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2008年12月11日 (木)

オーストリアの旅行地図-コンパス社

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コンパス社の地図
「ザルツカンマーグート北部」
(左)地図表紙
(右)添付のルートガイド

「自然に親しむ人がみな、わが社の製品を使ってよかったと思うように」 50年以上にわたって旅行地図を送り続けてきたコンパス Kompass 社のモットーが、公式サイトの1ページに掲げられている。

同社のルーツは1946年、ドイツのミュンヘンで設立された地図研究所だ。7年後の1953年、羅針盤や方位磁石を意味するコンパスのブランド名で、最初の旅行地図が刊行された。その後、本社はオーストリア西部、チロル州インスブルック Innsbruck, Tirol に移り、ドイツの旅行情報業界を束ねるマイアデュモン Mairdumont 出版グループの傘下に入った。

現在、旅行関連地図のタイトル数は500に達して、この分野ではヨーロッパ最大規模となっている。索引図を見ると、北は北海沿岸から南は地中海までいくつもの国境を越えるエリアをカバーしているばかりか、中心となるアルプスとその周辺では、各種の縮尺が用意され、登山からサイクリングまで幅広いニーズに応えている。

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索引図の一部(2015年2月閲覧)

ところが、これほど世に出ているコンパス地図が、筆者の地図棚にはほとんどない。なぜなら長い間、前回紹介したフライターク・ウント・ベルント社(F&B)の亜流程度にしか考えていなかったからだ。記憶は定かでないが、10年以上前にはコンパスも、F&Bに似た等高線間隔100mのいささか精度が粗い地図を売っていたはずだ。

アルプスを擁する国々は官製地図の水準が非常に高いうえに、日本と違ってハイキングルートまで図示されている。民間地図の存在意義は、実用情報をより一層充実させることにしか見出せない。どの社も、詳しい旅行ガイドを地図の裏面に載せたり、別冊付録として付けたりして、懸命に官製図との差別化を図っている。しかし、肝心のベースマップがあまりに見劣りするようでは、もっぱら鑑賞派である筆者の購買意欲を刺激するには足りないのだ。

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シャーフベルク山付近
(同社地図閲覧サイト
Produktfinder より)
(c) 2015 KOMPASS-Karten GmbH

この項を準備するにあたり、改めてコンパス社の近刊を二三購入した(上の写真はその一つ)。地図を拡げるやいなや、その進歩ぶりに、古い記憶は捨てなければならないと直感した。記号がスリムになり、地勢表現もすっきり読みやすく、ずいぶんと垢抜けた感じがする。

オーストリアの山岳地域の場合、縮尺1:50,000の等高線間隔は40mと少々粗いが、視覚的に許容できる範囲だ。1:25,000は中間に1本足して20mとなり、官製並みの精度に上がる。官製図と比較観察すると、等高線は細かい屈曲もほぼ一致し、露岩や崖地の手描き描写は完全に同一だ。つまり官製図の測量成果をそっくり利用しているわけで、美しいと感じたのも道理なのだ。

そのうえで観光に関する情報量は、官製図を軽く突き放している。ハイキングルートが赤の線で、難易度によって3段階に分けられるほか、スキールートは水色、サイクリングルートは黄緑、マウンテンバイクのルートは緑で示される。もちろんルート番号や名称も入っている。表示状況を同じ地域のF&B地図と照合したが、およそ相違はないようだ。官製図やF&Bで実線1本で描かれる小道を、黒のくくり(縁取り)に白抜きした道路記号としたのは、独特の工夫だろう。これにハイキングルートの赤線をぴったり沿わせることで、道路記号を潰さず緑の中に浮かび上がらせることに成功している。

地図記号の種類では、コンパスがF&Bをもしのぐ。数の多さに配慮して、凡例がジャンル別にくくられているのも親切だ。交通(車道、駐車場など)、スポーツ・余暇(競技別ピクトグラム)、ハイキング・サイクリング道(上述)、旅行関連(休憩所、山小屋、見晴台など)、地勢・植生、その他(境界など)と整理されている。凡例の使用言語は、官製(UTM版)が独・英、F&Bが独・英・仏、コンパスはこれにイタリア語を加えて4ヶ国語としている。アルプスの南側にも刊行範囲を拡張していることと関係があるのだろう。

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凡例の一部

今世紀に入り、コンパス社は、GPS対応に絡めて地図のデジタル化を積極的に推し進めてきた。オーストリア周辺は印刷図もすでにこの新版に置き換わり、これが旧来のイメージをがらりと変える要因になっている。さらに地図の裏面に美しい鳥瞰図(パノラマ)を載せ、ルートを説明するフルカラーの小冊子まで添付するサービスぶりを見せる。

アメリカの地図専門店オムニマップ Omnimap は自社サイトの中で、ハイキングや旅行情報が付加されている分、官製地形図以上にコンパスをお薦めする、と言っている。官製図は特定の用途に限らない汎用図としての役割があるので、一概には言えないのだが、このように内容が進歩してくると、いくら官製図を評価する人でも、野山歩きの必携用具に加えないわけにはいかない。

同社サイト(下記参考サイト)に、地図索引図と若干の地図サンプルが掲載されている。

■参考サイト
コンパス社 http://www.kompass.at/

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