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2007年10月25日 (木)

イギリスの鉄道地図 III-ボール鉄道地図帳

引き続き、イアン・アラン出版社 Ian Allan Publishing の刊行する鉄道地図帳を紹介する。

筆者がかれこれ10年も前に買って、長い間本棚に眠らせていたのが、マイク・G・ボール Mike G. Ball 氏の「ヨーロッパ鉄道地図帳-英国諸島編 European Railway Atlas - British Isles」(写真は第2版、1996年)だ。A4判、72ページ、イギリスとアイルランド全域の鉄道路線を対象としていて、鉄道愛好家のみならず、普通の旅行者にとっても欠かせない案内書とうたっている。

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地図は全部で55ページあり、黒と赤の2色で刷られている。イギリスは縮尺1:500,000、アイルランドは1:1,000,000(100万分の1)で統一されているが、ロンドン、マンチェスター、グラスゴーなど主要都市は拡大図がある。貨物線を含む全路線・全駅が記載され、旅客営業している路線には時刻表番号も振られている。凡例は、英、伊、独、仏、西の5ヶ国語を併記した国際版だ。巻末には駅名と保存鉄道の索引があるほか、機関車レビュー Traction Review と題して英国の機関車を紹介する写真ページが挿入されているのがおもしろい。

路線の記号は単線・複線の別、貨物線、狭軌線、電化線、計画線を区別している。休止中、電化工事中、休止予定線については略号による注記としている。保存鉄道や観光鉄道は、○の中にT字(Tourist Railway の頭文字)の記号を付して、鉄道名と軌間の数値を書いてある。そして記号が赤色なら、蒸気鉄道という意味だ。駅も、普通鉄道の場合は○の記号だが、観光用はその中に十字を入れている。2色刷りという制約の中で、できるだけ容易に判別できるようにという工夫が感じられる。さらに驚いたことに、(おそらく)すべてのトンネルと主な鉄橋の名称と長さ、そしてサミットの高度まで記載されている。この徹底ぶりは類書の及ばないところだ。

初版が1992年と比較的新しいのに地図自体は意外にも手描きだが、けっして読みにくくはない。前書きに英国陸地測量部 Ordnance Survey の1:250,000地形図をベースにしたとあるので、これがフルカラーで水部や地勢が加刷されていたら、さぞすばらしい鉄道旅行地図になっただろうに、と欲張りな筆者は思う。

本書の裏表紙に広告されているとおり、このヨーロッパ鉄道地図帳はシリーズもので、英国諸島編のほかに大陸編4冊(注参照)があった。しかし、残念なことに現在はすべて絶版で、古書店ではけっこうな値段がついている。

M. G. ボール著「ヨーロッパ鉄道地図帳」大陸編
European Railway Atlas: Denmark, Germany, Austria and Switzerland
European Railway Atlas: France, Netherlands, Belgium, Luxembourg
European Railway Atlas: Spain, Portugal, Italy, Greece
European Railway Atlas: Scandinavia and Eastern Europe

【追記 2009.1.1】
「ヨーロッパ鉄道地図帳」は2008年12月に新装版として復活した。国・地域別の分冊版も入手できる。次の記事参照。

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イアン・アラン社によるM. G. ボール氏の著作は、別の形で存続している。写真は「abc英国鉄道地図帳 abc British Railways Atlas」という名のポケットブック(判型12×18.5cm、新書版に近い)だ。1995年初版で、現在は2004年第3版が出ている。abcというタイトルは、アガサ・クリスティのミステリーでもおなじみのABC時刻表 ABC Railway Guide を思い起こさせるが、こちらはイアン・アラン社が1940年代から刊行していた入門書シリーズ(ABCシリーズ)に由来する伝統的名称だ。

