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2010年5月27日 (木)

南アフリカの地形図

来月からサッカーワールドカップ2010が開催される南アフリカ共和国 Republic of South Africa。アフリカ大陸の南端で、東京からケープタウンまで直線距離で14,720kmという遥かかなたの土地だが、地図上でならいつでも旅ができる。これを機会に、かの国の地図事情を知りうる限りで紹介しよう。

国の測量局に当たるのは、地理空間情報総局 Chief Directorate: National Geo-spatial Information(略称 CD:NGI)といい、地域開発・国土改良省 Department of Rural Development and Land Reform に属する行政機関だ。少し前までは、測量地図作成総局 Chief Directorate: Surveys and Mapping(略称 CD:SM)と名乗っていたので、公式サイトのURLにはまだその略称が残っている。

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1:50,000地形図索引図(2006年3月)の一部

ここへ官製地形図をEメールで発注したのは、4年前(2006年)のことだった。たまたま見た公式サイトで、地形図の体系をサンプル画像つきでていねいに解説してあったのと、請求すればカタログも送ってくれるというので、俄然興味が湧いた。最近は、見積書もPDF化してメールで返されるし、難儀だった送金も、たいていクレジットカードで決済できる。発注から1ヶ月ほどで、早くも南アフリカからの大きな紙筒の小包が自宅に届いていた(上写真は、カタログに掲載されている1:50,000索引図)。

ポスターのように巻かれていた大判の地形図の束を開いてみると、一つとして同じ寸法のものがなく、かさばることこの上ない。その原因はすぐわかった。オフセット印刷よりも、インクジェットプリンタで出力したとおぼしきコート紙の図のほうが多いのだ。どうやらロール紙に印刷して、カッターで適当に裁断しているらしい。デジタルプリンタの性能が向上して、少量多品種が宿命の地形図印刷はこの方式に移る傾向が強い。地図の整理方法は頭の痛い問題だが、それはまた後で考えるとして、しばらくの間、初見の土地をあてもなく彷徨うことに決めた。地図好きにとって至福の時間だ。

南アフリカの地形図体系は、縮尺1:2,000,000(200万分の1)、1:1,000,000(100万分の1)、1:500,000、1:250,000、1:50,000の5段階に整備され、北に隣接するナミビア Namibia、ボツワナ Botswana、東の一角スワジランド Swaziland、国中国(国の中に国がある)のレソト Lesotho についても、縮尺によって全部または一部をカバーしている。

*注 ちなみに、南アフリカ(共和国)の英語表記は South Africa だが、上記諸国のようなアフリカ(大陸)南部を指すときは Southern Africa と呼んで区別している。

同国は日本の3倍以上の面積があるので、全土を1面でカバーするのは1:2,000,000だが、これは総局の創立80周年を記念して発表された特別版だ。筆者は持っていないので公式サイトの紹介文を引用すると、総描化に細心の注意を払い、地勢は等高線を用いず段彩で表現し、これまで作成してきた中で最も良くできた壁掛け地図だという。次の1:1,000,000はICAO(国際民間航空機関)の標準に準拠した国際航空図 World Aeronautical Chart として刊行されている。これとは別に4面貼合せる仕様の壁掛け地図 Wall Map もある。

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1:500,000地形図 2928 Durban

縮尺1:500,000になると、いよいよ国土の詳細が見えてくる。同国の地形図全般に言えることだが、地勢表現がたいへんていねいだ。全体は国際図 International Map of the World 図式に拠っていて、300mごとの段彩が施されているのだが、対象地域の最高地点は、レソト領内にあるドラケンスバーグ山脈の最高峰タバナ・ヌトレニャナ Thabana Ntlenyana で、標高3482mある。そのため、該当するダーバン Durban 図葉(写真)などは、0mから3300m以上まで12段階を律儀に塗分けようとする。さらに100m間隔の等高線が入っていて、これも精度は十分だ。国際図図式に則った1:500,000官製図はスペイン、イタリアなどにも残っているが、地勢表現の点では南アフリカに及ばない(下注)。

