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2009年7月30日 (木)

ベルギーの地形図

ベルギーをよく知らなかった頃、筆者は漠然と、広々とした平野が続く国だと思い込んでいた。おそらく北隣のオランダと混同していたのだが、同じような印象を抱いている人も少なくないのではないか。実際訪れてみると、首都ブリュッセルBruxellesの街中でさえけっこう起伏が感じられるし、国土の南半分は丘陵を経て、より高度差の大きなアルデンヌ高地へと遷移していく地形だ。オランダに比べて変化があるので、地勢表現が省かれた道路地図では物足りず、官製地形図の助けを借りたくなる。地形図の作成元であるベルギーの測量局は、オランダ語でNationaal Geografisch Instituut (NGI)、フランス語で Institut Géographique National (IGN)と称しているので、ここではIGNの略称を用いる(以下、原語表記は仏語)。

地形図のラインナップは、IGNの公式サイトに掲げられている。縮尺別では1:250 000、1:100 000、1:50 000、1:20 000、1:10 000の5種類があるが、ディジタルデータから編集するいわゆる「基本縮尺échelles pivot」は1:250 000、1:50 000、1:10 000の3種類としている。リストから漏れた1:100 000は1989年を最後に更新されていないし、1:20 000は1:10 000地形図を単純に50%縮小したものだ。

Blog_belgium_250k 1:250 000は1面で全土をカバーする。国の面積が30528平方キロと、関東地方(32424平方キロ)より少し小さい程度なので、大判用紙の片面に収まってしまうのだ。全土が眺め渡せるから、都市相互の位置関係や距離感覚がつかむのにいい。ただし、通常販売されているタイプは、地図を南北に分割して両面印刷したものを小さくたたみ、地名録とともに透明ケースに入れてある(写真は1993年版の折図表紙、現在は表紙が異なる)。

図上1cmで実寸2.5kmを表すこの縮尺は、徒歩や自転車移動で使うには小さすぎて、おのずと自動車道の表示に重点を置いた道路地図仕様になる。クルマなら少々の坂道はものともしないから、等高線は必須ではない。それでフランス、オランダ、イギリスなど、周辺諸国の編集方針はどれも似ている。ベルギーもそれを踏まえているが、律儀に50m間隔の等高線(+25m補助曲線)を入れ、表紙にもTopo250とtopo(地形)を強調しているところが、他と一味違う。

Blog_belgium_50k 1:50 000はどうだろうか。こちらは57面で全土をカバーするが、図郭は隣接図と一切重複させない従来型だ。いまだに現地で「参謀本部地図cartes d'état-major」という旧称が通用するのも分かる気がする。しかし、2001年に新図式によるディジタル編集図への置換えが完了して、内容は旧図から大きく変貌した(写真左は旧版、中は新版の第1版、右は第2版。下写真は1:50 000索引図)。この地形図(アントヴェルペンAntwerpen図幅)は、国際地図学協会ICAから2001年の「優秀地図賞Award for Excellence in Cartography」を得ている。

新図式はカラフルで、かつ他国にも例が見当たらないほど描写の詳細さが際立っているが、旧図と比較して特徴的なところを三つ挙げておこう。一つは、集落と道路の表示が黒からグレーへと色が薄くなったことだ。点在する都市や集落とそれをつなぐ道路網は、読図の際にまず目が行くところなので、全体のイメージに与える影響も大きい。集落の上に地名などの注記文字が重なっても読むのに支障がない反面、下の集落の表示は読み取りにくくなった。一方、工場や建物類似の構築物は茶系の色を与えて、居住地区と明確に区別している。

Blog_belgium_50k_index 二つには、植生を色の違いだけで表したことだ。旧版でも森林はライトグリーンで塗っていたが、広葉樹林と針葉樹林の区別は日本と同様、記号によっていた。新図は彩色で広葉、針葉、混合林の3種を分けている。強いて近似の色名でいえばアップルグリーン、ミントグリーン、フォレストグリーンだろうか。しかし、依然として耕地や牧草地、言い換えれば人が生産活動に利用している地表面には色が設定されていないので、無地の部分が多いのは旧版と共通している。