内容は、上述したヨーロッパ鉄道地図帳を簡略化したものと考えればいい。区分図の切り方はまったく同じで、路線網や駅名も省略してはいない。ただ、構築物のデータなどマニアックな内容は排除されている。鉄道線は、旅客線、貨物線、計画線と保存鉄道線の区別があり、蒸機が走る保存鉄道にはイラスト風のSLマークを添えて目立たせている。判型といい、地図といい、いたってシンプルな体裁なので、旅などの持ち歩き用を意図しているのだろう。これはイアン・アラン社のオンラインショップその他で購入できる。

■参考サイト
イアン・アラン出版社  http://www.ianallanpublishing.com/

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2007年10月18日 (木)

イギリスの鉄道地図 II-鉄道史を知る区分地図

イアン・アラン出版社 Ian Allan Publishing は趣味系書籍・雑誌の大手で、鉄道分野でも月刊誌「レールウェイズ・イラストレーティッド Railways Illustrated」や「モダン・レールウェイズ Modern Railways」でおなじみだ。近年、ミッドランド Midland Publishing やオックスフォード Oxford Publishing(OPC)など鉄道書の中小出版社を傘下に収めて、規模を拡大している。

イアン・アラン社が刊行している鉄道地図帳が、筆者の知る限り3系統ある。どれも白地図に鉄道網だけを表示した辞書的な地図帳だ。それぞれ、

・セクショナル・アトラス系統
・ボール M.G. Ball 系統
・ベーカー S.K.Baker(OPC) 系統
と勝手に名づけたうえで、順に紹介していこう。

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まず、セクショナル・アトラス(区分地図帳)の系統から。

英国鉄道区分地図2002 Sectional Maps of Britain's Railways 2002」(写真)は64ページ(図版45ページ、索引16ページ)、判型17.5×24.2cm、グレートブリテン島全体をカバーした鉄道地図帳だ(アイルランド島は掲載せず)。中表紙にイアン・アラン社創業60周年のロゴが入っているところを見ると、記念出版なのだろう。

巻頭辞は次のように書かれている。「1980年代後半まで、イアン・アラン出版が定期刊行していた地図帳に、セクショナル・アトラス Sectional Atlas がある(下注)。現存の鉄道路線と休止・廃止線がともに描かれていたので、歴史家や愛好家にとって両者の関係を検証する資料になっていた。区分地図帳は1980年代後半に出版されたのが最後で、それから10年以上が経過した。その間、鉄道業界は、民営化が完了し、鉄道の各部門にフランチャイズ制が導入されるなど、大きく変化してきた。貨物専用線はそれほど急激ではないものの、規模縮小が続き、その一方で、次世代LRTの計画が進捗し、休止線が保存鉄道として復活している。この区分地図帳の最新版は、鉄道網を記録したイアン・アラン出版の新しいデータベースを使用して準備され、最近、同社で出版された鉄道地図帳と同じフォーマットを使っている。」

*注 正式タイトルは2002年版と同じ"Sectional Maps of Britain's Railways"。1982年初版、1985年第2版、1989年第3版の後、更新されていない。

地図の凡例を見ると、現役の旅客線、貨物線のほか、工事線・計画線、その他の営業線(列車線に対する近郊電車線を指す)、保存鉄道線、休止・廃止線の区別がある。配色も、現役線のグレーに対して、休・廃止線はクロームイエローが用いられて、よく目立つ。駅名は旅客駅、貨物駅、休・廃止駅(ただし主要駅のみ表示)で色分けし、巻末の駅名索引も3種に分けて編まれている。

このように、過去に存在した路線を網羅しているところが、セクショナル・アトラスの、類書にはない最大の特色だ。索引図がついておらず、ノンブルが数字(1, 2, 3...)ではなく英語(one, two, three...)表記であるなど、いささか使いにくい点もあるが、興味深い資料であることは確かだ。

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実は、この鉄道地図帳にはルーツが存在する。1958年に初版が出された「英国鉄道集約化以前地図帳・地名録British Railways Pre-Grouping Atlas and Gazetteer」(写真)だ。これは、1921年鉄道法によって4大鉄道会社、いわゆるビッグフォーに集約化される前(プレ・グルーピング)の状況を表したものだ。

