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2009年12月10日 (木)

デンマークの地形図地図帳

これまで筆者が親しんできたデンマークの地形図 Topografisk Kort は、1:100,000だ。最初に出会ったのが1:100,000の区分図だったし、その後購入した地図帳もこの縮尺だった。初めから意図していたわけではないが、土地勘を得るためにとりあえずは国土全体をざっと眺め渡したいと思うので、地形や地物がそこそこ読み取れる1:100,000は、結果的にニーズに適っていた。これより縮尺が小さくなると(1:200,000など)等高線が省略されてしまうからだ。

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1:100,000見本図(ロスキレ Roskilde 付近)
(C)Copyright Kort- og Matrikelstyrelsen 2009

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1:100,000表紙

1:100,000地形図は1センチ地図1cm Kortと呼ばれる。全土を33面でカバーするが、それとは別に、図郭をずらしてまとまりのある地域を一面に収めた特別版が4面(Djursland, Sundeved og Als, Sydfyn og Langeland, Sydsjælland og Møn)ある。右写真は1998年修正のコペンハーゲン図葉(デンマーク語ではケベンハウン København)だが、オフセット印刷による1枚ものの紙地図は2002年をもって刊行が停止されたため、残念なことにこの形式としては最終版になってしまった。

今、最新の地形図が見たければウェブかオンデマンド印刷になるが、1:100,000に関しては、地図帳という選択肢もまだ残されている。地図帳は全土が1冊に収められているので、初期投資は大きいものの、それに見合う価値はある。デンマークでは、第2次大戦前からこの縮尺で地形図地図帳が刊行されてきた。同国の測量局である国土測量・地籍局 Kort- og Matrikelstyrelsen が出版元だったが、現在は、紙地図の販売全般を代行するノーディスク・コートハネル社 Nordisk Korthandel の手に移っている。

序文によると、最初の1:100,000地図帳はいわゆる参謀本部地図 Generalstabskort を全3巻に集成したもので、1928~33年に現 測量局の前身に当たる測地学研究所 Geodætisk Institut の設立を記念して製作された。参謀本部地図という呼称は軍用地図だった時代の名残だが、1960年代半ばの第3版までこの名がタイトルに掲げられていた。しかし、1970年代初めに準備された第4版の発行は中止となる。作図方法の改良に伴って、デザインを一新した1:100,000地形図の作成が検討されることになったからだ。1975~81年に旧図から新図への置き換えが行われ、その成果を反映した地図帳が、1982年に「デンマーク1:100,000 地形図地図帳 Danmark 1:100 000 Topografisk Atlas」と名称を改めて刊行された。

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1:100,000地形図地図帳
(1982年版)表紙

この地図帳は珍しい横長の判型(31×27.5cm)を採用している。もとの地形図の図郭を上下2分割したものを見開き2ページに収めるためだ。こうすると、1ページの掲載範囲がちょうど1:50,000の図郭と一致するので、大縮尺図の索引図としても使えるという利点があった。筆者の手元にあるのは、1982年の衣替えから数えて第3版に当たる1989年版(右写真)だ。表紙カバーは、ユラン Jylland(日本語ではユトランド)半島中部、オーフス Århus の近郊だそうだが、明るくのびやかな海辺の風景は旅情を誘う。

中身の地図は1:100,000の区分図そのものだ。等高線が5m間隔とこの縮尺にしてはかなり精度が高いので、隆起台地に細かい谷筋やフィヨルドが入り組む複雑な地形も手に取るように分かり、眺めていて飽きることがない。原図の修正に間に合わなかった変化、特に新設道路は、紫で加刷するというアメリカの地形図のような小技も駆使している。しかし、かつての参謀本部地図が朱色や黄色といった派手な色を惜しげもなく使っていたのに比べて、黒、青、緑(アップルグリーン)、茶(ココアブラウン)の4色刷は、いかにも地味な色調で見映えがしない。印刷の色数を絞ろうとしたのだろうが、せっかくのスマートなデザインが生きてこないと思っていた。

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1:100,000地形図地図帳
第7版(2008年)表紙

ノーディスク・コートハネル社から刊行されている現行の第7版(2008年、右写真)は、判型が25×34cmと縦長に戻り、まったく別の地図帳のようだ。総ページ数は224ページで、地図166ページ、地名索引38ページ、その他(行政区分図、道路網図・都市間距離、オンデマンド地図紹介、基礎データ集など)20ページから成る。デンマーク本土の1:100,000とともに、フェロー諸島1:200,000、グリーンランド1:5,000,000(500万分の1)も添付されている。判型が見直されたことで、1ページの掲載範囲が区分図の図郭と合わなくなったが、その代わり、隣接図とは2~3cmの重複を持たせてあるのが親切だ。

地図はもちろん測量局のデータベースから生成されたもので、プロセスカラー印刷を前提に配色が改善され、コート紙の使用によってすっきりした仕上がりになった。記号デザインは、色や形状が差し替えられた行政界と道路番号表示を除いてほとんど同じにもかかわらず、第3版と比較すると全体の印象が大きく変わっている。以前紹介したオランダの地形図の目覚しさとはまた違う、落ち着いた美しさが好ましい。

話は変わるが、デンマークの地形図には、踏み台の立面形に似た鉤形の記号が一面にばら撒かれている(下図参照)。どの図葉にも見られるにもかかわらず、1枚ものの地形図の凡例(記号一覧)で一切言及されているのが不思議だ。実はこれ、農場(の建物)を表している。進入路を取り囲む形に建てられた一連の建物を上から見た形だそうだ。よそ者には謎でも、この国ではあまりにありふれた風景なので、わざわざ説明するまでもないのだろう。

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地図帳第7版裏表紙の一部を拡大

■参考サイト
ノーディスク・コートハネル社(英語版) http://www.scanmaps.com/
 上記地図帳は同社のオンラインショップのほか、デンマーク国内の一般書店でも扱っている。

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