三つ目はあまり目立たないが、鉄道の表示だ。旧版は複線以上が黒の太線、単線が日本のJR線と同じ旗竿だった。電化区間は鉄道記号の上に白抜きの菱形を置くもので、駅と紛らわしかった。新版では、複線以上は黒の細線2本、単線は中線1本と直観的だ。旗竿は引退したわけではなく、なんとタリスThalysが走る高速線に転用されるという破格の出世を果たした。また、電化の記号はなくなり、逆に非電化線をNEの文字で示している。

Blog_belgium_20k 1:10 000は格段に表現が詳しくなるが、市街地を除いて旅人には持て余す大縮尺なので、縮小版の1:20 000のほうに触れておこう。これに対応する旧図の縮尺は1:25 000だが、継続性を犠牲にしてまで縮尺を変更したのは、1:10 000から縮小する作成方法との関係だろうか。さすがに原図の40%縮小(1:10 000→1:25 000)では、線や文字が判読できないのかもしれない。ちなみに旧図体系では1:25 000がオリジナルの測量図で、1:10 000はそれを単純拡大したものであり、いまとは逆の生成関係だった(写真左は旧版1:25 000、右は新版1:20 000)。

新図式の地図記号は旧図と比較にならないほど膨大だ。道路、地物、水系、植生とあらゆるカテゴリーが細かく分類されていて、中でも植生は、色と幾何学模様の組合せが芸術的な域に近づいている。おそらく土地利用図としての役割も持たせてあるのだろう。1:20 000の新図置換えはまだ一部で完了していないので、旧版はセリ・クラシークsérie classique(旧シリーズ)、新版はセリ・ニュメリークsérie numérique(ディジタルシリーズ)と呼んで区別している。

IGNのサイトでは地形図の広告が最前面に据えられていて、フランスのIGNのように自らの手で地形図を積極的に販売していこうという姿勢が汲み取れる。オールインワンのディジタル媒体や地形図地図帳Atlas topographiqueのような製品のほかに、ハイキング、サイクリングなどのための旅行情報を付加した旅行地図が数多く刊行されていて、美しい表紙デザインを追うだけで心が躍る。これらはIGNのサイトで直販されている。

■参考サイト
IGN http://www.ngi.be/ または http://www.ign.be/
どちらも、最初にオランダ語版(Nederlands)かフランス語版(Français)を選ぶようになっている。
ICA優秀地図賞に関する記事 http://www.ngi.be/NL/NLmainawarden.htm
ベルギーの地図に関する情報は、「官製地図を求めて-各国地図事情 ベルギー」にまとめている。
http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_belgium.html

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 ベルギーの地形図地図帳
 ベルギーの旅行地図
 オランダの地形図
 ルクセンブルクの地形図

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2009年7月23日 (木)

オランダの鉄道地図 II

鉄道による貨物輸送を促進するために設立されたオランダ・鉄道貨物情報財団Rail Cargo Information Netherlands Foundationは、貨物輸送に関する鉄道地図を公開している。

■参考サイト
鉄道貨物情報財団 http://www.railcargo.nl/
トップページ > Railinfrastructuur > Spoorkaarten > Nieuwe spoorkaart van Nederland > posterrailcargo.pdf

Blog_netherlands_railmap_hp3 「オランダの新鉄道地図Nieuwe spoorkaart van Nederland」と称するこの地図は、道路と水系で構成した単色のベースマップの上に、赤や緑の実線で鉄道路線を描いている。タイトルを見る限り何の変哲もなさそうだが、凡例(蘭・英併記)に目を通せばユニークな地図であることは明らかだ。

赤い線は旅客線ではなく、オープンアクセス鉄道網Open access rail networkと説明されている。オープンアクセスとは、列車運行事業者が使用料を支払って線路使用権を得ることができるシステムで、EC指令で示された目標に沿って、加盟各国が上下分離と併せて鉄道事業に適用した政策だ。ほとんどの路線が旅客列車の運行に供されているのだが、貨物事業者にも門戸が開かれている。それに対して、緑色は貨物鉄道専用線Dedicated freight railway lineを表している。このほか、設定された記号を操車場、コンテナターミナル、トラックとの積替駅、私有側線と追っていくと、おのずと鉄道にもう一つの重要な役割があることを再確認させられる。