ここでは、縮尺が8マイル1インチ(図上1インチが実距離8マイルを表す。1:506,880に相当)と明記されている。しかしこの縮尺でも、全線全駅を掲載しようとすると描ききれない。首都ロンドンはもとより、ウェールズ南部、ヨークシャー南部といった炭鉱地域や、マンチェスター、グラスゴーのような産業革命の中心地は、路線網が稠密すぎるからだ。

45ページの区分図のうち、最後の7ページはそのための拡大図に充てられている。これによって、1923年の集約化や1948年の国有化に伴って姿を消した駅や支線の現役時代を振り返るのも難しいことではなくなった。路線は所有会社別に色分けしたうえ、会社の略称が添えられていて、会社のフルネームを知りたければ、巻末の地名録の中にある一覧表が役に立つ。

上述した区分地図帳は図郭、ページ設定を含めてこの仕様を踏襲したものだ。索引図が省かれたり、ノンブルが英語だったりするのも、旧来の地図帳の利用者を前提にしていると考えれば納得がいく。上で引用した巻頭辞のとおり、地図帳のオリジナルはとうに絶版になっているが、1967年第5版を復刻したものが、現在もイアン・アラン社から入手可能だ。

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一方、この地図帳のデータを改めてコンピュータ上に展開した上で、特定の時代に焦点を当てて当時の鉄道地図を再現したものも数点刊行されている。Britain's Railwaysシリーズとして同社から刊行された「Rail Atlas 1890」(写真)、「British Railway Atlas 1955」、そして「Rail Atlas 1970」だ。

手元には1890年版があるが、2002年版と同じ図版に、1890年1月1日現在の営業路線の全線全駅がプロットされている。所有会社ごとの路線の彩色は、プレ・グルーピング版に準じたものだ。復刻版ではいささか見づらくなっていた駅名の細かい文字も、クリアに読める。1890年といえばヴィクトリア朝の後期で、鉄道網はほぼ完成しており、かつ自動車交通が台頭する以前のいわば鉄道黄金時代にあたる。2002年版では路線の位置と終端駅程度しか描かれていない休止線、廃止線も、ここでは全ての駅の場所と駅名、それに運営する会社名が記されていて壮観だ。縦横に張り巡らされた路線網を追うと、貨客を満載した列車がひっきりなしに行き交うさまが目に浮かぶ。

この1890年版は、プレ・グルーピング版で割愛されたアイルランド全島(1890年当時はイギリスに併合されていた)や、王室属領のチャンネル諸島も掲載範囲に含まれていて、イギリス諸島の鉄道の全貌を知る上でたいへん貴重な資料になっている。

ボール系統、ベーカー系統は次回以降に。

■参考サイト
イアン・アラン出版社  http://www.ianallanpublishing.com/

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2007年10月11日 (木)

イギリスの鉄道地図 I-トーマス・クック社

トーマス・クック Thomas Cook の社史は、旅行業の歴史そのものだ。旅行者の手引きとして考案されたヨーロッパ鉄道時刻表は1873年の創刊以来、未だに刊行され続けている。同社が理想の道連れ ideal companion とうたう大判折図の「ヨーロッパ鉄道地図 Thomas Cook Rail Map of Europe」もすでに16版を数える。いずれも日本のユーレイルパスユーザーには必須アイテムとしてつとに知られているものだ。

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イギリス・アイルランド鉄道地図 Rail Map Britain & Ireland」はヨーロッパ版の姉妹品として、1989年に発刊された。2007年現在、第5版が出ている(写真左は1992年第2版「Visitor's Rail Map of Great Britain & Ireland」、右は2007年第5版)。時刻表添付地図を別とすれば、1枚もののイギリスの鉄道地図としては、筆者が知る限りこれしかない(下注)。そして、旅行者向けに編集されている点でも唯一のものだ。

