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2008年11月27日 (木)

新線試乗記-京阪中之島線

11月のある日、京都、出町柳(でまちやなぎ)駅の地下ホームで、2番線に入る中之島線直通の快速急行を待っていた。京阪電鉄中之島線2.9kmは、大阪市の心臓部ともいうべき中之島を東西に貫く新たな鉄道として、今年(2008年)10月18日に開業した路線だ。これにあわせて、京阪は京都からの直通列車に新車3000系を投入した。紺(エレガントブルー)と白(アーバンホワイト)の塗り分けに銀色の細い帯を巻いた、これまでにない配色の車両だ。沿線で見かけるたびに、新しいルートが通じたことを強く印象づける。

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(左)3000系電車 (右)普通列車にも新線の案内が

閑散としたホームから乗り込み、ドア間の1-2列のクロスシートが並ぶ一角に腰を下ろした。新線開業に伴うダイヤ改正と同時に、これまで京都地下鉄と同じだった駅名が改称されている。「神宮丸太町(じんぐうまるたまち、神宮は平安神宮の意)」、「祇園四条(ぎおんしじょう)」、「清水五条(きよみずごじょう)」と、著名観光地の最寄りをアピールした名称だ。呼び慣れた「京阪四条」でもよさそうなものを、と最初は違和感を抱いたが、改めて祇園の文字が入った駅名標を眺めると、なるほど舞妓さんでも見かけそうな華やかさが漂ってくる。地元にいてもそう思うのだから、市外からの集客にはきっと効果があるのだろう。確かに祇園は駅から至近だが、清水五条駅から清水の舞台まで歩くと優に20分はかかるので、ご注意を。

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改称された祇園四条駅と8000系ダブルデッカー

快速急行は伏見の狭い町並みをすり抜け、宇治・木津川の堂々たる鉄橋を渡り、男山の裾野を急カーブの連続でかすめて、枚方市に到着する。「特急に連絡します」とアナウンスがあり、向かいのホームに緑色6000系が待っていた。いつ抜かれたのだろうと首を傾げたが、そもそも最優等列車が格下を待ち合わせるはずがない。これも今回設定された、快速急行を受けて走る枚方市~淀屋橋間のショートラン特急なのだった。

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路線図

寝屋川市から複々線の内側に入ったあとは、小気味よい走りっぷりを披露してくれる。京橋でJR大阪環状線を乗り越してまもなく、本線を分かつポイントを渡った。川幅いっぱいに水をたたえた大川(旧淀川)を右に見ながら、3階建ての高架から一気に地下まで降下すると、いよいよ分岐駅の天満橋だ。中之島方面の列車は、もと淀屋橋へ通じていた北側の2番線に入る。

中之島は古い淀川の中州だ。江戸時代には諸大名の蔵屋敷が軒を並べ、米や特産品を満載した舟がしげく往来していた。明治期に入ると廃れていき、跡地は公共施設に転用されたり、民間へ払い下げられた。東側一帯は今、市役所をはじめ、日銀、図書館、音楽ホールや新聞社などが建ち、公園も整備されて、大阪の中心と呼ぶにふさわしい。対する西側一帯は、老舗ホテルこそあるものの、地下鉄のルートからはずれているせいで、賑わいには遠かった。しかしここも近年、文化施設や商業施設が姿を表し、さらに再開発の槌音が響いている。この地域の交通軸として期待されているのが、この中之島線なのだ。

天満橋から終点までの間に、付近の橋の名をつけた駅が3つ設けられている。駅間距離は0.5~1.0kmとごく短く、列車はトラム並みにゆっくり進んでは、すぐ次のホームに到着する。トンネルは天井から柔らかい照明が差しているし、ホームの壁面は駅ごとにレンガ調、石、金属、木と材質を変える懲りようだ。東京の副都心線もデザインコンテストのようだったのを思いだした。街の中心部を貫く路線は、やはり造る側の気合の入れ方が違う。

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(左)中之島駅ホーム (右)出入口は川端に
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(左)堂島川沿いのプロムナード (右)木材を使ったスタイリッシュなデザイン