もう一つ目を引くのは、国土の中央を東西に貫くベテュヴェルートBetuwerouteが描かれていることだ。これは2007年6月に開通した延長160kmの貨物専用線で、ドイツ国境に近いゼフェナールZevenaarとヨーロッパ最大の貿易港であるロッテルダム港を最短距離で結んでいる。旅客列車の運行頻度が高いオランダ国内では、鉄道の機能向上に貨物輸送の分離が求められ、特に需要の大きいドイツルートをバイパスする新線が計画された。環境に配慮した設計変更などで工費が見込みの2倍に膨れ上がったことや、電化方式も信号方式も新しいEU標準を採用したため、在来線仕様の機関車は通行できなくなるなど、難産を伝えられながらの開業だった。しかし、この地図上ではあたかも主役のように遇されていて、実際もレイン(ライン)=ヴァール川Rijn-Waalの水運を補完する物流の動脈に成長していくのだろう。

なお、上記ページからリンクしている「オランダの詳細鉄道地図Detailspoorkaarten van Nederland」には、この地図の都市部の拡大図が多数用意されている。

オランダの鉄道施設管理は、2003年に設立されたプロレール社ProRailが行っているが、そのHPに、ファイルサイズが5MBもある鉄道地図が用意されている。

■参考サイト
プロレール社 http://www.prorail.nl/
トップページのPubliek > Spoorkaart  またはトップページの直接リンクdirect naarから

Blog_netherlands_railmap_hp4 縮尺は1:300 000で、ベースマップには同国の測量局Topografische Dienst Kadasterが編集した1:250 000道路地図を縮小使用している。道路地図といっても日本で言えば1:200 000地勢図に相当する公式地図で、道路、集落、水系、植生、行政界などが詳細に書き込まれたものだ。地図の見栄えで他と一線を画しているだけでなく、オランダの鉄道インフラの大要が概観できるという意味で注目に値する資料だ。どのような内容が盛り込まれているかは、凡例にある地図記号を見ていくのが手っ取り早い。表記がすべてオランダ語なので、参考のために、鉄道に関する地図記号の意味を日本語で付しておこう(厳密な訳ではないのでご了承を)。

Spoorwegen鉄道の部
- geëlektrificeerd (enkel- / dubbel- / meersporig) 電化(単線/複線/多複線)
- niet geëlektrificeerd (.... 非電化(同上)
- uitsluitend goederenvervoer (.... 貨物専用線(同上)
- museumspoorweg 保存鉄道
- niet in exploitatie 休止中
- lightrail 軌道

Station旅客駅の部
- station zonder inhaal- of kruisingsmogelijkheld ook wel halte genoemd 交換不可能(行き違いできない)で、合図により停車する駅(リクエストストップ?)
- station / groot station mét inhaal-... 交換可能な駅/主要駅
- evenementenhalte (facultatieve halte) 臨時設置の乗降場(仮乗降場)
Functionaliteit spoor 運行機能の部
- Inhaalspoor op de vrije baan. bijv. ... (本線上の、あるいは駅機能のない)待避線、その例
- overloopwissel. bijv. ... 渡り線、その例
- aansluiting (splitsingspunt op vrije baan) 接続点(本線上の分岐点)

voorzieningen施設の部
- emplacement (rangeerstation / opstelterrein) 操車場/貨車組成施設
- laad- en losplaats voor goederenvervoer (openbaar) 貨物積み降し施設(非専有)
- containeroverslagmogelijkheld コンテナ積み降し施設
- revisiebedrijf 修理工場
- onderhoudsbedrijf 分解修理(全般検査)工場
- servicelocatie サービスステーション(?)
- tankplaats 給油施設

これまで紹介した鉄道地図と重複する情報も含まれているが、動力方式、線路数、駅の機能など鉄道施設の基本的なデータを包括的に表示しているところが得がたい。それに、位置情報だけだが保存鉄道やライトレールまでカバーしているので、およそ郊外路線と呼ばれるものは網羅していると考えられる。前回紹介したTreinreiziger.nlの列車系統図と併用すれば、旅行用としても十分に役立ちそうだ。印刷版の配布が案内されていないのがまことに惜しい。

最後に、私的サイトで過去の時刻表添付地図とおぼしきファイルを発見した。日付は2004年9月になっている。印刷物のスキャニングではなく、印刷用のデータファイルから直接PDF化したものなので、拡大しても鮮明な画像が得られる。トップページからのリンクで紹介すべきだが、リンクが見つからないので、やむをえずPDF(131KB)の直接リンクを記すことにする(リンク切れご容赦)。

■参考サイト
http://www.astro.rug.nl/~islands/spoorkaart.pdf

★本ブログ内の関連記事
 オランダの鉄道地図 I

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図-ウェブ版

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2009年7月19日 (日)

