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2006年11月24日 (金)

フランスの鉄道地図 II-テリトワール社

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各国鉄道地図の2回目は地図帳を紹介してきたので、フランス編もそれに倣おうと思う。イティネレール・エ・テリトワール社 Itinéraires & Territoires(以下、テリトワール社という。下注)が、A5サイズの「交通地図帳-旅行者用交通ガイド Atlas des Transports - Guide des transports de voyageurs」を刊行している。詳細な情報源であることは間違いないのだが、前2か国の例で見たような「上級鉄道ファン向け」ではない。

*注 イティネレール・エ・テリトワールとは、フランス語で旅程および行政区域という意味。社名のとおり、フランスの交通地図と行政区分図を刊行している。

全192ページの内容を目次に沿って紹介すると...
A. 鉄道ネットワークの概念図
B. フランス国鉄営業ガイド
C. 国内交通ネットワークの詳細図
D. TER(域内急行列車)のガイド
E. 都市交通路線図
F. 駅周辺図
G. 主要都市(隣国を含む)の交通機関データ
H. 空港、島嶼、名所、海水浴場、スキー場への交通機関データ

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上記地図帳表紙の一部を拡大

Cの「国内交通ネットワークの詳細図」はメインの鉄道路線図で、全国を見開き16面に分割している。前回紹介したIGNの「列車でフランス La France en train」と同じベースマップを使い、鉄道ルートや駅の表示もほぼ同じだ。国鉄以外では、規模の大きいプロヴァンス鉄道 Chemins de fer de la Provence(ニース~ディーニュ間)と、地中海に浮かぶコルシカ(コルス)島のコルス鉄道 Chemins de fer de la Corse だけが描かれている。もとより1:1,000,000(100万分の1)程度の縮尺では小さな観光鉄道は描ききれないだろう。

IGN版にはない特徴として、主な路線バスのルートが、国鉄との連絡運輸のあるなしで区分表示されている。その代わり、IGN版にちりばめられていた観光地の表示は最小限にとどめられ、雰囲気の盛り上げより実用性を重視した編集になっている。

Eの都市交通路線図では、イル・ド・フランスに始まり、ボルドー Bordeaux、リヨン Lyon、マルセイユ Marseiile、ストラスブール Strasbourg など国内主要都市のトラム路線図を系統番号と停留所名つきで掲載している。各地のLRV(新型路面電車)や新交通システムの写真が添えられているのも楽しい。初めて訪れる町では、駅に到着しても、まずトラムやバスの乗り場を探して右往左往することが多いが、Fの駅周辺図で運行系統別の乗り場との位置を確かめておけば、スムーズにたどり着けるだろう。時刻や所要時間などより詳しい情報を事前に知りたければ、Gの交通機関サイトや電話番号が手がかりになる。

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このように、IGN版が鉄道網、特に高速列車のネットワークをテーマにした広報的色彩の強いものであるのに対して、こちらはそれを補完する一般交通機関にも目配りする。表紙のコピーを借りれば、「国内をクルマなしで(en France sans voiture)」旅する人のためのガイドブックなのだ。

地図帳とは別に、折図形式の「フランスの交通-フランス旅行者用交通地図 France Transports - Carte de France des transports de voyageurs」もある。上で箇条書きした内容のうち、CとE、すなわち路線図だけを1枚の大判用紙に配置したものだ。フランスの鉄道網は首都パリを中心にして四方へ広がっているので、国土の隅々まで一覧できるという点では、地図帳より使い勝手がいいかもしれない。

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【追記 2009.1.21】
2007年に、テリトワール社から新たに、「列車でフランス-全線全駅 Le Train en France - Toutes les lignes, toutes les gares」が刊行された。たまたまIGN版と同じタイトルだが、こちらはスパイラル綴じで、上記の交通地図帳より一回り小さい12cm×17cmのポケットサイズの地図帳だ。

