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2008年10月16日 (木)

オーストリアの衛星画像アトラス

地図帳(アトラス)というと、社会科の授業で使うような世界地図帳を思い浮かべる人も多いと思うが、筆者が探しているのは、もっと大縮尺の、等高線の入った地形図で構成された地図帳だ。区分図を1枚ずつ買い求めるよりコストや収納の点で断然優れているし、地名索引で位置の特定も容易だ。地形図地図帳 Topographic atlas は、ラインナップが充実しているオランダをはじめ、いくつかの国で刊行されている。しかし、今回紹介するような衛星画像と地形図を対比した地図帳は他に見たことがない。

Blog_austria_bildatlasオーストリア衛星画像アトラス Österreich Satelliten Bildatlas」、2004年に刊行された144ページ(見返しを含まず)のハードカバー本だ。巻頭言によれば初版は1988年で、今回はその改訂版だそうだ。判型は25×35cmで、ほぼB4サイズに相当する。編集はザルツブルク Salzburg の GEOSPACE出版、刊行はローター・ベッケル社 Lothar Beckel。

メインとなるのは、見開きに配置した衛星画像と地形図だ。左ページにランドサットが撮影した解像度15mのカラー画像、右ページに同一地域を描いた1:200,000官製地形図(前回紹介した)を原寸で収める。全土が48面に分割されている。

衛星画像は解像度が高くシャープに表現されているが、縮尺が小さいので、たとえば集落などはマスでしか捕らえられない。しかし、地表状態の大きな傾向をつかむにはこれで十分だ。地形図は、道路を色塗りして判別しやすくした「道路着色版 Ausgabe mit Straßenaufdruck」を使っている。以前の記事(「オーストリアの1:50,000地形図」)で観賞用に適していると書いた版だ。これを衛星画像と並べることで、情報の相互補完が可能になった。たとえば、地形図では地物や地名、道路の種別などが確認できる一方、衛星画像はありのままの地表、たとえば地形図には表しにくい地形や耕地のパターンもつぶさに読み取れる。

アトラスでは本編に先立って、「類型的土地景観 Typlandschaften」と題して、特徴のある地形や土地利用を地形図と衛星画像、時には俯瞰写真を交えて解説している。本編のハイライトを集めた21個のサンプルで、地図と実景の関係を感覚的に理解できるようにしているのだ。地図では表現しきれないような個所を二三、Googleの衛星画像を借りて再現してみよう。

ワインフィアテル地方 Weinviertel、レッツ Retz 付近
http://maps.google.co.jp/maps?ll=48.7743,16.01223&t=k&z=12
オーストリア東北部、チェコと接する地方だが、衛星画像だけでもどこに国境が走っているのかがわかる。耕地のパターンが北と南で全く異なるからだ。チェコやハンガリーは社会主義時代の集団農場の地割が広がり、オーストリアは零細な個人所有の農地が多い。縞模様は栽培作物を細分化しているためだ。

Blog_austria_bildatlas_detail1

ピンツガウ地方 Pinzgau
http://maps.google.co.jp/maps?ll=47.2294,12.6000&t=k&z=11
オーストリア・アルプスの一角。画面下で白く輝くのは3000m 級のホーエ・タウエルン山脈 Hohe Tauern。画面上の東西に延びる広い緑の谷はピンツガウ。地形模型のような画像だ。この直線状の谷筋は断層に沿って氷河が侵食した跡なのだろう。山脈から北に張り出した尾根が断層でそぎ落とされて、いわゆる三角末端面を見せている。左肩のスケールバーで画像をズームアウトしてみると、谷筋が直線状に東へ延々と続いている。目で追っただけでも250kmはある。

Blog_austria_bildatlas_detail2

ボーデン湖 Bodensee のライン川 Rhein 河口
http://maps.google.co.jp/maps?ll=47.4991,9.6611&t=k&z=12
スイスアルプスを発したライン川はここでボーデン湖に注ぐ。氷河起源の明るい青色をした水が、湖岸への土砂の堆積を防ぐ堤防に遮られて、3kmほど沖合いで暗い湖水に混じり込んでいる。色の違いがみごとだ。古いライン川 Alte Rhein は画面左手へ分岐している流れで、スイスとの国境線になっている。

Blog_austria_bildatlas_detail3

本編の後は主要都市の拡大画像で、見開き2ページに配されている。ここで1:50 000地形図と対照できれば申し分なかったのだが...。巻末にはしっかりと地名索引が付いて、地図帳の要件を完備している。

★本ブログ内の関連記事
 オーストリアの1:25,000と1:200,000地形図

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