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2007年5月24日 (木)

米軍の日本1:250,000地形図

前回、ペリー・カスタネダ図書館地図コレクション Perry-Castañeda Library Map Collection のことを書いたが、その真髄というべきものにまだ触れていなかった。旧米国陸軍地図局 U.S. Army Map Service(AMS)が1940~60年代に作成した世界各地の1:250,000地形図が鮮明な画像で公開されているのだ。同じものが日本の国立国会図書館にも所蔵されている(NDL-OPAC請求記号 YG713* など)が、自宅で自由に閲覧できるという点でこの存在は貴重だ。次のURLに公開資料の一覧がある。

■参考サイト
Army Map Service Topographic Map Series
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/

地形図は地域ごとにシリーズ化されて、アルファベット+数字3桁のコードがついている(例:L500 China、M501 Western Europe)。一覧の13行目に"Series L506 Japan"が見つかるはずだ。

■参考サイト
Japan 1:250,000  http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/japan/

Blog_amsmap_kyoto_index
京都周辺の索引図

開けてみると、1図葉ごとに図番+図名のリストがずらりと並ぶ。例えば、筆者の地元京都が載っているのは、"NI 53-3 KYOTO" だ。図番のNI 53というのは1:1,000,000(100万分の1)国際図のコードで、Nは北半球、Iは赤道から緯度4度ごとに区切ってA、B、Cと名づけた9番目の区画を、53は経度180度から東回りに6度ごとに区切って53番目となる区画を表している。AMSの1:250,000は、さらにこれを横4×縦4=16分割した範囲が1図葉となる。コード末尾の3は、NI53区画の左上隅(北西角、MATSUE 図葉に相当)を1として右へ3番目の図葉という意味だ。索引図 Index Map を見ると、その位置関係が理解できるだろう。

サイトのページに戻ると、画面上方にリンク"Japan clickable map"がある。この索引図から、それぞれご自分の身近な地域の地図を選ぶといい。ここでは京都の図で説明を続けよう。

Blog_amsmap_kyoto
上半分はNI53-3 KYOTO、下半分はNI53-7 OSAKAの一部
(いずれも1953年編集)

北緯35度線が市街を横切っているせいで、"NI 53-3 KYOTO"図葉には京都市街の北半分しか表示されていない。経緯線で忠実に区切る区分図の宿命だ。四条通から南の市街は"NI53-7 OSAKA"図葉のほうに含まれるため、上の参考図では両図葉を貼り合わせておいた(下注)。

*注:筆者蔵の地図を使用しているので、OSAKA図は、ペリーコレクションと異なり、地勢のぼかしが入ったバージョンになっている。

地図記号はいまもアメリカの1:250,000地形図で用いられている様式とほぼ同じで、行軍や補給のために不可欠な交通、地勢、植生などの情報を中心としたシンプルなものだ。植生はその土地に典型的なものが追加される。この図では田圃 Rice Paddy がそれに当たる。

Blog_amsmap_kyoto_legend
凡例

市街は黄色に塗られてよく目立つ。主要道路も赤で図全体のアクセントとなっているが、まだほとんどがくくり(縁取り)のない線、すなわち未舗装道 Loose Surface だ。図郭左下の図歴には、「1924~44年陸軍陸地測量部および1945~48年国土地理院作成の1:50,000地形図、1945年米国水路部海図2733番を使用して1953年に編集」とある。戦後10年も経った1956年のワトキンス調査団のレポートにさえ「日本の道路は信じがたいほど悪い」と書かれたのだから、敗戦直後なら、さもありなんと思わせる。しかし、そのような道路にも堂々と NAKASENDŌ HWY などと注記が施されている。雨が降ればぬかるみとなる「街道」でも、アメリカ風にいえばハイウェイなのらしい。

鉄道は、日本の地形図で(JR以外の)民営鉄道を表す細い実線に短線を交差させた記号で、軌間(線路幅)別に3' 6"(3フィート6インチ=1067mm)と2' 6"(762mm)の2種類ある。それ以外の軌間や電化の有無は注記で補われる。軌間が違えば列車は直通できないから、これは軍事上重要な情報だ。鉄道ファンとしては、今はなき江若(こうじゃく)鉄道が琵琶湖西岸に延び、上図の範囲から外れるが、北陸本線旧線の難所だった敦賀をはさむ山間ルート、柳ケ瀬越えや山中越えも見えて、興味深い。

地名は当然ローマ字表記だが、手描きの漢字地名が赤で加刷されているのも大きな特徴だ。小さな集落まで几帳面にフォローされている一方で、大都市「京都」の文字は市街の右肩に遠慮がちに書かれている。自然地名は現地の読みを使っているので、欄外に日英の対照表が掲載されているのだが、これも相当に細かい。mountain に当たるのは -san、-zan、-yama、 -dake、-take、-mine、-ho、北海道の図葉には -fuji まであげられていた。なるほど地名は一筋縄ではいかないものだ。

等高線の間隔は国土地理院の1:200,000と同じ100mで、精度は遜色ない。それに、上図で示したOSAKA図葉のように、地形のぼかし(陰影)を加えたバージョンも多くて、軍用とはいえ、なかなか美しく丁寧に作られている。なお、地図リストの中で[verso]と注記されている項目は、地図の裏面に単色で印刷されている主要都市の市街略図だ。

このような地図が、ペリー・カスタネダ図書館のサイトでは全75面欠けることなく閲覧できるようになっている。L506シリーズは千島(クリル)列島の北東端から始まっていて、北から南へ緯度にして30度、東から西へ経度32度分の壮大な旅を居ながらにして楽しむことができる。

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コメント

はじめましてハマちゃんと申します。
”米軍地図”と検索しましたら当HPを発見したしだいです。
鉄道と地図に関するHPがあっただけではなく、米軍地図についても記載があり、その情報の豊かな事に驚きました。
私も地図と鉄道に関するHPを開いている者としては、大変貴重な情報源となると共に楽しみでもあります。

【戦後日本の地形図に登場した私鉄の地図記号が米軍の地図に書かれていた鉄道記号が元になった事は大変面白い事実です!】

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