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2007年11月 1日 (木)

イギリスの鉄道地図 IV-ベーカー鉄道地図帳

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イギリスの普通鉄道で最も標高の高い駅として知られるデント Dent。雄大な風景が続くヨークシャー・デイルズ Yorkshire Dales を縦断するセトル・カーライル線 Settle and Carlisle Line の中ほどにある。その写真を表紙に配したのが、スチュアート・ベーカー Stuart K. Baker 著「イギリス・アイルランド鉄道地図帳 Rail Atlas Great Britain & Ireland」(写真)だ。全128ページ(図版104ページ、索引19ページほか)、判型17.8×25.2cmのハードカバーで、今年(2007年)、30周年記念版と銘打った第11版が刊行された。

1977年の初版以降、今に至るまで改訂が重ねられてきたことは、研究者や愛好家の支持の高さを証明している。いかにもイギリスらしい広告記事によれば、クリケットファンには「ウィズデン Wisden」、アンティーク収集家には「ライル Lyle」、そして鉄道好きには「ベーカー」といえば、すぐに通じるのだそうだ。

*注:Wisden はクリケット年鑑、Lyle はアンティーク・ディーラー向けガイドブックの名称。

過去2回にわたって紹介した鉄道地図帳と同じように、これもまた白地図に全線全駅を図示しているが、特徴を挙げるとすれば、拡大図が豊富なことだろう。グレートブリテン島の区分図は縮尺1:350,000で統一されているのだが(スコットランドのハイランド地方のみ1:700,000)、主要都市域はほとんど1:70,000~1:90,000の別図面が用意されている。というのも、側線 sidings や操車場 marshalling yard など貨物設備をもらさず書き込むためだ。引込み線が発電所、石油、セメント、鉱山などと用途別に記号化されているかと思えば、アイルランドでは、泥炭採掘のために敷かれた運搬軌道が、緑のひび割れのように描かれている。

区分図の鉄道記号には電化・非電化の区別がないが、その代わり、巻末に電化地図 Electrification Map としてまとめてある。このほうが、例えば南東イングランドの特徴的な第3軌条がどこまで及ぶかが概観できておもしろい。この電化方式が遠くウェーマス Weymouth まで延びているとは、筆者もこれを見て初めて知った。

この地図帳は、OPCすなわちオックスフォード出版社 Oxford Publishing Company の看板商品の一つだが、1998年にイアン・アランがOPCブランドを買い取った結果、同社は鉄道地図帳シリーズをいくつも抱え込むことになった。それぞれ特徴を持っているとはいえ顧客は重なるので、これらが交通整理の対象になるのはやむをえないことだっただろう。定期的に改訂版が出るところを見ると、「ベーカー」がどうやら存続の優先権を勝ち得ているようだ。

■参考サイト
イアン・アラン出版社  http://www.ianallanpublishing.com/

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さて、ペーパー版鉄道地図の最後に、時刻表の鉄道地図にも触れておこう。「OAG鉄道案内 OAG Rail Guide」(写真)は、1853年に創刊されたABC鉄道案内 ABC Railway Guide をルーツとするイギリス鉄道時刻表だ。1996年から航空時刻表で知られるOAG(Official Aviation Guide の略号に由来)の名を冠するようになったが、2007年10月号を最後に惜しくも廃刊となった。

時刻表には索引地図がつきものだが、全駅を掲載しているもの(日本、韓国、ベネルクス諸国など)もあれば、途中駅を省略した概略版(スイス、オーストリアなど)もある。OAGの場合は、方位や距離をデフォルメしない正統派のイギリス全国路線図と、直線状にデフォルメされた都市近郊路線図を備えていて、両方で旅客線の全線全駅表示を達成していた。さらに巻末にはヨーロッパ各国の路線図があり、いずれも単色ながら、全体としてみればトーマス・クックの鉄道地図に匹敵する情報量を有していた。最終号には、12月からミドルトン・プレス社 Middleton Press が引き継ぐと案内されていたが、果たしてどのような内容になるのだろうか。

【追記 2009.11.25】

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2009年現在、イギリスの時刻表は、「GB Rail Timetable」の名称でTSO (The Stationary Office)から刊行されている。価格は15ポンド、TSOのショッピングサイトで発注できるが、日本のアマゾンでも扱っているので、送料を考慮すればこの方が割安だ。内容は、ネットワーク・レール Network Rail が提供しているPDF版をまるごと冊子化したもので、そのため2832ページ、厚さ5.7cmもある。巻末に索引地図が添付されているが、これもネットワーク・レールのオリジナルだ。この地図は、ナショナルレール National Rail のサイトでも見ることができる。

ちなみにこの時刻表は、2007年11月から「UK Rail Timetable」という名称で年2回刊行されていたのだが、UK(連合王国)に属さないマン島やチャンネル諸島への船の時刻も掲載するので、GB(Great Britainの略)に改称したようだ。マン島を含むイギリス各地の保存鉄道、観光鉄道については巻末に文章で紹介があるが、詳しい時刻表は掲載されていない。

■参考サイト
TSO http://www.tsoshop.co.uk/
 時刻表に関する記事は、 トップメニューの Transport > Rail Fares and Timetables
ネットワーク・レール http://www.networkrail.co.uk/
 時刻表PDFは、For Passengers > Current Timetables
ナショナルレール National Rail のサイトについては、次回「イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版」で紹介している。

★本ブログ内の関連記事
 イギリスの鉄道地図 I-トーマス・クック社
 イギリスの鉄道地図 II-鉄道史を知る区分地図
 イギリスの鉄道地図 III-ボール鉄道地図帳
 イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版
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