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2010年3月11日 (木)

ベルゲン鉄道を地図で追う II-旅の始まり

ベルゲン鉄道は、スカンジナビア半島の東西を分ける標高1200m以上の高地を越えて走る。全行程で6時間半から7時間もかかる長旅だが、そのうちオスロから分水界へ上って行く東側の区間だけで4~5時間を費してしまう。旅行者が期待する万年雪やフィヨルドの景色は残りの約2~3時間にあり、しかも線路改良で長いトンネルが増えたため、絶景は途切れがちだ。それだけに、オープンな序盤の車窓を楽しむ術を仕込んでおくとおかないでは、列車旅を終えた後の印象が全く違ってくるだろう。

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ベルゲン鉄道の旅の友にと、ノルウェー鉄道 NSB がパンフレット(英語版)を発行している。全線にわたる車窓のチェックポイントはもとより、駅、トンネル、鉄橋など鉄道施設に関する蘊蓄もふんだんに紹介されていて、一読しておけば山を上る長い時間も退屈せずに過ごせるに違いない。ウェブサイトにもPDFファイルで提供されている(下記参考サイト。上写真はその表紙)。

■参考サイト
NSB  http://www.nsb.no/
英語版トップページ > Travel Inspiration > Bergen Railway > The Bergen Railway > 右メニューの Attachments
直接リンク(リンク切れご容赦)
http://www.nsb.no/getfile.php/www.nsb.no/nsb.no/Bilder/Severdigheter/Bergensb%20%20Eng.pdf

変化に富んだ氷河由来の地形を終始走るので、車窓風景はどこも甲乙つけがたいとは思うのだが、パンフレットの記事や地形図を参照するかぎり、山地の東側で大きな変化がある場所が3か所ほどありそうだ。オスロ中央駅8時11分発の列車に乗ったつもりで順に紹介しよう(下注)。

*注 以下は2009 - 10年冬の時刻表による。

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オスロ周辺(再掲)、中央がティリフィヨーレン湖
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ヘーネフォスのUターン

1つ目は、ヘーネフォス Hønefoss に着く手前で右手に広がる、ティリフィヨーレン Tyrifjorden の湖面だ。

オスロを後にした列車は断続する複線の長いトンネルを経て、港湾都市ドランメン Drammen に着く。時刻表ではこうした近郊駅は「乗車のみ取扱い Bare for pàstigning」とある。8時48分発車。ここを境に内陸に入り、悠々と流れるドランメンセルヴァ Drammenselva(elv、elva は川の意)の岸辺をしばらく遡っていく。その眺めにも飽きた頃、向こう岸がすうっと遠のいて、湖のほとりに来たことを告げる。この列車は停まらないが、ヴィケルスン(ヴィケシュン)Vikersund 駅を出たあたり、9時10分過ぎだろうか。ティリフィヨーレンは同国で5番目の面積をもつ大きな湖で、はろばろとした眺めに心が和む。オスロ周辺にはこうした低地の湖が点在しているが、ベルゲン行きの車窓ではこれで見納めになる。

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ヘーネフォス駅
Photo by DutchColours at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0

列車が速度を落とし、ヘーネフォス Hønefoss 市街をかすめながら左に大きく回り始めると、右手からは、以前主たる経路だったロア Roa への連絡線が、石のアーチ橋で川を渡ってきて合流する。駅はUターンを終えた地点にある。ヘーネフォス9時38分発車。駅の先で別の線路が右へ離れていくのは、たどってきたランスフィヨルド鉄道 Randsfjordbanen の続きだが、旅客営業はとうに廃止され、貨物専用になっている。前回紹介したように、ここから先が正式のベルゲン鉄道だ。進むにつれて山の深まりが感じられるようになる。

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ハリングダールの全貌
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ハーヴェシュティンゲントンネル(右下)とクレーデレン湖

2つ目の変化は、10時10分ごろだろうか。開通当時2番目に長かった2312mのハーヴェシュティンゲントンネル Haverstingtunnelen を抜けたところで始まる。列車は、暗闇からいきなりクレーデレン湖 Krøderen の水面から130mの高みに飛び出し、左の車窓いっぱいに山と湖が織り成すパノラマが広がるのだ。鉄道が暫定開通した時、細長い湖の両端を蒸気船がつないでいた(前回紹介)。北端の船着場だったグルスヴィク Gulsvik まで10km以上、列車が小トンネルをいくつも介して降りる間、湖面はずっとついてくる。

鉄道はこれからハッリングダール Hallingdalen(dal、dalen は谷の意)をひたすら上り詰めていく。グルスヴィクを出てすぐ入るトンネルは1972年に完成したもので、旧線は左手の川べりを大回りしていた。廃線跡は国道の拡幅に使われ、鉄道用から改築した短い道路トンネルは、ハッリングダールの門 Hallingporten と呼ばれて、車窓からも見える。

谷は初めのうち尾根が突き出し幅も狭く、線路は翻弄されるように左右に曲がりくねる。しかし、ネスビエン Nesbyen あたりからは谷筋が縦に通るようになり、列車の速度も上がる。11時01分のゴール Gol で進行方向が北から西に変わり、次はオール Ål に停車する。オスロとベルゲンの双方から3~4時間の場所にあるこの駅は、かつて機関庫があり列車配膳の基地が併設されていた。現在もここで上下列車がしばしば交換し、わが列車の隣にも、ベルゲン7時58分発のオスロ行きが入線しているはずだ。対向列車を見送って11時24分、オールを発車する。

まもなく湖が見え、ここで3つ目の変化が現れる。線路がハッリングダールの谷底を這うのをやめて、山裾をじわじわと上り始めるのだ。右の車窓は川から離れて、広いU字谷を俯瞰するようになる。谷底からの高度およそ140mまで上ったところで左のほうへそれていき、一段高いウステダール Ustedalen に入る。

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スキーリフトが延びるヤイロ

まもなくヤイロ Geilo 駅だ。標高794m、同国屈指のウィンターリゾートの玄関口で、町をとりまく山は11月後半から4月初めまで大規模なゲレンデに変身する。夏はハルダンゲルフィヨルド Hardangerfjorden へ行くバスに乗継ぐ人たちが下車するだろう。オスロを発って3時間半になる。11時45分ヤイロ発車。森林限界が近づき、山登りもいわば七合目にさしかかる。

次回は、鉄道建設最大の難所、万年雪に埋もれた峠をいかに越えたのかを見てみよう。

■参考サイト
ベルゲン鉄道の参考サイトは、下記「ベルゲン鉄道を地図で追う I-オスロへのアプローチ」の末尾にまとめた。

本稿は"OSLO - BERGEN The Bergen Railway" NSB brochure および John Cranfield "The Railways of Norway" John Cranfield, 2000 を参照して記述した。
地形図は地図局 Statens Kartverk のデータベースによる地図閲覧サイト kart i skolen の画像を使用した © www.avinet.no 2009

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コメント

フロム鉄道の地図と沿線の風景(ミュルダール駅とフロム駅)の詳細な様子等、このブログの地図とご助言により、私の拙い絵は、今秋2010年10月23日~29日に第53回新協美術展:上野の森美術館に入選かないました。
 本当にありがとうございました。
「ルート16:フィヨルドの旅」です。F30号
 ノルウェー旅行の思い出と亡き人への追慕と自然への憧憬を描きました。

入選おめでとうございます。拙文がお役に立ってたいへんうれしく思っております。

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