*注 残念だが、近年の編集図は段彩が400mごと、等高線が200m間隔と精度が一段階落とされた。日本の官製図もこの縮尺では200m間隔なので、これまでが詳しすぎたのかもしれない。

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1:500,000地形図 Durbanの一部 (左)高地の表現 (右)低地の表現
(c) 2010 CD:NGI

1:250,000は、段彩や等高線間隔を含めて、1:500,000とよく似た仕様だ。ただ、1:500,000が地形・行政区分地図 Topo-Admin Map と言われるのに対して、1:250,000は地形・地籍地図 Topo-Cadastral Map と名づけられている。前者には行政区 Magisterial district の境界が記されているが、後者はさらに、入植当時の農場の名称、番号、境界が加えられているからだ(公式サイトの説明による)。同じ地籍図でも、個々の住宅の形が見分けられるほどの大縮尺図が必要な国とは、スケールがだいぶ違う。

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1:50,000地形図 3318CD Cape Town

1:50,000は、全土をカバーする最大縮尺になる。1:500,000や1:250,000の図郭はかなり横長だったが、1:50,000は緯度、経度とも15分ずつなので、やや縦長に変わる。カタログに載っている製作年を見ると、1980年代後半以降が大部分を占め、比較的更新が進んでいるようだ。北西部のおそらく見渡す限りの草原が広がる地域にも1:50,000の網がかぶせられているというのは、驚きでもある。

等高線間隔は日本と同じ20mで、精度もまったく遜色がない。急傾斜でも線を間引きしないので山地では等高線がくっついてしまう。日本ならこのような傾斜地はたいてい崖の記号に隠れてしまうが、こちらでは記号の定義はあっても図中でほとんど使われていないのだ。適用例がないという点では市街地 Built-up area の高密度、低密度の塗分けもそうで、ケープタウン Cape Town の中心街も郊外の住宅地も同じ色に塗られている。居住地の景観で区別しないというのは、あるいは意識的な方針なのかもしれない(写真はケープタウン図葉、図中央上の島は世界遺産に登録されている旧「監獄島」のロベン島 Robben Island)。

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1:50,000地形図 Cape Town の一部
(c) 2010 CD:NGI

地理空間情報総局の公式サイトは、組織改正の影響でか、このところ工事中の表示が出たままだ。地図の情報は一応、印刷版、デジタル版とも載っているものの、価格や索引図、図名リストなどは見当たらない。2006年に購入したときは1枚当り10ランド(現在のレートならわずか120円)と、オンデマンドにしては破格値で、郵送料のほうがよほど高くついたが、今はどうだろうか。

次回は同国の旅行地図を紹介する。

■参考サイト
地理空間情報総局  http://www.cdsm.gov.za/
 地図の情報は、トップページ > What we provide > Maps & Charts
同国の地図情報については「官製地図を求めて-南アフリカ」にまとめている。
http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_southafrica.html

★本ブログ内の関連記事
 南アフリカの旅行地図 I
 南アフリカの旅行地図 II

2010年5月20日 (木)

イギリスの鉄道地図 VII-トラック・マップス社

地図帳形式のイギリス鉄道地図は数々出版されているが、1枚ものでは、時刻表添付地図を除けばトーマス・クック社製が入手できる唯一のものだった。しかし2008年に新顔が登場している。発刊から時間が経ってしまったが、ここで報告しておきたい。

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トラック・マップス社 Track Maps は、その名のとおり、線路配置図の専門出版社だ。鉄道地図というのは一般に、鉄道の通るルートと駅を図で表したものと思われているが、線路配置図はそれとは違い、単線・複線、渡り線、側線・待避線、引込み線など実際に線路がどのように配置されているかを模式的に描いている。重要なのは線路相互の位置関係であって、縮尺や方位はふつう考慮されないから、地図よりは電気回路図に似ているかもしれない。

同社は、クエール社のイギリス鉄道線路配置図 Quail Track Diagrams シリーズ全5巻の販売を引き継いでいたのだが、その資料も参照しながら製作されたという今度の新刊は、意外にも「ふつうの」鉄道地図だった。