「交通地図帳」では駅の表示が特急の停車駅と分岐駅程度にとどめられていたが、こちらは旅客扱いのある駅をおそらく全て記載しているのが特徴だ。メインの全国図は約1:1,000,000(100万分の1)で、見開き27面に分割されている。小縮尺のため描ききれない主要都市近郊については、拡大図の用意がある。使われている地図記号は「交通地図帳」を踏襲しているが、駅の記載を徹底した代わりに、電化・非電化の区別は省かれた。巻末には、この年開業のTGVヨーロッパ東線が詳しく特集され、データ集とともに路線図や駅周辺図を見ることができる。

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上記地図帳表紙の一部を拡大

これらの刊行物は、テリトワール社のサイトにあるオンラインショップで購入できる。

【追記 2014.6.1】
2013年刊行の「フランス鉄道ネットワーク地図帳 Atlas du réseau ferré de France」については、「フランスの鉄道地図 V-テリトワール社新刊」で詳述。

■参考サイト
イティネレール・エ・テリトワール社 http://www.itineraires-et-territoires.com/
 オンラインショップは、acheter en ligne (buy online) から

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2006年11月17日 (金)

フランスの鉄道地図 I-IGN刊行図

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フランス国土地理院 Institut Géographique National (略称IGN) の地図カタログでは、地形図をベースにした観光地図が幅をきかせている。1:25,000のような正統な地形図でさえ観光情報がたっぷり含まれているぐらいだから、編集方針に迷いはない。最も小縮尺の地図は1:1,000,000(100万分の1)だが、こちらも修道院、城砦、庭園、戦跡、歴史街道、公園、カヌー・カヤック、ゴルフ、魚釣り、ハイキングルートなどなど、ジャンルを特化した観光用主題図のみごとなコレクションを構成している。価格が5ユーロ(750円)ぽっきりと、比較的低価格に抑えられているのも嬉しい。

このシリーズに、鉄道地図「列車でフランス La France en train」(写真は1996年版)がある。大判用紙の片面にフランス全土を収めた折図だ。ホームページのキャッチコピーによれば、「ガラビ鉄橋から英仏海峡トンネルまで、フランスを鉄道で旅するためのフランス全図。鉄道を愛する人のためのフランス全図」。

英仏海峡トンネル Le tunnel sous la Manche はいまさら説明するまでもないとして、ガラビ鉄橋 Viaduc de Garabit というのは、フランス中央高地にある大規模な上路アーチ橋で、エッフェル塔で高名なエッフェル技師の代表作の一つだ。橋とトンネル、つまり空中と地中(海底)を対比して、フランスの鉄道風景を立体的に読み込んだ巧いコピーだと思うが、同時にこの地図が、ドイツやイギリスで見られるように鉄道網を忠実に描くのではなくて、旅行者に照準を合わせたものなのだと強調しているようにも聞こえる。

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「列車でフランス」(1996年版)の一部
(c) IGN, 2006

事実、この地図では路線の扱い方が特徴的だ(上図参照)。TGV用の高速新線、在来線でTGVまたは特急が走るルート、ユーロスター Eurostar、タリス Thalys のルートが色分けされて目立つ一方、ほかの国鉄路線は十把ひとからげに黒の実線で示される。地方私鉄に至ってはかわいそうに、描く対象にもされていない。駅についても、プロットされているのは特急が停車する主要駅だけで、それ以外はベースの地図にある町の位置から類推するしかない。

それに比べて観光情報の記号は多彩だ。鉄道博物館や鉄橋といった関連ものに限らず、全国の観光地がまんべんなく紹介されている。SNCF(フランス国鉄)の協力でIGNが製作した、というクレジットが物語るように、国鉄が世界に誇る高速鉄道網の広報企画なのだろう。

【追記 2014.5.18】 この鉄道地図はすでに絶版になっている。

というわけで、筆者がこれを入手したとき、鉄道地図としては物足りなさを覚えたのも確かだ。そのIGNもかつては、縮尺1:800,000で全線全駅を表示した「フランス鉄道地図 Carte des chemins de fer Français」を作成していた。これは、北東、北西、南東、南西の4面で1セットになるもので、初版は1942~43年に遡り、SNCFの著作権表示がある公式地図だった(下の写真は1978年版の北西編)。