オランダの鉄道地図 I

オランダの列車というと、筆者などはドッグノーズと呼ばれた黄色の電車を思い浮かべる。丸く膨らんだ前面の形状が犬の顔を思わせるのでそのあだ名がついているのだが、一世を風靡したこの形式も、スマートな新車に押されて現在は主に各停に運用されているようだ。

しかし注目すべきは顔の形ではなく、これが動力分散型の電車だという点だ。日本では特急でも電車が用いられるが、ヨーロッパの郊外列車や急行列車は、電気機関車が動力を持たない客車を牽引するスタイル(動力集中型)をとることが多い。その役を敢えて電車に担わせているのは、日本のように短距離高頻度の列車ダイヤが組まれていることの証しだろう。事実、オランダはヨーロッパで最も鉄道が利用されている国で、単位面積当りの路線の密度はベルギーやドイツに及ばないが、旅客輸送密度では鉄道王国スイスをも凌いでいる。発車時刻が等間隔のいわゆるパターンダイヤが採用され、国内のインターシティは特別料金が不要であるなど、気軽に使える鉄道が強く意識されている。

Blog_netherlands_railmap1 オランダ2800km余の鉄道路線を表示している鉄道地図(オランダ語でスポールカールトSpoorkaart)を見てみよう。印刷物で筆者が知っているのは、公式時刻表Spoorboekjeの添付地図ぐらいだ。手元にあるのはあまりにも古い1988年版だが、表紙のすぐ後ろに折りたたんだ鉄道地図がはさんであり、拡げると本のサイズの約6倍(縦41.5cm横37.5cm)の大きさになる(右写真、右上は時刻表表紙)。路線網が水平、垂直および斜め45度の直線に単純化された、いわゆるスキマティックマップ(位相図)だ。オランダの鉄道のシンボルカラーというべき濃い黄色の地の上に旅客用の全線全駅が表示され、路線ごとの時刻表番号が添えられている。ラントスタットRandstadと呼ばれるアムステルダムAmsterdam、ロッテルダムRotterdam、ハーグ(デン・ハーフDen Haag)、ユトレヒトUtrechtの4大都市圏は、拡大図がある。

ウェブ版はなかなか充実しているので、2回に分けて紹介しよう。

Blog_netherlands_railmap_hp1 オランダもインフラ管理と列車運行の事業者を分ける上下分離が実行されているが、後者の旅客輸送の大部分を担当するのがオランダ鉄道Nederlandse Spoorwegen (NS) だ。NSのサイトでは、時刻表添付と同じデザインを用いた地図がPDFファイルで提供されている。

■参考サイト
オランダ鉄道 http://www.ns.nl/
トップページのService > Folders over diensten (= Brochures on service) > Spoorkaart van Nederland

図の左上にあるタイトルは、直訳すると「オランダの運賃単位地図Tariefeenhedenkaart van Nederland」だ。運賃単位Tariefeenheidは基本的には営業キロ数なのだが、若干補正があるらしく、より正確に言うなら運賃計算キロだ。地図上の各駅間に書かれた数字がそれを表している。

20年前の路線図と比較すると、変化が2点目に付く。1つは、ローカル線にNS以外の会社が運行する区間が出現していることだ。北部フローニンゲン州Groningenとフリースラント州Frieslandのアリーヴァ社Arriva、東部ヘルダーラント州Gelderlandのシンテュス社Syntus、南東部リンブルフ州Limburgのヴェオリア交通社Veolia Transport(もとのコネックスConnex)などが、NSの運行路線とは色を変えて示されている。多くは国際交通企業で、路線バスなどと一体で地方の公共輸送を請け負っているのだ。

もう一つは、首都アムステルダムからベルギー国境へ、一直線に南下する南高速線HSL-Zuidの存在だ。地図ではHST(高速列車Hogesnelheidstreinの略)と記されている。パリから来るタリスThalysがここを疾走することになるのだが、2009年中に運行予定と注釈があるものの、現時点ではオランダ領内はまだ開通していない。
なお、上記ページで並べて紹介されている「オランダの運賃単位地図に付随する詳細図Detailkaarten behorende bij Tariefeenhedenkaart van Nederland」は、4大都市部の拡大図と全国図で、印刷図では先述の図の裏面に配置されるものだろう。全国図には、主要駅間の運賃単位が記されている。

