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2008年4月10日 (木)

旧ソ連軍作成の地形図 III

閲覧サイトにある旧ソ連の「参謀本部地図」を使って、ユーラシア大陸の図上旅行に出かけてみた。地形図が入手しにくい地域を広範囲にカバーするソ連図は、どこをとっても目新しく、興味の尽きることがない。(Map images courtesy of maps.vlasenko.net)

サントリーニ(ティーラ)島 Santorini (Thira)
http://download.maps.vlasenko.net/smtm200/j-35-32.jpg
紺碧の海と断崖上の白い家並みのコントラストが美しく、エーゲ海でもとりわけ人気がある島の一つだ。紀元前1600年前後に起きた火山の爆発で、生じたカルデラに海水が侵入して、現在のような形になった。エーゲ海域のソ連図は1:200,000が最大だが、等深線が記入されているので、海面下300~400mから急傾斜で立ち上がるカルデラ壁の様子がよくわかる。

■参考サイト
カルデラ壁を上るゴンドラ
http://www.santorini.com/holidays/cablecar.html

1:200,000(原画像を80%に縮小)
Blog_genshtab_map11

イスタンブル Istanbul
http://download.maps.vlasenko.net/smtm100/k-35-106.jpg ほか3面
かつての東ローマ帝国、そしてオスマン=トルコの首都であり、今もヨーロッパとアジア、地中海と黒海を結ぶ要衝イスタンブル。図の右側の太い水路がボスポラス海峡で、1973年に開通した海峡をまたぐ橋(第一ボスポラス橋)が描かれている。図中央、北に向かって切れ込む入江が金角湾 Golden Horn。旧市街はその南側に突き出した半島に築かれた。ソ連図ではトルコ全土の1:100,000が公開されている。

1:100,000(×100%)
Blog_genshtab_map12

ドナウデルタ Danube Delta
http://download.maps.vlasenko.net/smtm500/l-35-4.jpg
中欧を貫くドナウ川が、ドイツ南部から延々2850kmの旅の果てに黒海に注ぐところで、広大なデルタを形成する。手付かずの自然が残り、世界遺産に登録されている。この地域のソ連図は1:100,000があるが、面積が広大なので1:500,000で概観してみた。図上で、北側の分流キリア Chilia の上に引かれた赤のラインはウクライナ(北)とルーマニア(南)の国境線だ。

1:500,000(×80%)
Blog_genshtab_map13

ヤルタ Ялта/Yalta
http://download.maps.vlasenko.net/smtm100/l-36-129.jpg
黒海に突き出したクリミヤ半島南岸にある町の名は、第二次大戦の戦後処理について米英ソ首脳が会談した場所として知られる。町は、標高1200~1500mあるヤイラ山地の急峻な海側斜面に開ける。山が北風をさえぎるため、冬も比較的温和で、古くから保養地として名を馳せてきた。なお、山地の北にあるシンフェロポリ Simferopol' から標高752mの峠を越え、海岸沿いにこの町に至る世界最長のトロリーバス路線が今もある(延長86km、所要2時間)。

■参考サイト
Крымтроллейбус / Crimean Trolleybus(ロシア語)
http://www.crimea-troll.com/

1:100,000(×80%)
Blog_genshtab_map14

チェルノブイリ Чернобыль / Chernobyl'
http://download.maps.vlasenko.net/smtm100/m-36-013.jpg ほか1面
ウクライナ語でチョルノーブィリ Чорнобиль。首都キエフから北へ110km、1986年に起きた史上最悪の原発事故の現場だ。発電所は町の北8kmに建設され、近くに従業員の居住区プリピャチ Припять / Prypiat があった。図の右下がチェルノブイリの町、中央に広大な冷却池、その左上の中島に黒円で描かれている冷却塔2基が目を引く。

1:100,000(×80%)
Blog_genshtab_map15

ヴォルガ=ドン運河 Волго-Донской канал / Volga-Don Canal
http://download.maps.vlasenko.net/smtm100/m-38-125.jpg
http://download.maps.vlasenko.net/smtm100/m-38-126.jpg
http://download.maps.vlasenko.net/smtm1000/m-38.jpg
1952年、ヴォルガ川とドン川の間に造られたヴォルガ=ドン運河は、ウラル山脈の西側を黒海・地中海に連結する役割を果たしている。運河の東の入口はヴォルゴグラード Волгоград / Volgograd 南郊にあり、9個所の閘門で、ヴォルガ川水面から88mの高さまで一気に上る様子が、1:100,000地形図で確認できる。閘門はギリシャ文字のΛ(ラムダ)に似た記号で示され、イタリック体で шлюз(閘門)No.1~9の注記がある。最高地点に達した船はこのあと、閘門4箇所を経てドン川へ降りていく。

1:100,000(×100%)
Blog_genshtab_map16
広域図 1:1,000,000(×80%)
おおむね右半分がヴォルガ川 Волга 流域、左半分がドン川 Дон 流域
図中の青い枠は上図1:100,000の範囲を示す
Blog_genshtab_map17

