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2010年5月27日 (木)

南アフリカの地形図

来月からサッカーワールドカップ2010が開催される南アフリカ共和国 Republic of South Africa。アフリカ大陸の南端で、東京からケープタウンまで直線距離で14,720kmという遥かかなたの土地だが、地図上でならいつでも旅ができる。これを機会に、かの国の地図事情を知りうる限りで紹介しよう。

国の測量局に当たるのは、地理空間情報総局 Chief Directorate: National Geo-spatial Information(略称 CD:NGI)といい、地域開発・国土改良省 Department of Rural Development and Land Reform に属する行政機関だ。少し前までは、測量地図作成総局 Chief Directorate: Surveys and Mapping(略称 CD:SM)と名乗っていたので、公式サイトのURLにはまだその略称が残っている。

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1:50,000地形図索引図(2006年3月)の一部

ここへ官製地形図をEメールで発注したのは、4年前(2006年)のことだった。たまたま見た公式サイトで、地形図の体系をサンプル画像つきでていねいに解説してあったのと、請求すればカタログも送ってくれるというので、俄然興味が湧いた。最近は、見積書もPDF化してメールで返されるし、難儀だった送金も、たいていクレジットカードで決済できる。発注から1ヶ月ほどで、早くも南アフリカからの大きな紙筒の小包が自宅に届いていた(上写真は、カタログに掲載されている1:50,000索引図)。

ポスターのように巻かれていた大判の地形図の束を開いてみると、一つとして同じ寸法のものがなく、かさばることこの上ない。その原因はすぐわかった。オフセット印刷よりも、インクジェットプリンタで出力したとおぼしきコート紙の図のほうが多いのだ。どうやらロール紙に印刷して、カッターで適当に裁断しているらしい。デジタルプリンタの性能が向上して、少量多品種が宿命の地形図印刷はこの方式に移る傾向が強い。地図の整理方法は頭の痛い問題だが、それはまた後で考えるとして、しばらくの間、初見の土地をあてもなく彷徨うことに決めた。地図好きにとって至福の時間だ。

南アフリカの地形図体系は、縮尺1:2,000,000(200万分の1)、1:1,000,000(100万分の1)、1:500,000、1:250,000、1:50,000の5段階に整備され、北に隣接するナミビア Namibia、ボツワナ Botswana、東の一角スワジランド Swaziland、国中国(国の中に国がある)のレソト Lesotho についても、縮尺によって全部または一部をカバーしている。

*注 ちなみに、南アフリカ(共和国)の英語表記は South Africa だが、上記諸国のようなアフリカ(大陸)南部を指すときは Southern Africa と呼んで区別している。

同国は日本の3倍以上の面積があるので、全土を1面でカバーするのは1:2,000,000だが、これは総局の創立80周年を記念して発表された特別版だ。筆者は持っていないので公式サイトの紹介文を引用すると、総描化に細心の注意を払い、地勢は等高線を用いず段彩で表現し、これまで作成してきた中で最も良くできた壁掛け地図だという。次の1:1,000,000はICAO(国際民間航空機関)の標準に準拠した国際航空図 World Aeronautical Chart として刊行されている。これとは別に4面貼合せる仕様の壁掛け地図 Wall Map もある。

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1:500,000地形図 2928 Durban

縮尺1:500,000になると、いよいよ国土の詳細が見えてくる。同国の地形図全般に言えることだが、地勢表現がたいへんていねいだ。全体は国際図 International Map of the World 図式に拠っていて、300mごとの段彩が施されているのだが、対象地域の最高地点は、レソト領内にあるドラケンスバーグ山脈の最高峰タバナ・ヌトレニャナ Thabana Ntlenyana で、標高3482mある。そのため、該当するダーバン Durban 図葉(写真)などは、0mから3300m以上まで12段階を律儀に塗分けようとする。さらに100m間隔の等高線が入っていて、これも精度は十分だ。国際図図式に則った1:500,000官製図はスペイン、イタリアなどにも残っているが、地勢表現の点では南アフリカに及ばない(下注)。

*注 残念だが、近年の編集図は段彩が400mごと、等高線が200m間隔と精度が一段階落とされた。日本の官製図もこの縮尺では200m間隔なので、これまでが詳しすぎたのかもしれない。

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1:500,000地形図 Durbanの一部 (左)高地の表現 (右)低地の表現
(c) 2010 CD:NGI

1:250,000は、段彩や等高線間隔を含めて、1:500,000とよく似た仕様だ。ただ、1:500,000が地形・行政区分地図 Topo-Admin Map と言われるのに対して、1:250,000は地形・地籍地図 Topo-Cadastral Map と名づけられている。前者には行政区 Magisterial district の境界が記されているが、後者はさらに、入植当時の農場の名称、番号、境界が加えられているからだ(公式サイトの説明による)。同じ地籍図でも、個々の住宅の形が見分けられるほどの大縮尺図が必要な国とは、スケールがだいぶ違う。

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1:50,000地形図 3318CD Cape Town

1:50,000は、全土をカバーする最大縮尺になる。1:500,000や1:250,000の図郭はかなり横長だったが、1:50,000は緯度、経度とも15分ずつなので、やや縦長に変わる。カタログに載っている製作年を見ると、1980年代後半以降が大部分を占め、比較的更新が進んでいるようだ。北西部のおそらく見渡す限りの草原が広がる地域にも1:50,000の網がかぶせられているというのは、驚きでもある。

等高線間隔は日本と同じ20mで、精度もまったく遜色がない。急傾斜でも線を間引きしないので山地では等高線がくっついてしまう。日本ならこのような傾斜地はたいてい崖の記号に隠れてしまうが、こちらでは記号の定義はあっても図中でほとんど使われていないのだ。適用例がないという点では市街地 Built-up area の高密度、低密度の塗分けもそうで、ケープタウン Cape Town の中心街も郊外の住宅地も同じ色に塗られている。居住地の景観で区別しないというのは、あるいは意識的な方針なのかもしれない(写真はケープタウン図葉、図中央上の島は世界遺産に登録されている旧「監獄島」のロベン島 Robben Island)。

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1:50,000地形図 Cape Town の一部
(c) 2010 CD:NGI

地理空間情報総局の公式サイトは、組織改正の影響でか、このところ工事中の表示が出たままだ。地図の情報は一応、印刷版、デジタル版とも載っているものの、価格や索引図、図名リストなどは見当たらない。2006年に購入したときは1枚当り10ランド(現在のレートならわずか120円)と、オンデマンドにしては破格値で、郵送料のほうがよほど高くついたが、今はどうだろうか。

次回は同国の旅行地図を紹介する。

■参考サイト
地理空間情報総局  http://www.cdsm.gov.za/
 地図の情報は、トップページ > What we provide > Maps & Charts
同国の地図情報については「官製地図を求めて-南アフリカ」にまとめている。

★本ブログ内の関連記事
 南アフリカの旅行地図 I
 南アフリカの旅行地図 II

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