Blog_netherlands_railmap_hp2 一方、独立系の鉄道旅行情報サイトTreinreiziger.nlでは、趣向の違う鉄道地図(PDF)が提供されている(Treinreizigerは英語ならtrain travelerの意)。オランダ国内の鉄道旅行に持っていくとすれば、NSの運賃地図よりこちらのほうだろう。なぜなら、これはオランダの旅客列車のルートを一覧できる優れものだからだ。

■参考サイト
Treinreiziger.nl   http://www.treinreiziger.nl/
トップページ > Reisinformatie > Spoorkaart >
文中の "De spoorkaart is vanaf nu te downloaden op treinreiziger.nl"(意味は「鉄道地図はtreinreiziger.nl ですぐにダウンロードできる」)、または "U kunt de kaart hier downloaden"(同「ここからダウンロードできる」)のリンクから

地図の裏面(PDFの2ページめ)に「鉄道地図をどう使うかHoe werkt de Spoorkaart?」という説明文がある。それによると、「この地図では、線の色を追うことによって、列車系統がどこを走るかを容易に確かめることができる。線が、ある駅で途切れていればその系統の起終点であり、駅を通り抜けていれば経由地だ。線の太さで、その列車系統の運行頻度(月~金、およそ7~19時の間。凡例の説明では7~20時)がわかる。夜間や週末には列車数が削減されることがある。すなわち、ラントスタット(4大都市圏)の頻発区間では30分、ラントスタット圏外のより本数の少ない区間では少なくとも1時間毎になる。この地図では発着時刻を示していないので、時刻表の代用にはならない。旅行計画にはNSなどのサイトを参照のこと。」

説明中の、線の太さで運行頻度を表す方法については、図の凡例で具体的に示されている。すなわち、細線は1時間に1本(per uur = per hour)、中線は同2本、太線は同4本、そして中線の破線は通勤通学のピーク時のみ2本(alleen in spitsuren = only in peak)などとなる。

列車を利用する際に、目的地まで直行できるのか、できない場合はどこで乗り換えるのかは大きな関心事だ。筆者はこれを見て、国際空港のあるスヒポールSchipholからアムステルダム中央駅を経由せずに東部の都市へ行く系統がいくつも設定されていることを初めて知った。昔の感覚でどの列車でも中央駅を通ると信じて乗っていたら、きっと慌てたことだろう。この地図が現地で容易に入手できるのかどうかは知らないが、返信用封筒を同封して請求すれば、印刷版の送付もしてくれるようだ(ただし、国外への対応は不詳)。

次回は貨物輸送とインフラ管理部門の鉄道地図を紹介する。

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 オランダの鉄道地図 II

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図-ウェブ版

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2009年7月12日 (日)

ベルギーの鉄道地図

Blog_belgium_railmap1 20年ほど前にパリからベルギーの首都ブリュッセルBruxellesへ旅したときは、EC(ユーロシティ)で2時間半、野を越え丘を越えて行く旅だった。現在は、高速線を経由するタリスThalysで1時間22分、ずいぶん速くなったものだ。その頃参考にと買ったポスターサイズの路線図Carte du résaeu(右写真。上は全体、下は一部拡大)が、筆者の持っている唯一のベルギー鉄道地図だ。縮尺1:300 000で、1988年11月1日現在の全線全駅が表示されている。駅は等級別の管理駅、被管理駅に分類され、路線は電化・非電化、単線・複線を記号化している。貨物線や休止線も載っているので、地形図で鉄道の軌跡をたどるときにも参考になる資料だった。残念だが、最近はこのような紙地図を目にしたことがない。それで本稿では、ウェブで見られるものを紹介しておきたい。

Blog_belgium_railmap_hp1 ベルギー国鉄SNCBの公式サイトに、インタラクティブ形式の路線図がある。ベルギーの公用語であるオランダ語、フランス語、ドイツ語のほかに英語版も用意されていて、抵抗なく使える。さらに、表形式の時刻表のリンクもあるので、鉄道旅行に最低限必要な情報が揃う。ところが、公式サイトの英語版ではなぜかリンクが欠落していて、英語版の路線図を見るのに、わざわざオランダ語(NLと略記)かフランス語版(FR)から入っていかなければならない。

■参考サイト
ベルギー鉄道SNCB(フランス語版)
http://www.sncb.be/ または http://www.b-rail.be/main/F/
 路線図はページ左下 "Carte réseau (= network map) "から
 表形式の時刻表は同じく "Brochures horaires (= timetable brochures)"