タイトルは「イギリス鉄道地図 Rail Map of Britain」(右上写真)、82cm×118cmの大判用紙の片面刷りを折ってある。地図の縮尺は1:895,000だが、大ロンドン Greater London、ロンドン中心部 Central London のほか、ウェールズ渓谷群 Welsh Valleys(炭鉱の集中していたウェールズ南部)、バーミンガム Bermingham、マンチェスター Manchester、リヴァプール Liverpool、そしてスコットランドのグラスゴー Glasgow は、余白に拡大図が用意されている。というのも、旅客駅の全駅記載が売りの一つなので、路線網の稠密な地域はこうしないと描けない。表紙の解説によると、2008年9月現在の営業駅をすべて表示し、近い将来開業予定の駅も若干加えてあるそうだ。

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もう一つ特徴をあげるとすれば、ロンドン発の歴史的な四本の幹線(下注)と英仏海峡線 Channel Tunnel Rail Line が特に太く描かれ、色分けされていることだろう。これらは現在も特急列車が行き交うメインルートなので、路線網の骨格がはっきりする。そのかわり、選にもれた旅客線は、近郊線も地方の閑散線もおかまいなしに、黒の細線で統一されている。また、貨物のみの路線はグレー、保存鉄道は緑で区別され、後者については、欄外に名称と軌間(標準軌か狭軌か)の一覧表がある。

*注 イースト・コースト(東海岸)本線 East Coast Main Line 、ミッドランド本線 Midland Main Line、ウェスト・コースト(西海岸)本線 West Coast Main Line 、そしてグレート・ウェスタン(大西部)本線 Great Western Main Line

鉄道地図出版が盛んな国とはいえ、よく知られたトーマス・クックと同じ舞台にあえて競作を持ち出した意図はどこにあるのだろうか。不思議なことに、トラック・マップス社の公式サイトは、この地図に関してはまったく沈黙しているので、真意はわからない。ただ、筆者が初めてこれを目にしたときに直感したのは、乗り潰し地図に使える、ということだった。

クック版は以前紹介したように(「イギリスの鉄道地図 I-トーマス・クック社」参照)、多彩な色使いで運行ルートを塗り分ける一方、小駅の掲載は省いている。一般旅行者向けとしてはこれでいいが、鉄道愛好家には少し物足りなさが残る。それに比べてこちらはずいぶんと飾り気がないが、作業用の地図は路線と駅がもれなく表示されていれば十分で、デザインはむしろシンプルなほうがいい。トラック・マップス社はこうした白地図的な鉄道地図を求める、クックとは別のユーザ層を狙ったのだろう。

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ところで、同社公式サイトにおける最近のトピックスは、「イギリス本土のトラックアトラス(線路配置図地図帳)The Trackatlas of Mainland Britain」の刊行だ(右写真は同社サイトより)。同社本来の土俵である線路配置図を、いわゆる「正縮尺」の地図に落とし込もうという意欲作で、線路配置はもとより、ホーム位置、信号所、トンネルや高架橋などの構造物、それに踏切までも、名称、起点からの距離 railway mileages を添えて描かれている。

日本の鉄道地図に踏切を描けばきりがないが、この国では立体交差のほうが一般的だ。陸地測量部 Ordnance Survey の地形図でも、踏切には特に LC(平面交差 Level Crossing の略)と注記してあるくらいだから、目印でもあり注意個所でもあるということだろう。ともかく、イギリス鉄道地図帳のラインナップに、また一つバリエーションが加わることになった。興味がおありなら、同社のサイトにサンプル図が掲げられている。

■参考サイト
トラック・マップス社  http://www.trackmaps.co.uk/
スタンフォーズによる「イギリス鉄道地図 Rail Map of Britain」の紹介(サンプル図あり)
http://www.stanfords.co.uk/stock/britain-rail-map-178060/

★本ブログ内の関連記事
 イギリスの鉄道地図 I-トーマス・クック社
 イギリスの鉄道地図 II-鉄道史を知る区分地図
 イギリスの鉄道地図 III-ボール鉄道地図帳
 イギリスの鉄道地図 IV-ベーカー鉄道地図帳
 イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版
 イギリスの鉄道地図 VI-コッブ大佐の鉄道地図帳

