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2009年5月24日 (日)

フランスの1:25,000地形図

国土全域をカバーしていて、かつ市中で容易に入手できる最大縮尺の地形図が、1:25,000(2万5千分の1)という国は数多い。中でもフランスはこの縮尺を、汎用という名の漠然とした用途ではなく、旅やレジャーといった具体的な需要に応じられる地図へと特化させた国の一つだ。

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1:25,000地形図表紙
(左)ニース 1982年版セリ・ブルー
(中)パリ 1993年版TOP25シリーズ
(右)モンテ・ドーロ(コルシカ島) 2004年版TOP25シリーズ

発行元である国土地理院 IGN Institut Géographique National(IGN)の意思は、図郭の切り方に強く現れている。通常、1:25,000の図郭というのは、1:50,000を4分割したものになる。測量成果から基本図(たとえば1:25,000)を完成させ、それを縮小編集する形で小縮尺図(1:50,000)を作成するという手順からすれば、こうするのが合理的だ。しかし、フランスでは、両者の対応関係が限定的になっている。都市や活動圏ができるだけ1枚に収まるように、自由な図郭設定が進められてきたからだ。

少々煩雑になるが、まず基準となる1:50,000の体系を説明しておこう。1:50,000の図郭は東西0.40gr、南北0.20grの範囲だ(gr はグラードと読む。下注参照)。図番は東西をローマ数字、南北をアラビア数字の組合せで表わしている。パリ起点の西経9gr(ブルターニュ半島沖を通る子午線)に左辺を接する図郭をIとして、東へ順にII、IIIと振り、北緯57grに上辺を接する図郭を1として、南へ順に2、3と振っていく。これにより、例えばパリParis図葉の図番は東へ23、南へ14のXXIII-14となる。後にセリ・オランジュ Série Orange の名称で折図にする際に、アラビア数字の4桁表記に改めて2314としている。

*注 グラードは、フランスが提唱した10進法による角度の単位で、直角の1/100を1grとする。1度≒1.11grとなる。メートル法は当初、北極から赤道までの子午線長(100gr)の1000万分の1を1mと定義したので、子午線上では1grが10万m=100kmに対応するはずだった。したがって1:50,000図郭の南北0.20grは距離にして20kmぶんだ。東西0.40grの距離も赤道直下では40kmになるはずだが、極に向かうにつれ逓減する。

1:25 000はもともと、この1:50,000の図郭を縦横とも2分割した東西0.20gr、南北0.10grの範囲で、図番は、対応する1:50,000の図番の後に、左上から右下へ1-2、3-4のように振っていた(例 XXIII-14 1-2)。しかし、セリ・ブルー Série Bleue として折図化するに当って、取扱いの効率も考慮し、南北の隣接図葉を接合した大判に変更した。1面は海岸部など一部を除き、東西0.20gr、南北0.20grの範囲となり、図番も 2314ouest(ouestは西の意、近年は2314Oと略す)、2314est(同じく東、2314E)となった。これが現在も踏襲されている基本体系だ。

複雑なのは、その後、この一部が図郭をさらに大型化したTOP25シリーズに置き換えられてきたことだ。これは旅行情報を充実させた特別版で、ヴォージュ山脈からアルプス、プロヴァンスにかけての東縁部、パリ周辺、ローヌ川、中央山地、ピレネー山脈、大西洋沿岸、地中海岸、コルシカ島など、およそフランスの旅行適地を網羅するように設定された。図郭の大きさはセリ・ブルーの2倍弱にも相当し、隣接図葉と一部重複させていることが多い。図番は、末尾がT(例:2314OT)になる。

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ノルマンディー地方の索引図
(左)旧図とセリ・ブルーが混在していた1987年
(右)沿岸部がTOP25で揃った2003年

TOP25は、1:100,000(TOP100)と並んでIGNの地図スタイルを象徴するシリーズといえる。凡例を英語併記にして国際性に配慮し、プロセスカラー(CMYK)による印刷で多色化して、地図記号の識別度を高めた。たとえば道路を種別で塗り分け、地勢表現にぼかし(陰影)を併用し、GR(長距離歩道)をはじめとするハイキングルート、スキールート、山小屋、キャンプサイト、ウォータースポーツエリア、観光名所などを赤や紫の目立つ記号で加えている。情報の提供元は全国や地域の観光関連組織で、表紙には組織のロゴが配されて、信頼性をアピールする。

1987年のカタログで「フランスを2,000面で La France en 2000 cartes」と紹介されていた1:25,000地形図は、TOP25の登場により、総面数が1800以下にまで減少した。今後これらすべてをTOP25に揃えるつもりはないようだが、残ったセリ・ブルーにも改革の波が及んでいる。

筆者が偶然購入したカルカソンヌ図葉(2345E Carcassonne)は、ベースマップがデジタル化され、印刷もプロセスカラー方式に変わっていた。図式の改定で文字フォントや集落描写が一新されたばかりか、驚いたことにTOP25と同様、道路の塗り分け、ぼかし(陰影)の付加、GRルートの表示がなされ、GPS互換のグリッドも入っている。もはや、TOP25との相違点は、図郭の大きさと赤や紫で示される旅行情報の有無ぐらいだ。参謀本部地図 Carte d'État-Major 時代を引きずっていた数十年前から1:25,000の変貌過程を振り返ってみると、めざましい進化に隔世の感を禁じえない。

■参考サイト
IGN  http://www.ign.fr/
IGN地図の閲覧サイト http://www.geoportail.fr/
 画面上で縮尺 Échelle が1:16,000のときに1:25,000の画像が使われている。

なお、TOP25には、両面印刷でサイズを縮小した「ミニ・カルト・ド・ランドネ Mini Cartes de Randonnée(ハイキングミニマップの意)」というシリーズもあり、現在、アルプス、ピレネーおよびフォンテーヌブローの9面が刊行されている。

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コメント

フランスのTOP25の地図を入手するには、どのような方法がありますか。
ネットで注文できるとありがたいのですが。

ブログをご覧くださりありがとうございます。

お尋ねのTOP25購入の件ですが、
最も広範に入手できるのはIGNの購入サイトです。
http://espaceloisirs.ign.fr/boutique/
"TOP25" で検索
索引地図で収録範囲を確かめられるので、買ったのに見たい所が載ってなかったという失敗を回避できます。また自社販売なので最安値になると思います(送料別途)。サイト表記はフランス語のみですが、日本へも問題なく送ってくれます。

英語版サイトではロンドンの老舗地図商 Stanfords などが代表的です。
http://www.stanfords.co.uk/
"IGN TOP25" で検索
ただ地図商経由の場合、価格が高くなるのはやむをえません。

日本のショッピングサイトではほとんど扱っていないようです。
東京神田の「マップハウス」で取り寄せてもらえますが、時間がかかるかもしれません。

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