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2008年10月 2日 (木)

オーストリアの1:25 000と1:200 000地形図

Blog_austria25k オーストリアの地形図体系で長らく不可解だったのは、国土の3/4が山岳地帯であるにもかかわらず、1:50 000が最大縮尺という点だった。日本や西欧主要国と同じように1:25 000は発行されているのだが、なんとそれは1:50 000の単純な拡大版、いわゆる「でか字」バージョンに過ぎないのだ(写真左は旧図、右は新図)。これは、縦長の1:50 000図郭を上下に2分して、両面に印刷したもので、凡例や説明文を含めて老眼でも問題ない大きさになっている。10年ほど前に現地を旅して1:50 000で山野を歩こうとしたところ、描写が細かすぎて野外では見づらいことに気づいた。試しにこの拡大版を使ってみると、確かに細部の地形までしっかり読める。改めて存在意義を認識したのと同時に、2倍に拡大しても表現が粗いと思わせないところに、原図の精密さを実感した。

とはいえ、縮尺が大きくなればなるほど、微細な地形が無理なく表現できるし、隣国スイスのそれを見ても、山岳表現には圧倒的な存在感が出る。1:25000で迫力のある絵を見たいという想いは消えない。新図への切替えの話を耳にしたとき、もしかすると1:25000にもオリジナルの編集図が登場か、と期待を抱かせたのだが、そうではなかった。残念ながら旧図と同じ拡大版で、今度は横長の図幅を左右に2分して、別々に販売している。

しかし、かつては1:25 000の測量図が存在した。測量局の資料によれば、1923年から1959年までの間に、全土の1/3の範囲で多色刷りの1:25 000が完成していた。サンプル図を見ると、図郭は1:50 000を縦横2等分したもの(緯度経度とも7分30秒)で、等高線間隔は20mとこの縮尺としてはやや粗いが、緩傾斜部では10mまたは5mの補助曲線を挿入している。ドイツ系らしい几帳面な表現で市街地の描写も詳しく、廃版となってしまったのは惜しい。

Blog_austria_schneeberg その名残なのか、現在はわずか1面だけ、特別図として1:25 000「シュネーベルク及びラックスSchneeberg und Rax」がある(右写真は1993年版。現在はデザインが変更されている)。単純拡大ではないオリジナルの編集図で、更新も継続されている。現行図は2006年版だ。シュネーベルク、ラックスとも、首都ウィーンの南西60~70kmにある手ごろなトレッキング適地なので、常に一定の需要があるのだろう。

さて、オーストリアの地形図体系は、日本と同様、1:50 000の次に小さい縮尺は1:200 000になる。これも旧図は経緯度で律儀に切った区分図で、緯度経度とも1度の縦長図郭だった。そのルーツは、1887年から順次整備された「1:200 000中欧一般図Generalkarte von Mitteleuropa」と称するシリーズに遡る。

当時はオーストリア・ハンガリー二重帝国として、東はトランシルヴァニア(現在のルーマニア北西部)、西はチェコ、北はガリツィア(ポーランド南東部、ウクライナ南西部)、南はボスニア、クロアチアに及ぶ広大な領土を有していたが、中欧一般図は、さらに広い中部ヨーロッパ全域をカバーする265面が製作された。経度表示は当然、フェロ島基準だ。地名表記にはドイツ語が用いられ、たとえば、クロアチアの首都ザグレブZagrebはアグラムAgram、スロバキアの首都ブラチスラヴァBratislavaはプレスブルクPreßburgと記されていた。

Blog_austria200k オーストリアの1:200 000旧図はそのうち、現在の領土が含まれる図幅だけを残したものと考えればよい。全部で23面あるが、他国の都市名を図名に採用したのが13面と半数以上にのぼるのも、図名が他国でもドイツ語地名優先なのも、上述の理由からだ。この旧図はすでに廃版となり、州別に編まれた新図8面に置き換えられている(写真左は旧図、右は新図)。こちらは表紙に旅心を誘う観光写真を配して、注目度を高めようという意図が伺える。1:50 000と同様の精巧な地勢表現が施された地形図は、道路や境界の塗り方やグリッドの引き方が変わった程度で、ほとんど旧図そのまま使われている。

少々難をいうと、1:50 000もそうだが、地図用紙が、細かいエンボスのある独特の光沢紙からふつうの上質紙に変わったため、鮮やかさの点で見劣りがする。また、写真のチロル州Tirolのように東西に長い州は、2分割して両面印刷してあるが、重複部分がわずかしかないので州の全体像をつかむのが難しい。片面に全体を収めると、用紙が2倍大になり、扱いが煩しくなると考えたのだろうか。

もちろん、経緯度で容赦なく切断されていた区分図時代を思えば大きく改良されているのは確かだ。地勢や交通網を概観するのに手ごろな1:200 000は、もっと利用されていいと思う。この項で述べた現行地形図は1:50 000と同様に購入できるので、下記サイトをご参照いただきたい。

■参考サイト
「官製地図を求めて」オーストリア
http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_austria.html
インスブルック付近の地形図画像(BEV Austrian Map online)
http://www.austrianmap.at/amap/index.php?setTo=1%7E251869%7E376679%7E255726%7E373478%7E%40253811%7C375494%7E0%7ELAM_WGS84
 ウィンドウが小さいときは、マウスで拡げると地図画像も自動で大きくなる。地図右側のボタンで表示縮尺が変更できる。

オーストリアの1:50 000地形図
オーストリアの旅行地図-フライターク&ベルント社

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