2010年5月13日 (木)

ノルウェーの鉄道地図

Blog_norway_railmap2 スイスと並んで、山と湖が織り成す美しい車窓が乗客を魅了してやまないノルウェー。しかし残念ながら、印刷物となった同国の鉄道地図に出会ったことがない。筆者の貴重な情報源の一つである Paul Steane 氏のサイト「ヨーロッパ鉄道旅行愛好家ガイド Enthusiast's Guide to Travelling the Railways of Europe」(URLは下記)でも、「M. G. Ballのヨーロッパ鉄道地図帳を別とすれば、ノルウェーの鉄道網に関する地図で刊行されたものはない」と言い切っているので、間違いはないだろう。そのM. G. Ball地図帳の北欧諸国編(右写真。画像は公式サイトから)には、ノルウェー全路線と主要駅、それに「ベルゲン鉄道(ベルゲン線)Bergensbanen」のような路線名ももれなく記載されているから、実用上はこれで十分だ。

■参考サイト
M. G. Ballのヨーロッパ鉄道地図帳 http://www.europeanrailwayatlas.com/

★本ブログ内の関連記事
 ヨーロッパの鉄道地図 I-M.G.Ball地図帳

Blog_norway_railmap ただ、過去には鉄道地図といえるものが刊行されていたらしい。堀淳一氏の著書で、現物の写真とともに紹介されている(堀淳一「地図と風土」そしえて, 1978 年 p.236-238。右写真)。それによれば、この地図のタイトルは「Reisekart for Norge(ノルウェー旅行地図の意)」で、縮尺は1:1,000,000(100万分の1)、「時刻表と同じ発行元から発売されていて、時刻表の索引地図をも兼ねているのだが、独立した地図としても立派に通用するすぐれたものである。」

1:1,000,000という縮尺は、ノルウェー全土を1面でカバーする地図の定番だ。写真に写っているのは、西岸のロムスダール Romsdalからソグン・オ・フィヨラーネ Sogn og Fjordane にかけての地域で、旅行地図らしく、氷河(ヨステダール氷河 Jostedalsbreen)が描かれ、地名もふんだんに入っている。モノクロのため判別できないが、鉄道は黒、バス路線は赤の線で描いてあるという。脊梁山地とフィヨルドが対峙する過疎地にもかかわらず、けっこう稠密な路線網だ。右上にラウマ鉄道 Raumabanen の終端区間が認められるが、鉄道は他にありえないので、バスがかつてはこのように、谷奥の小集落にまでこまめに通っていたことがわかる。路線には時刻表番号が打たれ、索引地図としての役割を果たしている。

ウェブサイトで見られる鉄道地図はどうだろうか。ノルウェーの鉄道は、インフラ管理をノルウェー鉄道庁 Jernbaneverket が行っている。旅客輸送部門はノルウェー鉄道 Norges Statsbaner(略称 NSB)が最大の事業者で、ほかには、オスロ Oslo 近郊で空港特急を走らせているフリートーゲ Flytoget、ヨーヴィク鉄道 Gjøvikbanen を運行するNSBの子会社NSBヨーヴィク鉄道がある程度だ。

Blog_norway_railmap_hp1 まず、鉄道庁 Jernbaneverket のサイトだが、ここにはごく簡単なスキマティックマップ(位相図)しかない。下記参考サイトには英語版ページを掲げているが、ノルウェー語版もまったく同じだ。赤の太線で路線が描かれ、主要駅名が添えられているものの、JPEG形式のため拡大が効かず、文字は読みづらい。首都圏の路線網は込み入っているので、土地勘のない者にはオスロ(中央駅)の位置を探し出すのさえ難しいだろう。