路線図の初期画面は全国図だ。部分拡大するにはCtrlキーを押しながら、任意の範囲をマウスでドラッグする。縮小するには右メニューの虫眼鏡ボタンを使う。また、右メニューのスケールバーでも倍率を変えられる。画面移動は同じ並びの一番左、八方向の三角印(▲)をマウスオーバーする。クリックすると移動速度が早くなる。路線をクリックすると対応する時刻表が見られる...、などと説明してはあるのだが、筆者のパソコンの性能が低いのか、使い方が間違っているのか、Ctrlキー+ドラッグの範囲指定拡大は反応がひどく鈍いし、対応する時刻表もいっかな出てこない。いろいろ機能を盛り込んだのはいいが、便利さを追求するあまり、かえって操作性を低下させてしまったようだ。

Blog_belgium_railmap_hp2 幸いなことに、路線図の古いバージョンがまだ残っている。こちらの方が機能が少ない分、ストレスなしに作動する。デザインを見る限り旧バージョンとは信じられないが、2007年開通のアントウェルペンAntwerpen中央駅を通過する新線が描かれていないので、それ以前の製作のようだ。

■参考サイト
SNCB路線図旧版(リンク切れご容赦)
http://www.b-rail.be/nat/F/common/netcard_flash/index.php

インタラクティブマップは一覧性の点で不満が残るという方に、個人サイトに挙がっている「1枚もの」を紹介しておこう。

Blog_belgium_railmap_hp3 一つは、駅舎を写した古い絵葉書を集めた「昔のベルギーの駅Les gares belges d'autrefois」というサイトにある。トップページの最下段に、「草創期から今日までのベルギー鉄道地図Carte du réseau belge depuis sa création jusqu'à nos jours」と「ベルギー旅客鉄道地図(2002年)Carte du réseau voyageurs belge (2002)」がリンクされている。特に前者は、廃止線を含めた普通鉄道の全路線を描きこんだ力作で、全盛期の鉄道網を回顧できる。

■参考サイト
昔のベルギーの駅 http://users.skynet.be/fa058639/

Blog_belgium_railmap_hp4 もう一つは、「ベルギー鉄道非公式サイトChemins de fer belges - Site non officiel」というベルギーの鉄道を紹介する個人サイトで、その中に「国鉄路線網地図Cartes du réseau SNCB」という鉄道地図を集めたページがある。最上段にある時刻表の添付地図をはじめ、多くは紙地図をスキャンしたものだが、唯一、「鉄道網の変遷Évolution du réseau」は、1830~2000年までの鉄道網の変遷を1年1秒の速度で見せるユニークな動画像だ。

ベルギーは、ヨーロッパ大陸でも早期に鉄道を導入した国の一つに数えられる。1830年、オランダから一方的に独立を宣言したベルギーは、北海に通じるスヘルデ川Schelde河口の封鎖に遭い、大きな打撃を受けた。水運に代わる輸送手段として注目したのが、イギリスで成功を収めていた鉄道だった。1835年にブリュッセル~メヘレンMechelen間が開通して、ベルギーの鉄道時代が幕を開けた。動画像に目を凝らしていると、1870年ごろまでに、路線が全国に張り巡らされる様子がよく分かる。時が流れて20世紀、1950年代からは直流3000Vの電化区間がずんずん延びていき、最後に交流25KVの高速線が西からすうっと現れて、全編が終わる。

■参考サイト
ベルギー鉄道非公式サイト「国鉄路線網地図」
http://www.belrail.be/F/infrastructure/index.php?page=cartes

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 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 オランダの鉄道地図 I
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 フランスの鉄道地図 III-ウェブ版
 ヨーロッパの鉄道地図-ウェブ版

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2009年7月 5日 (日)

アイルランドの鉄道地図

Blog_ireland_map アイルランド共和国の鉄道網を運営しているのは、国有のアイルランド鉄道だ。英語ではIrish Railだが、正式にはアイルランド語によるイルンロード・エールンIarnród Éireann(読み方はウィキペディア日本語版による)と称している。Iarnródは英語のIron Roadから来ていて、Iarnród Éireannはエール(アイルランド)の鉄道という意味をもつ。運行路線は首都ダブリンDublinから放射状に広がり、内陸を貫通して沿岸の主要都市に達している。

