« ギリシャのラック式鉄道 オドンドトス | トップページ | フランスの道路地図帳-ブレー・フォルデクス社とIGN »

2009年4月30日 (木)

フランスの道路地図帳-ミシュラン社

Blog_france_roadatlas_michelin1
ミシュラン
フランス道路地図帳
2005年版

旅とグルメのガイドブックで抜群の知名度を持つミシュラン Michelin は、フランスの道路地図の分野でも代表的存在に違いない。赤表紙のレストランガイド(ギド・ルージュ Guide rouge、レッドガイド)、緑の旅行ガイド(ギド・ヴェール Guide vert、グリーンガイド)に対して、橙色、後に黄色がミシュラン地図の目印だ。もっともそれはフランスの区分図に限っての話なのだが、売れ筋のフランス道路地図帳も代々、黄系統の表紙をまとっている。

そもそもタイヤ会社がなぜ、旅行書や地図の出版を兼業しているのだろうか。会社の起源は、フランス中部、クレルモン=フェラン Clermont-Ferrand の、農機具と子ども用のゴムボールを造る小さな工場だったそうだ。現在の社名は、1889年にミシュラン兄弟がその経営を引き継いだときに改称された。ミシュランは、ダンロップが先に実用化していた自転車の空気タイヤを着脱可能なものに改良したが、これを履いた自転車がレースで優勝したことから一躍注目を浴びる。時代は自転車から自動車の普及へと向かっていた。会社はゴムタイヤの製造でその波に乗り、海外に次々と工場を展開するまでに成長する。

最初のレッドガイドは、販売促進策の一つとして1900年に作成され、自動車旅行者向けに市街図やホテルリストを載せた35,000部が無料で配られた。これは好評を博したと見えて、地図に特化したシリーズの発刊が計画される。試作を経て、縮尺1:1,000,000(100万分の1)フランス地図4面が分売の形で出たのは1907年だった。続いて1910~13年には、フランス全土を47面でカバーする1:200,000道路地図が完成した(1919年、ヴェルサイユ条約によるアルザス、ロレーヌの帰属で1面増えて48面に)。さらにブリテン諸島、イベリア半島と、対象地域が国境を越えて拡大され、道路地図「カルト・ミシュラン Cartes Michelin」のブランドが確立していく。

Blog_france_roadatlas_michelin3
シャモニー付近
http://www.viamichelin.fr/web/Cartes-plansより

ミシュラン地図の第一の特徴は、色使いにメリハリがあることだろう。文字や道路のくくり(縁取り)に使われている黒色といい、主要道路を識別する赤色といい、彩度が高くて訴求力がある。ほかの地図でも同じだろうと思われるかもしれないが、並べてみればトーンの微妙な違いで全体の印象が変わることが理解されるはずだ。そのうえ道路網、特に主要道路は太く強調されているので、道路地図としての骨格を重視したデザインということができる。

それに対して、地図のベースをなす地勢表現については、省かれた等高線を補うように、山岳地域の起伏がぼかし(陰影)で描かれている。森林を表す緑の網掛けや淡いブルーの氷河と溶け合って、アルプスやピレネーの山並みが地図の背景として浮かび上がるしかけだ。

よく見ると、道路上の峠や分岐点にはかなりの頻度で標高点が打たれている。勾配も度合いに応じて3段階に表示されていて、自転車はもとより、クルマの馬力が小さかった時代には有用な情報だったことを想像させる。立体交差の高さ制限、橋などの重量制限の表示なども、他ではあまり見かけない注記だ。反面、レジャーや観光地に関する記号は小さくて目立たないので、全体として、クルマを走らせるために必要な情報を提供するという編集方針が見えてくる。

なお、筆者は2005年版をもとに記述しているが、最新版では、いわゆる黒抹家屋で描かれていた集落の表示が薄いピンクの網掛けに差し替えられ、まるで床屋に行ったかのように、さっぱりと垢抜けした印象になった。

ミシュランの道路地図帳 Atlas routier et touristique / Tourist & Motoring Atlas を買おうとして迷うのは、同じフランス全国版が何種類もあり、手に取らない限り、違いが分かりにくいことだ。さらに、フランス本国で刊行されたものとは表紙デザインが異なるイギリス刊行版もある。通常、判別のポイントは本のサイズ(判型)と縮尺なのだが、ミシュランの縮尺は昔から1:200,000と決まっているし、判型もフランスの2009年版ではA4に統一されている。カタログで見る限り、相違点は綴じ方とオプション記事の有無らしい。

Blog_france_roadatlas_michelin2
左から、スパイラル綴じ標準版、ハードカバー版、マルチフレックス綴じ版、ペーパーバック版、コンパクトスパイラル版

以下、フランス本国版で紹介すると、写真左端のスパイラル綴じ reliure spirale(定価15.90ユーロ)が最もよく売れているという標準版だ。2番目のハードカバー relié(29.90ユーロ)は観光やホテル・レストランの情報を付加した内容充実版。3番目のマルチフレックス綴じ multiflex(21.90ユーロ)は裏折りもできる特殊な綴じ方。4番目のペーパーバック broché(11.90ユーロ)は、他社に対抗するために内容を絞り込み、低価格を前面に出して、レサンシエル l'essentiel(エッセンスの意)と名づけている。右端のコンパクトスパイラル compact spirale(15.90ユーロ)は最前者と中身はおそらく同じだが、表紙に format boîte à gants(車内の小物入れに入るサイズ)とあるとおり、各ページを2つ折にして横幅を縮めたものだ。

地図自体はどれも同じ内容なので、筆者は4番目の低価格版で十分だと思う(写真は同社ショッピングサイトhttp://www.michelin-boutique.com/ より)。日本のサイトで購入するなら、アマゾンや紀伊國屋BookWebで"Atlas Routier France"か"France Motoring Atlas"を検索するとよい。検索結果には旧年版も混在しているので注意。また、ミシュラン地図はウェブでも閲覧することができるので、下記サイト viamichelin.com を参照されたい。

■参考サイト
viamichelin.com(英語版) http://www.viamichelin.com/
 mapタブで、オンライン版のミシュラン地図が検索できる。ただし、ミシュラン様式が見られるのは旧西欧諸国に限られ、なかでもフランスはもう一段、大きい縮尺が用意されている。

ミシュラン刊行物紹介
http://www.michelin.fr/(フランス語)または http://www.michelin.co.uk/(英語)
Cartes et Guides (Maps and Guides) > Cartographie

ミシュランガイド・地図収集家協会 ACGCM (愛好家サイト)
http://www.acgcm.com/

★本ブログ内の関連記事
 フランスの道路地図帳-ブレー・フォルデクス社とIGN
 フランスの1:100,000地形図
 イタリアの旅行地図-イタリア旅行協会
 ドイツの道路地図帳

« ギリシャのラック式鉄道 オドンドトス | トップページ | フランスの道路地図帳-ブレー・フォルデクス社とIGN »

西ヨーロッパの地図」カテゴリの記事

道路地図」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ギリシャのラック式鉄道 オドンドトス | トップページ | フランスの道路地図帳-ブレー・フォルデクス社とIGN »

2019年1月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

BLOG PARTS


無料ブログはココログ