ユーラシア大陸最北の地 Northernmost point of Eurasia
http://download.maps.vlasenko.net/smtm200/t-48-19_20_21.jpg
タイミル半島の北端、チェリュスキン岬 мыс Челюскина / Cape Chelyuskin で大陸は尽きる。北緯77度43分、ユーラシア、アメリカ両大陸を通して最も北に位置するが、海峡を隔ててセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島が横たわり、北極点までまだ1370kmある。地名は18世紀にこの地域を訪れた探検家の名にちなんでいる。最果ての地を1:200,000地形図で確認すると、岬の東南側に無線局(箱から稲妻形矢印の記号)、灯台(星形記号)、そしてチェリュスキン極地観測所 полярн. ст. (= полярная станция) Челюскин の注記がある。

1:200,000(×80%)
Blog_genshtab_map18

パミールの山々と巨大隕石孔 Great Meteor Crater in Pamir Mountains
http://download.maps.vlasenko.net/smtm1000/j-43.jpg
ここはキルギスタン、タジキスタン、中国が接するパミール高原の北部。このような秘境でも1:100,000地形図が用意されているのは驚きだが、ここでは全体を概観するために1:1,000,000を使用した。

画像の上半分はキルギスタン領で、西方のバクトリアや北方のフェルガナ盆地から中国のカシュガルへの交易路が通過する。下半分はタジキスタン領だ。右寄りにある湖はカラ・クル Kara-Kul で、標高3900mの高地にある。直径45kmのこの盆地は、およそ2500万年前に起きた巨大隕石の衝突で生じたものだ。湖から南側に溢水の古い痕跡があるが、現在は流出する川がない。

周囲には6000~7000m級の高山が連なっている。最高峰は図の左端に顔を見せる7495mのイスモイル・ソモニ峰 Ismoil Somoni Peak で、この図ではソ連時代の、コミュニズム峰 пик Коммунизма の名が記載されている。

■参考サイト
NASA Earth Observatory - Kara-Kul Structure, Tajikistan
http://www.earthobservatory.nasa.gov/IOTD/view.php?id=4537

1:1,000,000(×80%)
Blog_genshtab_map19

ウラジオストク Владивосток / Vladivostok
http://download.maps.vlasenko.net/smtm100/k-52-036.jpg
ソ連時代は軍港で閉鎖都市の一つだったが、現在は極東ロシアの玄関口として、日本との往来も盛んだ。シベリア鉄道の終着地としても知られている。日本ではかつてウラジオ(浦塩)と略したが、ロシア語のヴラディ・ヴォストークは、東方を支配する者という意味をもつ。地形図を見ると、港は、突き出た岬に守られた奥まった入江に発達している。水深もあって、天然の良港であることがわかる。

1:100,000(×80%)
Blog_genshtab_map20

カムチャツカ火山群 Volcanoes of Kamchatka
http://download.maps.vlasenko.net/smtm200/o-57-35.jpg
カムチャツカ半島には160体の火山があり、富士山のようにきれいな円錐形をした成層火山も多く見られる。中でもクリュチェフスカヤ山 Ключевская сопка / Klyuchevskaya Sopka は標高4688m(活動中のため諸説ある)と、他を圧する高さをもつ。裾野の周囲が100kmほどもあって、縮尺1:200,000でも全容が収まらない。主峰の南麓や西隣にも4000m級のピークが見られ、氷河も発達している。想像するだけでも壮観な風景だ。

■参考サイト
Global Volcanism Program - Kliuchevskoi
http://www.volcano.si.edu/world/volcano.cfm?vnum=1000-26=

1:200,000(×50%)
Blog_genshtab_map21

オンネコタン島のドーナツ湖 Doughnut Lake in Onekotan Island, Kuril
http://download.maps.vlasenko.net/smtm200/m-56-23.jpg
http://download.maps.vlasenko.net/smtm200/m-56-29.jpg
西のカルデラ、サントリーニに対して、東は、千島(クリル)列島にあるオンネコタン島(日本名 温禰古丹島、ロシア名 Онекотан / Onekotan)の南半を見てみよう。地形図を見ると、一瞬、島に穴でも開いているのではと錯覚するが、もちろんカルデラ湖だ。湖の中央西寄りに標高1324mの成層火山があり、横から見ると、洞爺湖に富士山が出現したような不思議な風景が鑑賞できる。日本領時代、湖は幽仙湖、中央の山は黒石山と呼ばれていた。島の北側にもカルデラ火山があるが、中央火口丘が成長して湖は北側に残るだけになっている。

■参考サイト
カルデラの写真 http://lkirchner.de/onekotan/onekotan/krenitsyn/krenitsyn.html

1:200,000(×50%)
Blog_genshtab_map22

(2008年5月6日改稿)

★本ブログ内の関連記事
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 旧ソ連軍作成の地形図 II
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