog_southafrica_drakens
ドラケンズバーグ ハイキング地図
(左)ロイヤル・ナタール (右)ジャイアンツ・キャッスル Giant's Castle

各図とも66cm×96cmの大判用紙の両面印刷で、片面がフルカラーの旅行地図になっている。ベースマップの地勢表現は、地形図ファンも納得する出来栄えだ。官製地図のデータを使用した20m間隔の等高線に、そこから生成したぼかし(陰影)が加えられて、先述した国境両側の地形のコントラストがくっきりと浮かび上がる。三角点、標高点もかなりの頻度で打たれている。一方で居住地は、ラベンダー色の網かけに学校や教会の位置を記号で示しただけの、簡略な表現にとどまる。

Blog_southafrica_drakens_sample
ロイヤル・ナタール図葉の一部
(c) 2010 KZN wildlife

Blog_southafrica_drakens_legend
凡例の一部

旅行情報は主に国立公園などのエリアに限定しての表示だが、トレッキングルートを6段階に区分し、難所、ジグザグ(道をはずれないよう警告あり)、沢渡りの位置を示すほか、分岐点の番号と次の分岐点までの距離も明示している(右写真は凡例の一部)。宿泊場所の記号では、建物の立面形が山小屋 hutted camps、キャンピングカーの絵はキャラヴァンサイトと、直感的なデザインにしてあるのが興味深い。一風変わったものでは、音楽記号のフェルマータが山中に点々と置かれている。これは、宿泊設備のある洞穴 overnight cave で、定員も図上に明示されている。どんなものなのかは見ていただいたほうが早い。写真が載っているサイトを一つあげておこう。

■参考サイト
宿泊設備のある洞穴の例  http://www.baviaans.co.za/bakkrans/

一方、地図の裏面は、保護区の解説と入域に際しての注意事項で埋め尽くされている。ブッシュマンの壁画や一帯の地理・環境に関する記事をはじめ、モノクロながら、山の名称を同定できる展望図や、生息する鳥獣や自生する植物のミニ図鑑などたいへん多彩な内容で、一読しておけば格好の事前学習になるはずだ。この地図は、イギリスの地図商スタンフォーズ Stanfords でも扱っている。

ちなみに、表紙の上部に掲げられたロゴで、円形劇場を背景に飛んでいるのは、ヒゲワシ bearded vulture だそうだ。翼を広げると3mにもなる大型の鳥で、同国ではドラケンズバーグにのみ生息している。開発によって草原や森林の消失が進行し、食物連鎖の上位を占める猛禽類の生存環境が脅かされる状況は、世の東西を問わない。このロゴは、ドラケンスバーグのシンボルを二つ重ねたというにとどまらず、生物の多様性 biodiversity を将来にわたって維持していくという組織のミッションをも象徴しているのだろう。

■参考サイト
クワズール・ナタール野生生物局  http://www.kznwildlife.com/
スタンフォーズ Stanfords による当該地図の紹介記事
http://www.stanfords.co.uk/stock/south-africa-50k-hiking-maps-of-the-drakensberg-mountains/
索引図、サンプル図あり。

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