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2009年6月 7日 (日)

フランスのワイン地図

フランスという国は、温暖な気候のもと、豊かな農産物に恵まれている。中でも種類といい、品質といい、名実ともに世界の特産品の地位を確立しているのがワインだ。生産地域は海岸から内陸まで全土に広がっていて、その分布を表した地図を眺めながら、グラスを傾けるのも一興だろう。このような地図はフランス語でカルト・デ・ヴィニョーブル carte des vignobles と呼ばれ、直訳すればブドウ畑地図だが、以下の記述ではワイン地図(ワインマップ)としておく。

Blog_france_winemap1 フランス国土地理院 IGN のカタログには10点ものワイン地図が含まれている。そのうち、「フランスのワイン Vins de France」(写真左)は全国版で、縮尺1:1,000,000(100万分の1)で統一されたフランス発見 Découverte de la France シリーズの1点だ。

大判用紙全面を使ったメインの地図には、主要道路や水部(川、湖)、地名を表示したベースマップの上に、アペラシオン appellation(正確には原産地統制名称A.O.C.)ごとの栽培地の範囲が塗り分けられている。余白には生産地域別のアペラシオン一覧があり、白、ロゼ、赤の別とともにワイン、スパークリングワイン vin effervescent、ヴァン・ドゥー・ナチュレル vin doux naturel の種類がわかる。さらに、仏、独、英の3ヶ国語によるセパージュ cépage(ブドウの品種)の紹介や、生産地域別に1985~2005年の作柄を20段階で評価したヴィンテージ・チャートも用意されていて、参考地図の域を超えて楽しめる。

IGNの残り9点は生産地域 région viticole 別の地図で、ボージョレ Beaujolais、ジュラ Jura、シャンパーニュ Champagne、トゥレーヌ Touraine、プロヴァンス Provence、ブルゴーニュ Bourgogne、アルザス Alsace、ボルドー Boldeaux、コート・デュ・ローヌ Côtes du Rhône と主な産地を揃えている。いずれも等高線かぼかし(陰影)の地勢表現を施したベースマップに、アペラシオンの詳しい分布を示したものだ。

手元にあるブルゴーニュのワイン地図を例に紹介すると、タイトルは「ブルゴーニュのワイン-コート・ドール Vins de Bourgogne - Côte d'Or」(写真右)。縮尺1:55,000で、コート・ドール(黄金の丘の意、斜面のブドウ畑が一斉に黄葉する様から)、あるいはラ・グランド・コート La Grande Côte(大いなる丘)と呼ばれるディジョン Dijon 南郊からボーヌ Beaune、シャニー Chagny にかけての一帯を掲載範囲とする。

当地方は畑を厳格に格付けしていて、優れたものから順にグラン・クリュ grand cru(特級)、プルミエ・クリュ premier cru(一級)、村を示すコミュナル communale、それ以外の地域のレジオナル regionale と区別がある。地図でもこれを赤、白の別と組み合わせて塗り分けている。この縮尺ならアペラシオンごとの畑の位置まで特定できるので、たとえば高名なシャンベルタン Chambertin やロマネ・コンティ Romanée-Conti の区画がどこにあるのかを探すのも訳はない。20m間隔の等高線と照らし合わせると、特級畑は、栽培地の中でも山裾の緩斜面に狭い帯状に分布していることが読み取れる。テロワール terroirs(産地の個性)の理解にも役立つだろう。

国の測量局がこのような地図群を刊行するというのは、ワイン文化が浸透したフランスならではだが、地図の表紙のロゴが示すように、地図原版は、ワイン地図を専門とするエディシオン・ブノワが提供したものだ。

■参考サイト
IGN boutique loisir(オンラインショップ) http://loisirs.ign.fr/
 検索窓(Recherchez=Searchボタンの左)で、"vins"を検索するとよい。

Blog_france_winemap2 エディシオン・ブノワ Éditions Benoit(ブノワ出版社)自体からも、同じようなワイン地図が目にも鮮やかな表紙を付けて刊行されている。IGNのようにフランス全図(正式名は「原産地別フランスワイン及びブランデー地図Carte de France des Vins et Eaux-de-Vie d'Appellation d'Origine」)や生産地域ごとの地図があるが、内容はIGNと全く同じというわけではない。

フランス全図(写真左)は使われているベースマップも生産地表示のデザインも別物だし、ブルゴーニュ編(写真右)はIGNの地形図データベースによる非常に詳細な等高線が入れてある。よく見ると、等高線の版が他の版とは1cmほどもずれていて役に立たないのだが、ともあれブノワのオリジナル仕様であることは確かだ。公式HPには地図の縮小画像が挙がっているから、およその雰囲気はつかめるだろう。

写真は折図 carte pliée だが、もともとポスター、つまり壁貼り用として製作されたものなので、折らずに丸めて筒に入れたもの carte poster や、額縁つき carte contrecollée sur support bois でも販売している。白地図に色だけ置いたものとは違い、栽培地をはぐくむ地勢が浮かび上がって見栄えがする。好みの生産地の地図を部屋のインテリアにすれば、客人との話が弾みそうだ。

IGNと重複しないものでは、「フランスワインの品種地図 Principaux Cépages des Vignobles de France」や「ヨーロッパワイン地図 Vignobles d'Europe」があるが、極めつけは、1冊にまとめた「フランスワイン大地図帳 Grand atlas des vignobles de France」だ。18の生産地域の450を超えるアペラシオンの地図とデータ、4000の生産地のリストと場所が掲載された320ページの大作で、フランスワインマップの決定版となっている。

■参考サイト
エディシオン・ブノワ http://www.benoitfrance.com/
 自社製品のオンラインショッピングが可能。

Blog_france_winemap3 市街図で知られたブレー・フォルデクス社Blay Foldexにも、「フランスワイン地図 Carte Vins de France」がある。両面使用で、片面に生産地域ごとの拡大図をコラージュし、もう片面は一般的な全国道路地図を使った索引図になっている。

拡大図のデザインはブノワとは一線を画したおしゃれなスタイルで、壁貼りしても美しいし、IGNでは省かれ、ブノワでも軽く扱われているブランデーの二大産地、コニャック Cognac とアルマニャック Armagnac が、ワインと同じ詳しさで図示されているのが特徴だ。特定の産地にこだわる人でなければ、1枚で全土のアペラシオン分布が把握できるブレー版はお薦めだ。

■参考サイト
ブレー・フォルデクス社 http://www.blayfoldex.com/
 Nos produits のページで"vins"を検索するとよい。購入はアマゾンフランスやFNAC(フランスの有力ショップ)にて。

ヴォーヌ・ロマネ Vosne-Romanée 付近のIGN 1:25,000地形図
http://www.geoportail.fr/visu2D.do?
 ロマネ・コンティの畑は、村の西はずれ「260」の数字(標高260m)が書かれた一角にある。

フランス政府観光局オフィシャルサイト(日本語) http://jp.franceguide.com/
 テーマ別の旅 > ワインをめぐる旅
 少々画像が粗いが、ワイン地図も見ることができる。

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