おそらく、開設者のこだわりは、このページの左メニューで示される路線別の情報提供にある。路線を選択すると、その全駅名が表示され、駅に関する情報がまとめて参照できるようになっているのだ。Togtider(列車時刻)タブから、列車の行先(Avganger til)と発車時刻(Rutetid)、番線(Spor)がわかる。Service タブからは駅の設備、Maps タブからは駅周辺の Googleマップが引ける。しかし、そもそも路線名はどうやって知るのだろうか。それに、英語版ページというのに肝心の列車時刻の見出しがノルウェー語のままだ。どうやら外国からの旅行者のことはあまり念頭にないようだ。

■参考サイト
Jernbaneverket  http://www.jernbaneverket.no/
英語版トップページ > Guide for travellers > 本文の"Here you will find a map of the Norwegian railway network"
Railwaylinesのページの直接リンク
http://www.jernbaneverket.no/en/Railway/Railwaylines/

Blog_norway_railmap_hp2 その点、NSBは旅客誘致が至上命題だけあって、英語版の情報もたいへん充実している。表形式の時刻表が線区ごとにダウンロードできるし、鉄道地図もインタラクティブマップとPDFファイルの両方が用意されている(下記参考サイト)。

インタラクティブマップは、初期画面が路線網全体の表示になっているが(ナルヴィク Narvik へ行くオーフォート鉄道 Ofotbanen は対象外)、スケールバーで拡大縮小でき、倍率が上がるにつれて駅の表示が主要駅から全駅へと詳しくなる。駅周辺で体験できるアトラクションがピクトグラムで表され、マウスを置くと内容もわかる(残念ながらこれだけはノルウェー語)。さらに、図上で駅をクリックすると、右メニューに駅情報(Info about the station)へのリンクが現れ、ここから駅の窓口時間、設備の有無、駅周辺のGoogleマップなどが参照できる。このインタラクティブマップは、列車予約や時刻検索からもリンクされていて、利用者の使い勝手をよく研究したシステムといえる。

一方、PDFファイルのほうは2種類ある。NSB Network map とあるのは全国図で、黒、灰、赤の3色のみを使った地味な印象のスキマティックマップだ。駅は主要駅のみだが、旅行者が乗降しそうな駅はほぼ揃っているだろう。首都圏は拡大図がある。図枠に索引番号が振ってあるから駅名索引がどこかにあるはずだが、このファイルにはついていない。また、ここでもオーフォート鉄道は割愛されている。NSBが運行事業者でないことと、国内の路線網と直接つながっていないためだろう。

もう一つは、NSB Network Map commuter trains、すなわちオスロ近郊の通勤列車圏を描いた路線図だ。ルートが運行系統別に美しく色分けされ、駅もすべて記載されて、日本の鉄道会社のそれを思い起こさせる。なお、オスロ中央駅 Oslo S の東側で赤の400系統と黄440~緑460系統を離して描いているのは、前者が旧線、後者がロメリケトンネル Romeriksporten 経由の高速新線を走ることを示している。また、黄緑の450系統は、フリートーゲ Flytoget が運行している空港特急 Airport Express Train と紛らわしい。両者は運行ルートが重なっているものの、まったくの別物で、NSBサイトには空港特急の時刻表や路線図は一切ない。それらは、フリートーゲのサイト(下記)でのみ見ることができる。

■参考サイト
NSB  http://www.nsb.no/
表形式の時刻表:英語版トップページ > Timetables > Download timetables
インタラクティブの鉄道地図:英語版トップページ > Where does the train go?
PDFの鉄道地図:英語版トップページ > Where does the train go? > Network map

フリートーゲ Flytoget  http://www.flytoget.no/
 ドランメン~空港の1路線しかないので、路線図は時刻表に添えられている。
ヨーロッパ鉄道旅行愛好家ガイド http://www.steane.com/egtre/egtre.htm

★本ブログ内の関連記事
 ノルウェーの旅行地図
 ノルウェー最北の路線 オーフォート鉄道
 ベルゲン鉄道を地図で追う I-オスロへのアプローチ

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 スウェーデンの鉄道地図 II-ウェブ版
 デンマークの鉄道地図
 フィンランドの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

2010年5月 6日 (木)