天満橋から7分、あっけなく終点中之島に到着した。このあたりは中之島地区の中心というより西端に近いので、駅名だけを頼りに来た人は戸惑うかもしれない。地上に出たあと、北岸に沿って東の方へ戻ることにした。堂島川の堤防の上には、木とガラスを組んだ中之島線の出入口がぽつりぽつりとが立ち現れる。わりあい近接しているせいで、まだ中之島駅が続いているように錯覚するが、もう隣の渡辺橋だ。地下への長い階段を下りてみると、改札の1階上は飲食店が軒を並べている。周辺がビジネス街だからだろう。ドトール、マクドナルド、サブウェイと来て、その次が551の蓬莱。関西の人にはおなじみの、おいしい豚まんを売る店だ。

大江橋では、大阪のメインストリート御堂筋と交差している。市役所と日銀大阪支店が通りをはさんで対峙する、オフィシャルな雰囲気の場所だ。御堂筋が渡る橋でも、南の土佐堀川にかかる淀屋橋は京阪や地下鉄のおかげで認知度が高いのに、北の大江橋は無名だった。駅名に取り上げられたことで、少しでも知名度があがるといい。

■参考サイト
中之島(大江橋)付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/34.694300/135.501100
中之島(大江橋)付近のGoogleマップ
http://maps.google.com/maps?hl=ja&ie=UTF8&ll=34.6943,135.5011&z=17

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アーチの組合せが美しい水晶橋

早くも中之島散歩のラストコースになる。この先は文化ゾーンで、中之島図書館、中央公会堂(中之島公会堂)と重要文化財に指定されたレトロな名建築が立ち並ぶ。ギリシャ神殿風の図書館といい、赤れんが洋館の公会堂といい、大阪が東京と互角に張り合っていた時代の勢いを髣髴とさせる。その向かいには、なにわ橋の出入口がある。これまで見てきた建屋とは全く違う扇形の現代的なデザインは、安藤忠雄氏の設計だ。コンコースも他にはない天井まで木張りの2層吹抜けで、周辺の雰囲気に負けない存在感を出そうと努めたようだ。

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中之島の名建築 (左)中之島図書館 (右)中之島公会堂

しかしここは土佐堀川をはさんで北浜の向いで、難波(なにわ)橋を渡ればすぐ京阪本線北浜駅がある。そのために運賃も、割増を取らずに本線と同額に抑えているが、立派な駅施設に見合う利用者が見込めるのかどうか。中之島線は全線の半分まで本線と100~200mの距離を並走している。実は筆者も、京都への帰りは淀屋橋まで少し歩いて、乗り慣れた本線の特急にした。競合路線のない西部地区は利用者を独占できるとしても、一帯はまだ開発途上で、すぐに大きな需要は見込めない。将来に向けての投資と割り切って当面は辛抱かと、特急の窓から、隣の3000系の艶やかな車体を見送りながら考えた。

■参考サイト
京阪中之島線
http://nakanoshima-line.jp/
http://www.keihan.co.jp/shinsen/

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 新線試乗記-東京メトロ副都心線

2008年11月20日 (木)

新線試乗記-東京メトロ副都心線

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路線図

「副都心縦断」、「よく行くところがつながる感じ」 開業が近づくにつれ、遠来の者にもキャッチコピーを目にする機会が増えた。「オフィス街を通らない初めての路線」、「急行が走る。所要時間は埼京線並み」、そしてついに「東京メトロ最初で最後の新線!」と、レアイメージで期待感を盛り上げる作戦は、決定的な段階にさしかかった。

東京メトロ副都心線は、今年(2008年)6月14日に池袋と渋谷の間8.9kmが開業し、和光市~渋谷20.2km全線が完成した。有楽町線と共用する和光市~小竹向原間8.3kmと、1994年から運行していた小竹向原~池袋間、通称 有楽町線新線の3.0kmという既開業区間に対して、今回は山手線の内側を並行する注目のルートだから、広報に力が入るのも当然だ。

東武東上線と西武池袋・有楽町線から列車が乗り入れ、4年後には東急東横線とも連結されて、横浜から埼玉南西部にかけてのネットワークの要となる。ふつう開業フィーバーが収まるまでは腰を上げない筆者が、1週間も経たない6月20日に早くも初乗りに出かけたのも、単に日程が空いたというより、前宣伝の刷り込みが効いたからに違いない。

新幹線品川駅から山手線で渋谷へ。地下へ降り、副都心線エリアに足を踏み入れると、曲面主体の未来的なデザインがお客を迎えてくれた。中央部に円く大きな吹抜けが設けられ、見下ろせばちらりと階下の線路がのぞく。これが全長80m、幅24mという安藤忠雄設計の巨大な「地宙船」であることは予習してきた。