その後は「全国鉄道ネットワーク地図 Carte du réseau ferré national」と改題して、フランス鉄道線路事業公社RFFのサイト上でPDFファイルにより提供されている。大容量のため少々扱いにくいが、鉄道網をより詳しく調べようとする向きには、こちらをお薦めする(「フランスの鉄道地図 IV-ウェブ版」で詳述)。

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フランス鉄道地図 北西編 1978年版
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上記地図の一部

■参考サイト
フランス国土地理院 IGN http://www.ign.fr/

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2006年11月10日 (金)

新線試乗記-ポートライナー神戸空港延伸

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路線図

関西地区ではこのところ新線の開業ラッシュだ。この先も大阪地下鉄今里筋線、大阪モノレール彩都線などがスケジュールに上っている。開業済みの路線は早めに乗っておこうと、市立博物館に行ったついでに神戸新交通ポートアイランド線、愛称「ポートライナー」の三宮駅へと足を向けた。

ポートライナーは、走行路の側方に設けられたガイドウェイに沿って走行する側方案内軌条式の新交通システムで、1981年2月の開業。この方式では日本での草分け的存在だ。当初は線名の示すとおり、神戸港の人工島であるポートアイランド(以下、港島)の住民の足として建設されたのだが、25年目になる今年(2006年)2月2日、市民広場駅~神戸空港駅間4.3kmが延長開業した。港島のさらに沖合いに造成した神戸空港の開港に合わせて、空港と市街地を結ぶ交通機関として新たなデビューを果たしたのだ。

もともと無人運転なので前面の展望はすこぶる良好だが、既存の車両がロングシートなのに対して、新型車はかぶりつきのクロスシートがあって狙い目だ。出かけたのは日曜日の午後だったが、開港フィーバーももう収まったと見えて車内に空席が目立った。東西方向のJR線に接している三宮駅を出ると、最徐行で鋭角にカーブして、街路の上空をまっすぐ南下する。突き当たりはもとのJR神戸港駅だが、廃止後更地となって、みなとのもり公園用地と書いた看板が立っている。更地の縁を迂回するとやがて港をまたぐ神戸大橋だ(写真は海上から)。ゆりかもめのレインボーブリッジと違い、道路とは独立したアーチ橋なので、見晴らしは抜群だ。秋の日差しが波間に反射してまぶしい。

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「本土」と港島を結ぶ神戸大橋
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中公園駅から三宮方環状線(左のルート)と空港線(中央)が合流する

港島に渡って最初の駅は中公園で、当初からある島内環状線が頭上を越えて合流してくる。港島も街開きから四半世紀を経過し、街路樹が成長して風景がすっかり落ち着いた。この先は延長開業に伴って複線化された区間で、今走っている南行(終点に向かって左側)が新設線だ。2つ目の市民広場駅で環状線を左に分岐したあと、いよいよ初乗り区間に入る。港島自体も南に拡張されており、造成したままの空き地が目立つ。島の南端、ポートアイランド南駅はぽつんと一人取り残されたような場所にある。高架の足元には神戸花鳥園が完成しているのだが、低層の建物で目立たないのだ。

再び進路を南に転じると、弓なりに高まるガーダー橋の先に、空港が姿を現した。中型機が2機留まっているばかりで、予想していたよりも小ぶりな施設だ。到着後、空港ビルの屋上からいま来た方角を振り返ると、神戸市街の背後にそびえる六甲の山並みがかすんで見えた。だいぶ沖に出てきたことを実感した。

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神戸スカイブリッジ(空港連絡橋)
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神戸空港駅手前の渡り線

(写真は2008年12月20日撮影)

■参考サイト
神戸新交通 http://www.knt-liner.co.jp/
神戸空港付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/34.637300/135.229100

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