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2010年6月 3日 (木)

南アフリカの旅行地図 I

アフリカ大陸南端の喜望峰を回って、というおなじみの表現がある。喜望峰は英語で Cape of Good Hope といい、「発見」者のバルトロメウ・ディアス Bartolomeu Dias や、インド洋航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマ Vasco da Gama の名を出すまでもなく、大航海時代を象徴する地名の一つといえるだろう。ただし、実際の喜望峰は漢字から連想されるような「峰」ではなく、扁平な隆起海蝕台だ。観光客は2kmほど東のケープポイント Cape Point にある展望台に上って、喜望峰を「見下ろす」のが恒例になっている。むしろこのケープポイントのほうが、標高209mの切り立った山が海に落ち込んで、岬と呼ぶにふさわしいのだが、若干北に位置するため、名誉を獲得し損ねている。

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さらに、喜望峰が南端というのも実は誤りだ。ほんとうの最南端は、喜望峰の東150kmにあるアガラス岬(アグラス岬)Cape Agulhas で、そこが大西洋とインド洋を分ける地理上の境界とされている(上図)。しかし、交通の便、知名度の差、そして地形が平板なためにケープ半島 Cape Peninsula(その先端に喜望峰がある)に比べると到達したという達成感に欠けるのだろう。圧倒的多数の旅行者が、アガラス岬ではなく喜望峰をめざす(下注)。

*注 資料によると、2009年の観光シーズン4~6月の訪問者数はアガラス岬4,648人に対して、喜望峰143,896人。("Western Cape Tourism Barometer" Volume 3, Issue 3, 2009. p13-19による。ここでの喜望峰はケープポイントを含む一帯)。ちなみに地元では、喜望峰をアフリカ最南西端と言っているそうだ。

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喜望峰 Cape of Good Hope とケープポイント Cape Point の位置関係
高度単位はフィート。官製1:25,000 Cape Peninsula 1932年版より

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ケープ半島の旅行地図では、ナショナル・ジオグラフィック National Geographic のアドヴェンチャー・マップ Adventure Map シリーズに1点ある。図番3200「ケープタウンと半島 Cape Town & Peninsula」だ(右写真)。メインは縮尺1:55,000の旅行地図で、ケープタウン市街から先端ケープポイントまで、ケープ半島全域をカバーする。地図には居住地、自動車道、トレッキングルート、保護地域が示されるほか、サーフィン、ダイビング、シーカヤック、ロッククライミング、パラグライダー、それにアザラシやペンギンの生態観察など、活動の種類ごとに色分けした記号が散りばめられ、欄外に解説が配置されている。ベースは官製地形図なので、20m間隔の等高線にぼかし(陰影)がついて、地勢表現は申し分ない。

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「ケープタウンと半島」表紙の一部を拡大

裏面は、ウォーターフロントを含めて主要施設の名称が注記された縮尺1:9,500のケープタウン市街図と、市街の南にそびえるテーブルマウンテン Table Mountain の1:30,000旅行地図だ。後者は20m間隔の等高線入りで、山を縦横に巡るトレッキングルートが明瞭に描かれている。このようにたいへん充実した内容で、当地域をふつうに旅するなら、地図はこれ1枚で足りるだろう。現地筆頭の地図メーカー、マップ・スタジオ Map Studio が編集しているから、情報の信頼性も期待できる。

■参考サイト
ナショナル・ジオグラフィック「Cape Town & Peninsula」
http://shop.nationalgeographic.com/ngs/product/maps/travel-and-hiking-maps/adventure-world-maps/cape-town-%26-peninsula-adventure-map
 画面左のZOOMリンクで、内容の拡大図を見ることができる。

しかしながら、もう一段詳しい旅行地図も存在する。それは、バールスケルデル(とオランダ語読みしておく)Baardskeerder 社による縮尺1:20,000のテーブルマウンテン国立公園シリーズだ。全部で4点あり、ケープ半島全域をカバーする(下写真、下注)。旧版の表紙には日本語で「おみやげ&ハイキングマップ」と記してあったが、おみやげ地図すなわち粗悪品、と早合点してはいけない。それどころか、詳細情報が何層にも積まれ、色使いや意匠にはご当地色が滲み出ていて、見過ごすわけにはいかない作品群なのだ。

*注 旧版は Hout BayとSilvermine が別図葉だったので、全5点あった。

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バールスケルデル社 テーブルマウンテン国立公園シリーズ
(上)テーブルマウンテン (下)サイモンズタウン

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凡例の一部

まず地勢については、10m間隔の等高線と、高度に応じて連続変化する彩色で表現している。トレッキングルートには区間距離と所要時間を添え、市街の主要建物は用途別に塗り分けて一つ一つに名称を入れている(サイモンズタウン Simon's Town の歴史街区は各建物の竣工年まで!)。旅行地図らしく、海や山のレジャースポットの記号も盛りだくさんだ。さらに、植生は、ケープ地域特有のフィンボス Fynbos(灌木林)を植物種によって分類表示しているし(右写真はその凡例)、ヴィヴィッドな原色が踊る図飾が、日本の眠たげな配色の地図を見慣れた目には、とても新鮮に映る。

このこだわりようは商業ベースの企画ではまずありえないと思ったら、やはり、ピーター・スリングズビー Peter Slingsby という地元の地図製作者が、1972年から改良を重ねてきた自信作なのだった。彼は、良い住所録と同じように、情報量が多い地図ほどよく使われると信じていて、この国の商業地図のあてにならない状況を憂い、自ら調べあげたデータで今も地図を更新し続けているという。

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同シリーズ
ケープ半島

同社からは、彼が製作した、より広範囲をカバーする旅行地図も9点ほど刊行されている。西ケープ州 Western Cape から東ケープ州 Western Cape にかけての南岸一帯がテーマで、縮尺は1:50,000から1:400,000までさまざまだ。わがケープ半島も、このシリーズなら縮尺1:50,000で1枚に収まる(右写真)。地図のデザインは上記1:20,000シリーズに準じていて、等高線("Day Drives from Cape Town"を除く)と彩色が施された表情豊かなベースマップの上に、旅行情報が満載されている。上述のナショナル・ジオグラフィックとは、縮尺が近く、地形データも同じ出処のはずだが、並べてみると、同じ場所を描いているとは思えないほどのコントラストが見ものだ。

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バールスケルデル社地図サンプル Cederberg Wilderness 図の一部
image from http://www.slingsbymaps.com/maps.aspx

■参考サイト
バールスケルデル社  http://www.themaps.co.za/
 トップページ > Maps > Tourist Maps / Hiking Maps
 各地図の紹介ページで、表紙写真をクリックするとサンプル地図が見られる。

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