デンマークの鉄道地図

Blog_denmark_railmap1 フェリー連絡の島国から地続きの回廊へ、デンマークの鉄道地図はほんの10年ほど前に劇的な変貌を遂げた。

鉄道でユラン Jylland(ユトランド)半島からスカンジナビア半島に渡るには、3回の海峡越えが必要だ。最も西の小ベルト海峡 Lillebælt は狭い瀬戸に過ぎないので、早くも1935年にトラスの道路併用橋が架けられていた。それに対して、首都コペンハーゲン(デンマーク語ではケベンハウン København)のあるシェラン島 Sjælland は、対岸と15km以上の距離がある。1997年にようやく西側の大ベルト海峡 Storebælt に連絡橋とトンネル(鉄道専用)が、続く1999年に、東側のエーアソン(エーレスンド)海峡 Øresund にも橋とトンネルが完成した。こうして、レールはドイツからスウェーデンまで連結され、デンマークは北ヨーロッパの陸上交通の要の位置を占めることになった。

デンマークの鉄道は他のEU諸国と同様、上下分離が完了している。インフラ部門は、デンマーク鉄道庁 Banedanmark (英語名 Rail Net Denmark)が担う。旅客輸送部門はデンマーク国鉄 Danske Statsbaner、略称 DSB が最大の事業者だが、周辺路線では他社も参画している。例えば、シェラン島北部で運行する地方鉄道公社 Lokalbanen は、首都圏開発庁 Hovedstadens Udviklingsråd(英語名 Greater Copenhagen Authority)が設立した事業体だし、旧国鉄のローカル線に進出したアリーヴァ社 Arriva のような国際交通企業もある。また、地域列車会社 Regionstog や北ユトランド鉄道 Nordjyske Jernbaner などは、もとから県営や私有であった路線を引継いでいる。

Blog_denmark_railmap1_detail デンマークの鉄道地図で印刷物として刊行されているのは、M.G.Ball氏の作品のようなヨーロッパ全域を対象にしたもの(下記 本ブログ内の関連記事参照)以外に知らない。路線は網羅されているが、駅は一部省略がある。全駅が掲載されているのは、デンマーク国鉄 DSB が発行する冊子時刻表 Køreplan "Tog i Danmark" の添付地図ぐらいではないだろうか(冒頭写真。右の写真はPDF版=後述=の一部)。しかしこれも、日本の時刻表の索引地図と同様、私鉄路線はルートと起終点が示されているだけだ。私鉄の中間駅のことを知ろうとすると、時刻表本文に当たるほかない。

DSBの全線全駅地図は、インターシティリン InterCityLyn(停車駅を絞った速達特急。lyn は稲妻の意)、インターシティ InterCity、普通列車 Regionaltog の停車駅がわかるものの、時刻表番号は書かれていない。その役割は、別ページにある目次を兼ねた運行系統図に委ねられているからだ。時刻表は行先ごとに長距離列車と近距離列車の表が分かれているため、全線全駅地図にすべて書き込むと煩雑になるという判断とは想像するが、土地不案内の旅行者には少し面倒だ。なお、コペンハーゲンのメトロ Metro とS列車(Sトー)S-Tog と呼ばれる都市圏列車については、色刷りの路線図が掲載されている。

Blog_denmark_railmap_hp1 ウェブサイトで見られるものもあげておこう。1つ目は、デンマーク鉄道庁 Banedanmark のサイトにある鉄道地図(PDFファイル)だ。英語版は総合図1種類だけだが、デンマーク語版は7種類と充実している。

英語版では路線が、幹線、亜幹線、郊外線、地方線、貨物線、一時休止中の貨物線、廃止されたが施設が残る路線 Remaining lines、県営・私営線などに分類されている。幹線と亜幹線、地方線の表示は必ずしもインターシティの運行区間とは合致せず、説明書きを読む限り、管理上のカテゴリーで区別しているらしい。エーアソンリンク Øresundsforbindelsen(海峡連絡線)やメトロの環状線計画 Cityringen(英語版では Copenhagen Circle Line)も記入されている。駅の図示は起終点と分岐駅、中間の主要駅などに限られる。

