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2007年5月31日 (木)

米軍のアジア1:250,000地形図

前回は旧米国陸軍地図局 U.S. Army Map Service(AMS)が作成した日本の1:250,000地形図を、ペリー・カスタネダ図書館地図コレクションのサイトで覗いた。

■参考サイト
Army Map Service Topographic Map Series
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/

もうご承知のように、このシリーズは世界各地に及んでいて、アジア地域で公開されているのは、東は千島(クリル)を含む日本列島から、南はニューギニア島、西はパキスタン、中央アジア諸国にまで延びる。とにかく膨大な数だ。

アジアの多くの国では地形図の入手が難しい。国内では一般に販売している韓国や台湾も、国外への持ち出しは許可が必要だ。現在、これらの地域を、アメリカ国家地球空間情報局 National Geospatial-Intelligence Agency(NGA)が発行する1:500,000航空図(Tactical Pilotage Charts の頭文字をとって TPC と呼ばれる)がカバーしていて、これが誰でも入手できる最大縮尺の地形図になっている。それをしのぐのは、ソ連が作成したキリル文字表記の地形図でなければ、AMSのシリーズしかない。

AMS地形図の全貌を見るのはとうてい不可能なので、ここでは著名な世界遺産の描かれている図葉を探してみた。ただし、1:250,000という縮尺と1950年代という制作時期からして、地形を概観する程度にしか役に立たないことを承知の上でご覧いただきたい。

万里の長城 山海関(中国) Great Wall of China, Shanhaiguan
NJ50-4 昌黎
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/china/txu-oclc-10552568-nj50-4.jpg
NK50-12 臨楡
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/manchuria/txu-oclc-6614368-nk50-12.jpg
長城が海と出会う場所、山海関 SHANHAIKWAN は、下図では臨楡 LIN-YÜ の地名に付記されている。現在、秦皇島市の市域となっている臨楡市街南東(右下)の海岸線から、"Great wall"の注記のある実線が始まり、尾根に沿って内陸に延びている。

Blog_amsmap_sample1

秦始皇帝陵(中国) Mausoleum of the First Qin Emperor, China
NI49-5 西安
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/china/txu-oclc-10552568-ni49-5.jpg
下図左下にある西安 HSI-AN の市街から東(右)に延びる鉄道記号(隴海鉄道 Lunghai Railway)をたどっていくと、線路の右手に"Pyramid"の注記がある(下図の円内)。1辺350mの大陵墓もさすがに1:250,000では1.4mm角にしかならず、見逃してしまいそうだ。

Blog_amsmap_sample2

ハロン湾(ベトナム) Halong Bay, Vietnam
NF48-16 Haiphong
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/indochina_and_thailand/txu-oclc-6535632-nf48-16.jpg
下図中央の湾に、"Baie d'Along(ハロン湾)"の注記がある。破片のような島々と"Karst"、"Limestone Ridges"の注記で、海の桂林といわれる石灰岩地形がわかる。地図が編集された1954年はベトナムがフランスから独立した年で、図上の地名はまだフランス語で記されている。図の上方にある地名 Va Chai、Bai Chay、Hon Gay 等が現在のハロン市の中心部。ÎLE CAC BA はカットバー島。

Blog_amsmap_sample3

アンコールワット(カンボジア)Angkor Vat, Cambodia
ND48-10 Siem Reap
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/indochina_and_thailand/txu-oclc-6535632-nd48-10-2nd-ed.jpg
下図の下部にある水面は、トンレサップ湖。その北(上)にシェムリアップ SIEM REAP の町。そのすぐ北に"Angkor Thom"(アンコールトム)と"Angkor Vat"(アンコールワット)の注記がある。いずれも環濠が明瞭に描かれて、規模の大きさが知られる。

Blog_amsmap_sample4

タージマハル(インド) Taj Mahal, India
NG44-1 Agra
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/india/txu-oclc-6614190-ng44-1.jpg
下図左にアーグラ AGRA の町。そのすぐ東(右)、大きく蛇行するヤムナー川 Yamuna (地図では Jumna と表記)に面して、矩形の敷地と"Taj Mahal"(タージマハル)の注記が見つかる。

Blog_amsmap_sample5

ダージリン・ヒマラヤ鉄道(インド) Darjeeling Himalayan Railway, India
NG45-3 Kanchenjunga
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/india/txu-oclc-6614190-ng45-3-cop.2.jpg
NG45-7 Kishanganj
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/india/txu-oclc-6614190-ng45-7-cop.2.jpg
下図上方にダージリン DARJEELING の町。狭軌鉄道は破線の記号のため判読しにくいが、南(下)へ延びている。「Kishanganj」図葉に入ると、明瞭な実線表示になる。尾根伝いに走った後、反転を繰り返しながら平地へ降りて、シリグリ SILIGURI へ。途中5箇所あるというループ線も、この縮尺での表示は無理だ。

Blog_amsmap_sample6

All map images courtesy of University of Texas Libraries.

なお、AMS地形図の中国L500シリーズをハーバード大学図書館も公開している。
Army Map Service Series L500 of China
http://hcl.harvard.edu/libraries/maps/collections/series_indices/China_Index.html
しかし、専用画面で部分的にブラウズしていく方式はいかにもまどろっこしい。別ウィンドウで全画面表示も可能だが、解像度が低く、地名を判読するのは困難だ。

★本ブログ内の関連記事
 ペリー・カスタネダ図書館地図コレクション
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 旧ソ連軍作成の地形図 III

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コメント

2ヶ月前の貴エントリーに対する遅過ぎレスご容赦。

最近このページを知り、深い探索に感心いたしました。
ここ1ヶ月、支那の古い機関車に興味を持ちました為、
支那の地名のローマ字表記と日本語表記の対応に苦労してます。
ご紹介の米軍地図のお陰で、かなり特定出来ました。

今後の世界地図の情報の進化をお祈りしてます。

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