エスカレーターでホームへ降り立つと、上下線はかなり離れていて、その間に使われていない2線がある。東横線がつながったときの備えだそうだ。現在はこの上に仮設の橋を渡して、上下ホーム間を行き来できるようにしている。しばし観察すると、路線図をしげしげと眺める人、構内にカメラを構える人、「俺、もう渋谷にいるんだよ」とケータイで話す若者と、開通に沸いた数日前の余韻が漂っている。ちょうど停まっていたのは、急行川越市行きだった。渋谷でステンレスに赤帯の東上線電車の姿に出会うのは目にも新鮮で、未知のルートが通じたことを実感する。

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渋谷駅 (左)改札を入って地宙船へ (右)未使用の中2線

ところで、東京メトロの公式サイトに、池袋~渋谷間の前面展望が楽しめるヴァーチャルトリップが用意されているのをご存知だろう。乗車レポートに関しては他に譲って、ここでは地理的な視点で眺めてみたい。

■参考サイト
東京メトロ副都心線 http://www.tokyometro.jp/fukutoshin/
上記トップページ > もっと知ろう副都心線 > 副都心線に乗って

動画を観察すると、ルートの前半と後半で対照的な特徴があることに気づく。話の順序で渋谷側から記すが、渋谷~新宿は勾配がなだらか(緩い上り坂)な代わり、くねくねとよく曲がっている。新宿~池袋間は逆に、カーブが少なく見通しがきくが、アップダウンの大きさが際立っているのだ。

■参考サイト
渋谷付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/35.659000/139.702600
渋谷付近のGoogleマップ
http://maps.google.com/maps?hl=ja&ie=UTF8&ll=35.6590,139.7026&z=17

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(左)新型10000系 (右)開業を祝うポスター

副都心線は、JR渋谷駅前から新宿三丁目、伊勢丹前の交差点を経て、目白通りの千登世橋をくぐる地点まで、明治通りの地下を走る。渋谷~新宿間でくねくねと曲がっているのは、もちろん地上の道路のせいだ。明治通りは昭和初期に整備された。当時でもこの区間は市街地化が進んでいたため、既存の道路を拡幅したり(宇田川ガード~竹下通りや千駄ヶ谷五丁目付近)、お屋敷を避けたり(神宮前一丁目付近。旧 池田邸、現在は東郷神社ほか)と、ルートの設定に苦心した結果が、頻出するカーブに表れているのだ。地形的には渋谷川とその支流の谷を遡る形なので、勾配は一方的な上りになる。

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北参道駅 (左)改札内の壁画 (右)ホーム壁は和のデザイン

一方、新宿付近では洪積台地の上に出る。古い地図で見ると、東西方向の街道に直交する形で里道が延びている。そのため、計画道路も地割に沿って、南北方向の直線状に設定できたのだ。

新宿三丁目では、丸ノ内線、都営新宿線と三つ巴で交差しあう。ヴァーチャルトリップでも立体的に図解されているように、縦方向で約6mしかない両線の隙間をかいくぐる離れ業を見せている。新参の路線はふつう一番下に造られるものだ。わざわざ土かぶりを浅くしたのは、商業施設が集中して利用客の最大の目的地になるので、せめて垂直移動の距離を減らそうという意図と見た。

台地はこの先、西早稲田と雑司が谷の間で、神田川が刻んだ深い谷によって分断されている。地上に用地の余裕があったなら、渋谷駅前の銀座線のように高架で渡したいところだが、現実は、谷の地下を走る東西線のさらに下へ潜らなければならず、かくして新宿三丁目のサミットから、途中40‰勾配を含む長い下り坂と再び上る勾配を強いられている。

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雑司ヶ谷駅 (左)千登世橋下出入口 (右)鬼子母神参道

地上からはうかがい知れないルート設計に思いを馳せながら、渋谷から急行に揺られた。池袋まで11分は速いといっていいのだろう。懸命に飛ばそうとして、叶わないじれったさを感じるルート前半に対して、後半は憂いを払拭するように走り、各停が退避する東新宿は気づかないまま通過してしまった。

きょうは1日券を買ってあるので、このまま和光市まで記念乗車してから、引き返して主だった駅に降りてみるつもりだ。新しい駅は、それまで縁遠かった風景を身近に引き寄せてくれる。雑司が谷の鬼子母神へ向かう風情ある並木道、いつもと違って北参道から巡る明治神宮の深い森...。華やかな役割が強調される副都心線だが、筆者には静かな散策の足という隠れた側面も見逃せない。

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