*注 その後、2008年にトラックマップ社 Track Maps から"Rail Map of Britain"が刊行された。

縮尺はイングランド、ウェールズが1:750,000、スコットランドとアイルランドは1:1,000,000(100万分の1)。グレートブリテン島の南2/3を表面に、同じく北1/3とアイルランド、それにロンドン地域の拡大図を裏面に配置する。

初版のころは、まだイギリス国鉄 British Rail(BR)が健在で、都市交通や地方の小鉄道、貨物鉄道を除いて、全国の鉄道網は一括運営されていた。それで鉄道地図も、国鉄の列車種別で路線を区分するのがごく自然な考え方だった。

クックの地図では、インターシティ(IC)が平均時速90マイル以上で最低1時間ごとに走る区間を「高速 High-Speed」、地域間の速達列車が60マイル以上で最低2時間ごとに走る区間を「急行 Express」、などと分類している。優等列車区間は赤色の線、その他は黒い線を用い、その結果、色で幹線、支線を見分けることができた。地図デザイン自体は、配色やベースマップとの相性を含め、いかにも野暮ったかったが、実用性はそれなりにあったといえる。

1980年代はサッチャー首相率いるイギリス政府が、国有企業の民営化や規制緩和政策を推進した時期にあたる。国鉄も例外とはならず、次のメージャー政権で成立した1993年鉄道法 Railways Act 1993 により、1994年4月をもって解体が実行された。イギリスの鉄道改革は、事業にフランチャイズ制を導入したのが大きな特徴で、旅客輸送に参入した会社は25社に及んだ。地方の拠点都市とその周辺に路線網を固める会社もあれば、長距離路線を主体とする会社もあり、大都市間を結ぶ幹線には何社もの列車が行き交うことになった。

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鉄道地図もその影響で、列車速度や運行頻度で一括りに表しきれなくなったらしい。現行版は列車種別による区分を止めて、列車運行会社(TOC)ごとに色分けする方式に切り替えている。複数社が運行する路線は、色の線が並行してカラフルな帯状を成している。各社のテリトリーが一目瞭然なのはおもしろいが、もはや優等列車が走る区間という形では判別できなくなった。

デザインは初期に比べてずいぶん改良されている。うるさかったベースマップのトーンが下がって路線図と駅名が引き立つようになり、クックの特色の一つである景勝区間 Scenic Route の表示も点線化したので、路線表示と混同されるおそれがなくなった。イギリスの鉄道シーンを印象付けている各地の保存鉄道 Heritage railways は、旧版では緑の線を使い、景勝区間と紛らわしかった。今は日本の私鉄記号のように赤の実線に短線を施し、名称も入ったので、広い図面の中でもすぐに見つけられる。

難をいえば、1:750,000というスケールでは都市部の表示が難しいのだから、バーミンガム Birmingham、マンチェスター Manchester・リヴァプール Liverpool、グラスゴー Glasgow のような路線稠密地域は、ロンドンに準じた拡大図がほしいところだ。また、主な町について、欄外に観光案内所の連絡先と市内・郊外の見どころが細かく記述されているが、関連のウェブサイトのURLがあればなお便利だろう。

トーマス・クックは合併連衡を繰り返して、今では旅行業でヨーロッパ第二の規模に成長した。その一部門が刊行する鉄道地図も老舗の知名度とあいまって、同種の地図の中では最も入手しやすいものとなっている。日本でも、アマゾンその他、洋書を扱うショップで扱っている。

■参考サイト
トーマス・クック出版社  http://www.thomascookpublishing.com/

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2007年10月 4日 (木)

イギリスの復刻版地形図 I-カッシニ出版社

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ロンドンの老舗地図店スタンフォーズ Stanfords(右写真)は、地図ファンにとって巡礼地の一つだ。地階 Basement はイギリス諸島 British Isles、1階 Ground Floor はフランス、ドイツ、スペインなどの近隣諸国、2階 1st Floor はその他各国の、あらゆる地図と旅行書が揃っている。地階に降りると、OSの現行地形図の傍らに復刻版地形図のコーナーがあるが、そこに見慣れないカラフルな表紙をまとった地図が並んでいた。カッシニ出版社 Cassini Publishing が刊行するシリーズだ。