デンマーク語版のすべてを読み取ることは筆者には不可能なので、タイトルの訳だけ掲げておこう。
・デンマークの鉄道 Jernbaner i Danmark(英語版総合図に相当)
・線路数 Sporantal(単線、複線など)
・最高速度 Maksimal hastighed
・最大軸重 Maksimalt akseltryk
・電化区間 Strækninger med el-drift(変電所位置も付記)
・1m当りの最大許容荷重 Metervægt(ドイツ語の Meterlast。軸重とともに線路等級を決める要素)
・列車制御装置 Togkontrolsystemer

■参考サイト
デンマーク鉄道庁 http://www.bane.dk/
英語版路線図は、Banedanmark > Rail Facts > Rail Maps > Basic Map
または直接リンク http://uk.bane.dk/db/filarkiv/387/Railmap.pdf
デンマーク語版は、Om Jernbanen (About railway) > Kort over jernbanenettet (Maps of railway network)

Blog_denmark_railmap_hp2 2つ目は運行会社のDSBが作成した鉄道地図だ。以前は時刻表の添付地図と同じものがPDFで上がっていたのだが、今回探した限りでは見つからなかった。ただ、純粋な路線図ではないものの、国内運賃 Priser i hele Danmark のページに運賃ゾーン図 Zoner i kroner og Zonekort(PDFファイル)があり、DSB運行区間については全駅が表示されていた。首都圏の拡大図は同じPDFの後ろのほうにある。また、S列車についてはスキマティックマップ(位相図)形式の路線図がある。

Blog_denmark_railmap_hp3 DSBサイトからリンクしている「旅行計画 Rejseplanen」の地図検索は、汎用のインタラクティブマップに駅の位置と名称が表示され、起点と終点を選択することで列車時刻が調べられる。

■参考サイト
デンマーク国鉄DSB  http://www.dsb.dk/
国内運賃のページは
Find og køb rejse > Priser og Zoner > Priser i hele Danmark > Zoner i kroner og Zonekort (PDF)
直接リンク(更新の可能性があるのでリンク切れご容赦)
http://www.dsb.dk/Global/PDF/Brochure/Brochurersiden/Zoner i kroner og Zonekort 2010.pdf
DSB S列車の路線図
http://www.dsb.dk/Global/PDF/Koereplaner/S-tog/Alle linjer.pdf

旅行計画Rejseplanen  http://www.rejseplanen.dk/ 
地図検索は英語版トップページ > Search via map

DSB以外の鉄道会社の多くも運行区間の路線図を作っているので、各公式サイトにあるURLをあげておこう。また、テーブル形式の時刻表を見たければ、各社サイトの Køreplan または Køreplaner のリンクを探すとよい。

コペンハーゲンメトロ http://www.m.dk/
DSBファースト DSBFirst  http://www.dsbfirst.dk/Om-DSBFirst/Her-korer-DSBFirst/ (DSBとスコットランド FirstGroup の共同出資による会社。エーアソン沿岸線 Kystbanen などを運行)
地方鉄道公社 Lokalbanen  http://www.lokalbanen.dk/Køreplaner.aspx
地域列車会社 Regionstog  http://www.regionstog.dk/koreplaner
アリーヴァ Arriva  http://www.arrivatog.dk/(路線図なし)
中ユトランド鉄道 Midtjyske Jernbaner  http://www.mjba.dk/(路線図なし)
北ユトランド鉄道 Nordjyske Jernbaner  http://www.njba.dk/(路線図なし)

Blog_denmark_railmap_hp4 最後は、線路配置図(配線図)を掲載するサイトだ。配線図は全国を11面でカバーする力作だが、その索引図は、デンマークの鉄道地図すなわち路線図としても使える。表記が英語であるのもありがたい。索引図は、線の太さで複線、単線、定期運行のない単線を区別し、線の色でどの配線図に属するかを判別できるようにしている。

■参考サイト
デンマークの線路配線図 http://dk.trackmap.net/
同 索引図  http://dk.trackmap.net/bigmap

★本ブログ内の関連記事
 ヨーロッパの鉄道地図 I-M.G.Ball地図帳

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 スウェーデンの鉄道地図 II-ウェブ版
 ノルウェーの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

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