一方、1922年のアイルランド共和国独立に際して袂を分かった北アイルランドでは、北アイルランド鉄道NI Railwaysが鉄道事業を行っている。1990年代に極端な民営化が推し進められたイギリスで、唯一残る国有かつ上下一体経営の鉄道会社だ。首都ベルファストBelfastから延びる長短4方向の路線を維持する。

鉄道が盛んに建設されていた19世紀はまだ全島がイギリス領だったので、主要路線は1846年の鉄道規制法で定められた1600mm(5フィート3インチ)軌間、いわゆるアイリッシュ・ゲージで統一された。最盛期であった1920年には、島全体に狭軌を含めて計5500kmもの路線が存在したという。1950~60年代に不採算となっていた多くのローカル線が廃止された結果、路線規模は1/3にまで縮小した。現在の運行形態は首都中心で、アイルランド鉄道はDARTなどの近郊通勤列車、50~80km圏の郊外列車、地方都市へのインターシティを走らせている。また、ダブリンとベルファストの首都間は、両鉄道が共同で、ユーロスターなみの設備をもつ「エンタープライズEnterprise」号を投入している。

鉄道地図でもアイルランド島は、1つのくくりで扱われることがほとんどだ。単独の出版物になっているものでは、1997年にアイアン・アラン出版社から刊行された「ジョンソンのアイルランド鉄道地図帳・地名録Johnson's Atlas & Gazetteer of the Railways of Ireland」が知られているが、残念ながら今は絶版で、古書店を当るしかない。グレートブリテン島と合冊・併載になっているものは数種ある。下記リンクの記事を参照願いたい。

・トーマス・クック社の鉄道地図 Railmap Britain & Ireland
 アイルランド島は縮尺1:1 000 000(100万分の1)。駅の表示は主要駅のみ。旅行地図の性格をもつため、長距離バスルートも記載。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/i_7b92.html

・アイアン・アラン社の「Rail Atlas 1890」
 1890年当時(イギリス領時代)の全線全駅を表示。とうに廃止された路線が多数描かれた貴重な資料。ダブリンは拡大図あり。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/ii_6b6b.html

・M.G.Ball氏によるabc英国鉄道地図帳abc British Railways Atlas
 ポケット版の鉄道地図帳。アイルランド島は縮尺約1:1 670 000(167万分の1)で4ページを充てる。全駅表示。ダブリンは拡大図あり。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/iii_4389.html

・M.G.Ball氏によるヨーロッパ鉄道地図帳
 アイルランド島に1ページを割く。縮尺約1:2 220 000(222万分の1)。駅の表示は主要駅のみ。分冊版はイギリスと合冊で「Atlas of Britain & Ireland」となる。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2009/01/i-0b3a.html

・S.K. Baker氏による鉄道地図帳
 アイルランド島は1:495 000で全線全駅を表示。コークCork、ダブリン、ベルファストは拡大図あり。数年おきに改訂版が出されるので、直近の状況がチェックできる。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/11/iv_6a46.html

ウェブ版では、鉄道会社のサイトで提供されているものしか見当たらなかった。

Blog_ireland_railmap_hp1 アイルランド鉄道
http://www.iarnrodeireann.ie/your_journey/intercity_map.asp
旅客営業している全駅を結んだだけの簡素な鉄道地図だ。ダブリン近郊と、南岸のコークCork~コブCobh間の支線は別図になっている(左メニューで選択)。ただし、このサイトは旧版かもしれない。下記のサイトでは、時刻表検索Reservations & Timesでポップアップ表示される。また、起終点を選択するときにも使われている。
http://www.irishrail.ie/

Blog_ireland_railmap_hp2 北アイルランド鉄道
北アイルランド鉄道の持株会社のブランド名であるTranslinkのサイトに、路線図NI Railways Route map(PDF)へのリンクがある。地図は系統を色分けしたもので、実際の距離は考慮されていない。
http://www.translink.co.uk/translinknetwork.asp
また、直接のURLは次のとおり(リンク切れご容赦)。
http://www.translink.co.uk/resources2005/20060821routemapnir.pdf

ヨーロッパ全域の鉄道地図を提供するTrainspotting Bükkesのイギリス諸島編も参照。
http://www.bueker.net/trainspotting/maps_british-isles.php

★本ブログ内の関連記事
 イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版
 ヨーロッパの鉄道地図-ウェブ版

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