通常の用途なら、地図は最新であることが尊ばれるから、古くなった地図は用済みと見なされ、処分される運命にある。しかし、過去の歴史を調べる者にとって、当時の地図は貴重な証言者だ。測量局は、そういうニーズに応えるため、旧版地形図の閲覧や複写のサービスを提供していることが多い。イギリスの場合はそれにとどまらず、旧版地形図の出版を事業として立派に成立させているところが興味深い。

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1805年から1874年にかけて作成されたイングランドとウェールズの初代1インチ地図、いわゆる「オールドシリーズ Old Series」については、かなり前からデヴィッド・アンド・チャールズ社 David & Charles が、原版110面を97面に集成して刊行していた(右写真)。しかし、今回スタンフォーズで見かけたものは、編集方針の点でデヴィッド社とは一線を画している。

最大の相違点は地図の縮尺だ。1インチ地図は図上の1インチが実長の1マイルを表し、分数表示では1:63 360になるのだが、1974年以降の刊行図は縮尺が1:50,000に切り替わり、図郭も変更されたため、新旧地形図を直接照合するには何かと障害があった。そこで、カッシニ社版は旧図を1:50,000に拡大して図郭も現在のものに合わせたのだ。

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カッシニ版のもう一つの特徴は、対象となる123面全部について、初代オールドシリーズ、第一次大戦後の1919~1926年に刊行されたいわゆる「普及版 Popular Edition」の2種類を用意していることだ。

前者は当然、黒一色だが、後者は7色刷りと一気にカラフルになって現代に近づく。主要道路を赤と黄で目立たせ、公園、森林、砂浜といったレジャーの目的地にも個色が配される。自動車の普及に伴い、道路地図あるいは旅行地図として大衆が利用することを意識して改訂したからだ。一方で、鉄道網がほぼ完成し、現在は廃線跡になっている路線もまだ現役だ。都市のスプロール化は十分進行しておらず、駅と町の位置関係がよくわかる。この時期の地形図をカラーで完全復刻したのは画期的なことだ。

【追記 2009.2.13】
その後、1896~1904年刊行の「改訂新版(着色版)Revised New Series (in colour)」が復刻されて、イギリス黄金時代の地表の変化を3代にわたって見ることができるようになった。右上の写真は、左からカッシニ社の初代「オールドシリーズ」、「改訂新版」、「普及版」だ。

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これらは全国版(ただし、イングランドとウェールズ)だが、別にピンポイント版もある。「今昔地図 Past & Present Map」と題して、都市周辺など変化が著しい地域の200年間の変化を一目で見せる特別シリーズだ。実長15km四方に相当する地形図を、1枚の用紙に年次別に配置している。

写真にあげた「プリマス及びソルタッシュ Plymouth & Saltash」を例にとると、軍港として発展したプリマスとその周辺の姿を、1809年の初代、1896年の初代改訂版、1919年の普及版、そして現行版と4代で描く。先述のシリーズのように1面ずつ購入しなくても済むところがミソだろう。カッシニ社の地図は、同社公式サイトやイギリスアマゾン Amazon.co.uk などで購入できる。

カッシニ版にはすべて、現行地形図と同じように1kmグリッドが加刷されている。これを使えば各図間でエリアを正確に特定できるので、時代ごとの変貌を容易に追跡できる。この地図シリーズは、測量史の骨董品を誰でも身近に使える参考資料に変換してしまった。あたかも古文書を現代語に訳すように。

■参考サイト
スタンフォーズ http://www.stanfords.co.uk/
カッシニ社  http://www.cassinimaps.com/

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 イギリスの復刻版地形図 II
 イギリスの1:50,000地形図

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