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2009年7月19日 (日)

オランダの鉄道地図 I

オランダの列車というと、筆者などはドッグノーズと呼ばれた黄色の電車を思い浮かべる。丸く膨らんだ前面の形状が犬の顔を思わせるのでそのあだ名がついているのだが、一世を風靡したこの形式も、スマートな新車に押されて現在は主に各停に運用されているようだ。

しかし注目すべきは顔の形ではなく、これが動力分散型の電車だという点だ。日本では特急でも電車が用いられるが、ヨーロッパの郊外列車や急行列車は、電気機関車が動力を持たない客車を牽引するスタイル(動力集中型)をとることが多い。その役を敢えて電車に担わせているのは、日本のように短距離高頻度の列車ダイヤが組まれていることの証しだろう。

事実、オランダはヨーロッパで最も鉄道が利用されている国で、単位面積当りの路線の密度はベルギーやドイツに及ばないが、旅客輸送密度では鉄道王国スイスをも凌いでいる。発車時刻が等間隔のいわゆるパターンダイヤが採用され、国内のインターシティは特別料金が不要であるなど、気軽に使える鉄道が強く意識されている。

Blog_netherlands_railmap1 オランダ2800km余の鉄道路線を表示している鉄道地図(オランダ語でスポールカールト Spoorkaart)を見てみよう。印刷物で筆者が知っているのは、公式時刻表 Spoorboekje の添付地図ぐらいだ。

手元にあるのはあまりにも古い1988年版だが、表紙のすぐ後ろに折りたたんだ鉄道地図がはさんであり、拡げると本のサイズの約6倍(縦41.5cm横37.5cm)の大きさになる(右写真、右上は時刻表表紙)。路線網が水平、垂直および斜め45度の直線に単純化された、いわゆるスキマティックマップ(位相図)だ。オランダの鉄道のシンボルカラーというべき濃い黄色の地の上に旅客用の全線全駅が表示され、路線ごとの時刻表番号が添えられている。ラントスタット Randstad と呼ばれるアムステルダム Amsterdam、ロッテルダム Rotterdam、ハーグ(デン・ハーフ Den Haag)、ユトレヒト Utrecht の4大都市圏は、拡大図がある。

ウェブサイトのほうはなかなか充実しているので、2回に分けて紹介しよう。

Blog_netherlands_railmap_hp1 オランダもインフラ管理と列車運行の事業者を分ける上下分離が実行されているが、後者の旅客輸送の大部分を担当するのがオランダ鉄道 Nederlandse Spoorwegen (NS) だ。NSのサイトでは、時刻表添付と同じデザインを用いた地図がPDFファイルで提供されている。

■参考サイト
オランダ鉄道 http://www.ns.nl/
トップページの Service > Folders over diensten (= Brochures on service) > Spoorkaart van Nederland

図の左上にあるタイトルは、直訳すると「オランダの運賃単位地図 Tariefeenhedenkaart van Nederland」だ。運賃単位 Tariefeenheid は基本的には営業キロ数なのだが、若干補正があるらしく、より正確に言うなら運賃計算キロだ。地図上の各駅間に書かれた数字がそれを表している。

20年前の路線図と比較すると、変化が2点目に付く。1つは、ローカル線にNS以外の会社が運行する区間が出現していることだ。北部フローニンゲン州 Groningen とフリースラント州 Friesland のアリーヴァ社 Arriva、東部ヘルダーラント州 Gelderland のシンテュス社 Syntus、南東部リンブルフ州 Limburg のヴェオリア交通社 Veolia Transport(もとのコネックス Connex)などが、NSの運行路線とは色を変えて示されている。多くは国際交通企業で、路線バスなどと一体で地方の公共輸送を請け負っているのだ。

もう一つは、首都アムステルダムからベルギー国境へ、一直線に南下する南高速線HSL-Zuidの存在だ。地図ではHST(高速列車 Hogesnelheidstrein の略)と記されている。パリから来るタリス Thalys がここを疾走することになるのだが、2009年中に運行予定と注釈があるものの、現時点ではオランダ領内はまだ開通していない。

なお、上記ページで並べて紹介されている「オランダの運賃単位地図に付随する詳細図 Detailkaarten behorende bij Tariefeenhedenkaart van Nederland」は、4大都市部の拡大図と全国図で、印刷図では先述の図の裏面に配置されるものだろう。全国図には、主要駅間の運賃単位が記されている。

Blog_netherlands_railmap_hp2 一方、独立系の鉄道旅行情報サイト Treinreiziger.nl では、趣向の違う鉄道地図(PDF)が提供されている(Treinreiziger は英語なら train traveler の意)。オランダ国内の鉄道旅行に持っていくとすれば、NSの運賃地図よりこちらのほうだろう。なぜなら、これはオランダの旅客列車のルートを一覧できる優れものだからだ。

■参考サイト
Treinreiziger.nl   http://www.treinreiziger.nl/
トップページ > Reisinformatie > Spoorkaart >
文中の "De spoorkaart is vanaf nu te downloaden op treinreiziger.nl"(意味は「鉄道地図は treinreiziger.nl ですぐにダウンロードできる」)、または "U kunt de kaart hier downloaden"(同「ここからダウンロードできる」)のリンクから

地図の裏面(PDFの2ページめ)に「鉄道地図をどう使うか Hoe werkt de Spoorkaart?」という説明文がある。それによると、「この地図では、線の色を追うことによって、列車系統がどこを走るかを容易に確かめることができる。線が、ある駅で途切れていればその系統の起終点であり、駅を通り抜けていれば経由地だ。線の太さで、その列車系統の運行頻度(月~金、およそ7~19時の間。凡例の説明では7~20時)がわかる。夜間や週末には列車数が削減されることがある。すなわち、ラントスタット(4大都市圏)の頻発区間では30分、ラントスタット圏外のより本数の少ない区間では少なくとも1時間毎になる。この地図では発着時刻を示していないので、時刻表の代用にはならない。旅行計画にはNSなどのサイトを参照のこと。」

説明中の、線の太さで運行頻度を表す方法については、図の凡例で具体的に示されている。すなわち、細線は1時間に1本(per uur = per hour)、中線は同2本、太線は同4本、そして中線の破線は通勤通学のピーク時のみ2本(alleen in spitsuren = only in peak)などとなる。

列車を利用する際に、目的地まで直行できるのか、できない場合はどこで乗り換えるのかは大きな関心事だ。筆者はこれを見て、国際空港のあるスヒポール Schiphol からアムステルダム中央駅を経由せずに東部の都市へ行く系統がいくつも設定されていることを初めて知った。昔の感覚でどの列車でも中央駅を通ると信じて乗っていたら、きっと慌てたことだろう。この地図が現地で容易に入手できるのかどうかは知らないが、返信用封筒を同封して請求すれば、印刷版の送付もしてくれるようだ(ただし、国外への対応は不詳)。

次回は貨物輸送とインフラ管理部門の鉄道地図を紹介する。

★本ブログ内の関連記事
 オランダの鉄道地図 II

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

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