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2008年6月 5日 (木)

バルト三国の地図-エストニアの地形図

北欧の内海、バルト海 Baltic Sea を奥へたどると、ストックホルム沖で二手に分かれる。東側の湾入をフィンランド湾というが、その南岸はエストニア Estonia が占めている。フィンランドの首都ヘルシンキとエストニアの首都タリン Tallinn は海を隔てて80km強の距離しかなく、高速艇を使えば日帰り観光ができるほど近い。

Blog_estonia_20k エストニアの地形図のサンプルとして、そのタリンを含む数葉を購入した。普通に入手できる最大縮尺は、1:20,000基本図 Eesti põhikaart / Estonian Basic Map(写真右)だ。北方の海を想わせる涼しげな緑青の表紙には、国章である金の盾と3頭の青いライオンの傍らに、この国の測量機関であるエストニア国土局 Eesti Maa-amet / Estonian Land Board の名が記されている。地形図の紹介が国土局のホームページにあった(以下、英語版から引用)。

「エストニアの基本図は全土をシームレスにカバーするデジタル地形データベースで、道路、送電線などのユティリティ、居住地、水部、地形、地名および土地利用に関する情報を含んでいる。精度と内容は縮尺1:10,000の地図に相当するものだ。」

「印刷図は1:10,000デジタルデータから1:20,000に編集したもので、作成過程は1996年以降、完全にデジタル化されている。(略)1997年に、国土全域のオルソフォトとベクトルデータベースが完成したが、同時に資源の集中化を図るため、印刷図は最もニーズの高い地域のみ作成するという戦略的な意思決定がなされた。その要求に応えて、2002年に、新しい印刷図のレイアウトがエストニア国防軍と共同で設計された。国防軍はその後、多数の図葉を作成し、作業が完了したものから、デジタルデータを地図にプロットして頒布できるようになった。2007年の第3四半期までに、全部で339面の基本図が刊行されている。」

地形図は原データに50%縮小をかけただけあって、2.5m間隔の等高線や土地利用区分、工場建物の正確な形状など、かなり精密な描写が施されている。しかし、国土局の手になるのは、2006年現在で主に東南の内陸部や西の島嶼部(ヒーウマー島 Hiiumaa、サーレマー島 Saaremaa)などに限られており、残る地域は索引図に載っていない。別の資料ではバルト海沿岸部一帯が国防軍の担当区域になっているが、一般人に入手可能かどうか定かでない。それで、刊行図で全土を見ようとすると、もう一段縮尺を小さくして1:50,000に頼らなければならない。

Blog_estonia_50ksatellite 右の写真は国土局の1:50,000で、ベースマップ Baaskaart(上記の Basic Map と区別しにくいので英語名称のままにしておく)と称しているが、表紙に併記されているように内容は衛星写真図 Satelliit-fotokaart だ。1991年の主権回復後、短時間で地理情報基盤を整備するため、1:50,000相当のやや粗い精度でデジタルマップが作成された。これに、スウェーデンの技術協力によるSPOT衛星画像を重ね合わせたものだ。

森、湿地、耕地などを色面で区分しているので土地利用図のように見えるが、10m間隔の等高線が入り、地形図の性格も失ってはいない。とはいえ、黒ずんだ画像に主要街路のみを上書きした市街地の簡易な描写がどうしても目につき、急ごしらえの印象は否定できない。

実はエストニアの1:50,000にはもう一つのシリーズ(写真右下)が存在するが、不思議なことに国土局のホームページでは一切扱われていないのだ。ちなみに国土局の地図作成は1:20,000がEOマップ社、1:50,000ベースマップはエストニア地図センター Eesti Kaardikeskus / Estonian Map Centre に業務委託されている。この別の1:50,000シリーズの表紙にも同じセンターのロゴがあるが、その上に紫で書かれた Eesti Päevaleht は、エストニアの新聞社の名だ。同社のホームページで地形図の国内向け販売を行っているところから推測すると、地図センターが製作し、新聞社が発売元となっているようだ。

Blog_estonia_50k このように、官製図の範疇からは外れるのだが、内容は「エストニア軍用地図および国土局基本図資料を使用して編集」という注記の期待にたがわず、上記のベースマップとは比較にならない本格的なものだ。

1:20,000と照合すると、市街地の総描化は当然のこととして、その他の地物はおおよそ忠実に再現されていることがわかる。平坦な地形を反映して等高線間隔は5mで、微細な起伏も表現されている。ただ1つ決定的に違うのは図郭の切り方で、官製図が一貫して測地系の座標で区切っているのに対して、こちらは緯度20分、経度30分の経緯度で分割しており、そのため方位が微妙にずれてくる。折り方が横長34.5cmと極端に細長く、筆者としては収納に少々困るが、些細なことを傍らに置けば、高い精度で全土をカバーするという点から、エストニアの事実上の基本地図と言っても過言ではない。

Blog_estonia_maplegend ところで、官製1:20,000と民間の1:50,000、製作者も仕様も違う2種の地形図に、ある共通点を見出せる。それはコントラストを際立たせた色使いだ(写真は両者の凡例)。濃茶で塗りつぶされた道路や、鮮やかな紫の市街地など独特の外見は、湾を隔てて隣り合うフィンランドの地形図の派手な紙面を連想させる。これも地域色というべきだろうか。

■参考サイト
Eesti Maa-amet エストニア国土局 http://www.maaamet.ee/(英語版あり)
「官製地図を求めて-エストニア」
http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_estonia.html

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